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タニノクロウ「タニノとドワーフ達によるカントールに捧げるオマージュ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
タニノとカントール.jpg
東京芸術劇場の開館25周年の一環として、
ヨーロッパの鬼才カントールに捧げるオマージュを、
庭劇団ペニノのタニノクロウが構成・演出し、
試演会のような形式で上演されています。
明日までです。

庭劇団ペニノは、
一時期活動休止に近い感じでしたが、
今年は東京でも新作の公演がありました。
開業でバタバタした時期なので行けませんでしたが、
評判はまずまずであったようです。
来年は「ダークマスター」の再演があるようですし、
継続的な活動はまずは非常に楽しみです。

今回の作品は、
カントールの生誕100周年の企画の一環で、
東京芸術劇場地下の展示スペースを用いて、
5人のドワーフ(小人)が出演し、
セットに天井桟敷で奇怪な機械などの装置を考案した、
小竹信節博士が協力する、という、
「一体どんなものになるのかしら?」
と楽しみにしていたものです。

ただ、蓋を開けてみると、
ワーク・イン・プログレスと書かれているように、
正式な今後の上演を検討するための試演会、
というような意味付けで、
とても完成形とは言えないような作品でした。

内容もかなりキワどいもので、
ドワーフ達の扱いについては、
僕はそこまでとは思いませんでしたが、
一緒に行った妻は、
「これは悪趣味で差別的で許せない」
と激怒していて、
「こんなものをあなたは許せる訳?」と、
観劇後はとても険悪なムードになってしまいました。

タニノさん、
出来れば僕たち夫婦の関係を壊すような、
そんな芝居はしないで下さい。

以下、ネタバレを含む感想です。

展示のためのフロアの壁に暗幕を張って暗くして、
その中のところどころに、
ダンボール箱やシーツで隠された、
いくつかのオブジェが配置されています。

ピンポン玉を2つに割ったミニライトを手渡された観客は、
特別客席は設けられていないその暗闇の中で、
開演を待つことになります。

やがて、1人の小人が手探りで現れ、
それから小竹博士作成の台車に乗って、
日本に実在する最後の妖精であるマメ山田さんと、
異形な聖女の如き森田かずよさんら、
ドワーフの面々が登場します。

彼らはその闇の空間に閉じ込められている、
という趣向で、
方舟のようなその台車を使って、
闇の世界から脱出を図ろうとします。

しかし、台車は自力では動かず、
最初は旗を振り回して、
精神力で動かそうとしたり、
ケロヨンや仮面ライダーやミッキーマウスの、
偶像の力を借りようとしたり、
20円で一時だけ動く、
遊園地の木馬の力を借りようとするのですが、
全てうまくはいきません。

最終的に、見えない観客の力を借りることになり、
指示された観客は一緒に台車を動かし、
そこにマグネットでライトを装着します。

闇の世界の扉は開き、
台車は外のロビーに出ると、
ドワーフ達は観客を引き連れて、
芸術劇場の外の池袋の野外まで出てゆきます。

ヨーロッパの前衛劇などによくあるような、
観客参加型の面白い趣向です。

ただ、こうして活字で読んで頂いた方が多分面白く、
実際に舞台を観ると、
それほど盛り上がる感じにはなっていません。

タニノさんの作品のいつもの特徴でもあるのですが、
敢えて娯楽にならないように演出しているので、
かなりしんどい思いで観劇することになります。

最初からただの暗闇の中で、
中途半端に長く待たされますし、
音効や照明の協力はなく、
ドワーフ達の芝居も、
かなり本人達の間合いのままに任されているので、
舞台にリズムが全く生れず、
メリハリも皆無なので、
つらい気分になってしまうのです。

もう少し娯楽に配慮したり、
ポイントで美しい場面や、
目や耳を奪うような瞬間が、
存在しないと、
芝居としては成立しないような気がします。

こうした芝居は、
決して全ての観客に向くような性質のものではなく、
観客にもそれなりの資質が必要で、
どのような観客に観て欲しいのかを、
限定しないと成立が難しいと思うのですが、
おそらくはもう少しお上品で、
「芸術的」なものを期待した観客が多かったと思うので、
意図したような観客参加、
という感じにはならず、
また、セットや美術などを含めた雰囲気作りも、
十分な水準のものではなかったと思います。

決してドワーフ達を差別的に扱ったものではないと思うのですが、
妻はその演技のさせ方自体に、
配慮が足りなかったのではないか、という立場で、
非常に不快に感じたようです。
作品にそうした感想を乗り越えるような深みがなかったことが、
一番の問題であったように個人的には思います。

そんな訳で成功した試みではなかったのですが、
こうしたタイプの演劇が、
僕は個人的には大好きなので、
もう少し作品を練り上げて、
ある種の共同幻想を、
より多くの観客に与えるようなものに、
深化させて欲しいと思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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