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エナジードリンクの心臓へのリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
朝から在宅の準備などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
エナジードリンクの影響.jpg
今月のJAMA誌のレターですが、
アメリカでポピュラーな、
エナジードリンクの交感神経への影響を、
結構厳密に検証した興味深い小論です。

エナジードリンクは、
日本の栄養ドリンクに近い飲み物ですが、
レッドブル、モンスターエナジーなどの商品は、
近年日本でも発売され、
宣伝などの効果もあって、
日本でも人気を獲得しつつあります。

その成分は、
基本的には日本のユンケルなどの栄養ドリンクと、
大きな差はありません。

ブドウ糖などの糖液に、
アルギニンなどのアミノ酸や、
カフェイン、タウリンなどの栄養成分、
刺激成分などが含まれています。
漢方薬やビタミンなどを含むものもあります。

日本の場合は清涼飲料の扱いなので、
アメリカで売られているものから、
タウリンなどの成分がカットされていることが通例のようです。
アメリカで売られているエナジードリンクの成分は、
日本の栄養ドリンクにより近いと思います。

さて、近年このエナジードリンクの使用と、
心筋梗塞などの心血管疾患のリスクとの間に、
関連があるとする報告が複数発表されています。

カフェインなどの交感神経を刺激する物質を、
多く含むエナジードリンクを常用することにより、
交感神経が過緊張して心臓に負担を掛けるのではないか、
という推定がその主体です。

しかし、実際にどの程度の具体的な変化が、
エナジードリンクを飲むことにより生じるのか、
というような点については、
これまであまり科学的な検証はなされていませんでした。

そこで今回のレターでは、
18歳以上の24名の非喫煙者で、
健康なボランティアの若者(平均年齢29歳)に、
味は同じに調整された、
刺激成分を含まない偽の飲み物と、
ロックスターというポピュラーなエナジードリンクを、
本人にも検査の施行者にも分からないように、
別々の日に1回ずつ飲み、
飲用前と飲用後30分で採血などの検査を行なっています。

このロックスターのアメリカオリジナル版には、
480ミリリットルの1本に、
カフェイン240ミリグラム、タウリン2000ミリグラム、
強壮作用があるとされるガラナという植物の種子や、
朝鮮人参のエキスなどが含まれています。

その結果…

エナジードリンクの摂取後30分で、
血液中のカフェイン濃度と、
交感神経の刺激ホルモンであるノルエピネフリンの濃度は、
偽飲料と比較して有意に増加し、
血圧は収縮期、拡張期とも有意に増加しましたが、
脈拍数には差はありませんでした。
寒冷刺激などのストレスを加えた時の反応には、
両群で差は見られませんでした。

ノルエピネフリンの増加は、
偽薬でも心因により平均で30.9%増加していますが、
エナジードリンクでは平均で73.6%と、
かなりの比率で増加が認められています。
実際に血圧値も、
平均血圧が6.4%程度の増加ですから、
軽度ではありますが、
有意に増加しています。

しかし、健康な若い人であれば、
その程度の変化が、
心臓の働きやストレスへの自律神経の反応に、
影響を与えるようなことはないようです。

ただし、高齢者や心臓などの病気のある方では、
こうした増加が心血管疾患のリスクに結び付くことは想定され、
今回の結果からも、
ご病気のある方や高齢者の、
エナジードリンクや日本の栄養ドリンクの摂取は、
慎重に考えて方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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