秋吉理香子「聖母」 [ミステリー]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
毎年一回の恒例で、
今日明日と福井に行きます。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
比較的新進のミステリー作家の、
秋吉理香子さんの新作です。
帯には「ラスト20ページ、世界は一変する。」
と叙述トリックとどんでん返しが大好きな僕には、
とても魅力的なコピーが踊っていて、
絶賛の声には「イニシエーション・ラブ」に並ぶ衝撃、
などと書かれているので、
どうせがっかりの尻すぼみなのではないかしら、
とは思ったものの、
騙されて読んでしまいました。
週刊ポスト誌に作者のインタビュー記事が載せられていて、
従来のミステリーのどんでん返しには不満があり、
あまりこれまでの作品を参考にはせずに、
独自のストーリーを目指した、
というような趣旨のことが書かれていたので、
より興味を持ったのです。
と言うのも、
叙述ミステリーというものにも、
幾つかのパターンがあって、
ほぼ全て書き尽くされている感があり、
これまでにない発想の叙述ミステリーというようなものには、
滅多に出くわすことはないからです。
叙述ミステリーというのは、
作品の記述そのものにトリックがあり、
読者の先入観を最後にひっくり返して、
予想外の世界に読者を誘うミステリーの1ジャンルで、
バシッと決まった時の破壊力と衝撃は抜群です。
ただ、そのパターンは大雑把に言えば、
人物をずらすか時間をずらすかのどちらかなので、
それが分かってしまうと、
なかなか新鮮な驚きには出会えなくなってしまうのです。
実際に読んでみると、
そう悪くはなかったのですが、
これまでにある2つのパターンを組み合わせた、
一種のバリエーションで、
あまり目新しい感じではなかったので、
少しガッカリしました。
特に小ネタの1つは、
あまりにありきたりなものなので、
これはやらない方が良かったのでは、
と思いました。
最後の大ネタがばれにくくなるように、
小ネタでカモフラージュしているのですが、
最初からその部分は見え見えなので、
どうも逆効果であったような気がします。
この作品はこの作者の長編3作目で、
これまでの2作品もどんでん返しのあるラストで仰天のミステリー、
ということだったので、
意外に前の作品の方が面白いのかも知れない、
と思って、そちらも読んでみました。
処女作は女子高の文芸サークルの闇鍋パーティで、
不在のヒロインについての短編小説を、
皆が披露してゆくうちに…
という話で、
アイリッシュの「晩餐後の物語」と、
バークリーの「毒入りチョコレート事件」をミックスしたような作品でした。
ラストもありきたりでビックリするようなものではなく、
展開もモタモタしていて退屈でした。
これはまずお薦め出来ません。
2作目は崖から落ちた高校生の、
魂が入れ替わって自分を突き落とした犯人探しをする、
というオヤオヤな感じの青春ミステリーで、
いずれも映画を元にしたと思しき、
2つのひねりがあって、
処女作よりは仕掛けは練れていました。
ただ、超自然現象を重ねるのは、
構成として如何なものかと思いましたし、
すぐに映画を連想してしまうので、
新味はありませんでした。
と言う訳で、
これまでの3作品の中では、
この「聖母」が一番のお薦めで、
帯の煽り文句は過大表現だと思いますが、
まずまず破綻なく書けていて、
一読の値打ちはあると思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
毎年一回の恒例で、
今日明日と福井に行きます。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
比較的新進のミステリー作家の、
秋吉理香子さんの新作です。
帯には「ラスト20ページ、世界は一変する。」
と叙述トリックとどんでん返しが大好きな僕には、
とても魅力的なコピーが踊っていて、
絶賛の声には「イニシエーション・ラブ」に並ぶ衝撃、
などと書かれているので、
どうせがっかりの尻すぼみなのではないかしら、
とは思ったものの、
騙されて読んでしまいました。
週刊ポスト誌に作者のインタビュー記事が載せられていて、
従来のミステリーのどんでん返しには不満があり、
あまりこれまでの作品を参考にはせずに、
独自のストーリーを目指した、
というような趣旨のことが書かれていたので、
より興味を持ったのです。
と言うのも、
叙述ミステリーというものにも、
幾つかのパターンがあって、
ほぼ全て書き尽くされている感があり、
これまでにない発想の叙述ミステリーというようなものには、
滅多に出くわすことはないからです。
叙述ミステリーというのは、
作品の記述そのものにトリックがあり、
読者の先入観を最後にひっくり返して、
予想外の世界に読者を誘うミステリーの1ジャンルで、
バシッと決まった時の破壊力と衝撃は抜群です。
ただ、そのパターンは大雑把に言えば、
人物をずらすか時間をずらすかのどちらかなので、
それが分かってしまうと、
なかなか新鮮な驚きには出会えなくなってしまうのです。
実際に読んでみると、
そう悪くはなかったのですが、
これまでにある2つのパターンを組み合わせた、
一種のバリエーションで、
あまり目新しい感じではなかったので、
少しガッカリしました。
特に小ネタの1つは、
あまりにありきたりなものなので、
これはやらない方が良かったのでは、
と思いました。
最後の大ネタがばれにくくなるように、
小ネタでカモフラージュしているのですが、
最初からその部分は見え見えなので、
どうも逆効果であったような気がします。
この作品はこの作者の長編3作目で、
これまでの2作品もどんでん返しのあるラストで仰天のミステリー、
ということだったので、
意外に前の作品の方が面白いのかも知れない、
と思って、そちらも読んでみました。
処女作は女子高の文芸サークルの闇鍋パーティで、
不在のヒロインについての短編小説を、
皆が披露してゆくうちに…
という話で、
アイリッシュの「晩餐後の物語」と、
バークリーの「毒入りチョコレート事件」をミックスしたような作品でした。
ラストもありきたりでビックリするようなものではなく、
展開もモタモタしていて退屈でした。
これはまずお薦め出来ません。
2作目は崖から落ちた高校生の、
魂が入れ替わって自分を突き落とした犯人探しをする、
というオヤオヤな感じの青春ミステリーで、
いずれも映画を元にしたと思しき、
2つのひねりがあって、
処女作よりは仕掛けは練れていました。
ただ、超自然現象を重ねるのは、
構成として如何なものかと思いましたし、
すぐに映画を連想してしまうので、
新味はありませんでした。
と言う訳で、
これまでの3作品の中では、
この「聖母」が一番のお薦めで、
帯の煽り文句は過大表現だと思いますが、
まずまず破綻なく書けていて、
一読の値打ちはあると思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2015-11-22 05:58
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