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グルコサミンとコンドロイチンの膝関節症への効果(2015年と2014年の最新知見) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも通常の診療になります。
レセプトが追い込みで結構バタバタしています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
グルコサミンとコンドロイチンのプラセボ比較試験.jpg
昨年のAnn Rheum Dis.誌にウェブ掲載された、
グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントの、
変形性膝関節症への効果を検証した論文です。

今年もう1篇、
同じ医学誌に同様の別個の臨床研究が、
掲載されました。

今日はそれを併せてご説明したいと思います。

グルコサミンとコンドロイチンは、
膝などの関節の軟骨を形成する成分で、
そのためサプリメントとしてその補充を行なうことが、
膝の痛みの改善や関節症の進行予防に繋がるのでは、
という期待から、
サプリメントの一大市場を形成しています。

毎日そのCMがテレビで流れない日はありませんし、
あらゆるメディアがその宣伝を行なっています。

しかし、実際にその効果がどの程度のものか、
という点については、
まだ議論があり、
一定の結論に至ってはいません。

これは昨年出版した本にも書いたのですが、
グルコサミンについては2000年代の初め頃に、
一流の医学誌にその使用により膝の痛みが改善したとする、
複数の論文が掲載されました。
今でも一部のグルコサミンの宣伝には、
その時のデータが使用されています。

しかし、その論文の多くが、
特定のグルコサミンの販売業者と癒着した、
研究者によるものだったことが判明し、
その信頼性は大きく損なわれました。

その後、アメリカでGAIT研究と呼ばれる大規模な臨床研究が行われ、
グルコサミンとコンドロイチンの半年間の効果が検証されました。
その結果は、2006年と2008年に論文化されました。
トータルには明確な効果は確認されませんでしたが、
特に有害ではなく、症状の改善したケースも認められました。
サブ解析で中等度から高度の痛みのある患者さんでは、
痛みの改善効果があるかも…
というくらいの結果です。

上記の論文はその後に発表された臨床試験の中では、
例数もまずまずで厳密な手法を用い、
偽薬と比較していて、2年という長期の効果を見ている、
という点で、これまでにない画期的なものです。

オーストラリアにおいて、
45から75歳の変形性膝関節症の患者さん、
トータル605名を、
本人にも治療者にも分からないように、
4つのグループに分け、
第一グループはグルコサミンを1日1500ミリグラム、
第二グループはコンドロイチンを1日800ミリグラム、
第三グループはグルコサミンとコンドロイチンの併用、
そして第四グループは偽薬を使用して、
その後2年間の経過観察を行います。

その結果…

偽薬を含めた全てのグループで、
治療の1年後には膝の痛みは改善を示しましたが、
グループ間の差は有意なものはありませんでした。
有害事象にも差はありません。
そして、グルコサミンとコンドロイチンの併用群では、
膝関節症の進行度の指標1つである、
関節裂隙の狭小化が、
2年間で0.1ミリ(0.002から0.20)偽薬より有意に予防されていました。

つまり、
痛みなどの症状には差は付かなかったけれど、
グルコサミンとコンドロイチンを併用すると、
二年間で関節の軟骨の減りが、
平均で0.1ミリ少なくて済んだ、
ということになります。

この効果はそのコストに見合っているでしょうか?

極めて微妙な感じがします。

ポイントになる点の1つは、
偽薬でも膝の痛みは1年くらいの期間では良くなる、
ということです。

要するに、
「これを飲めば良くなるかも知れない」
という期待感には、
それだけでそれなりの効果がある、
ということです。

製薬会社の研究報告のページなどには、
偽薬とは比較せずに、
用量を変えたコンドロイチンやグルコサミンで、
痛みが有意に改善したとする、
用量比較試験などの結果が、
よく引用されていますが、
そのトリックの一端は、
こうしたところにあるのです。

ああした研究をメーカーからお金をもらって発表している、
大学の先生が今でも沢山いらっしゃいますが、
失礼ながらちょっと恥ずかしい仕事のような気がします。

同じ雑誌にこちらは更に最近、
次のような論文も発表されました。
こちらです。
グルコサミンとコンドロイチンのセレクックスとの比較.jpg
これは別個の研究で、
フランス、ドイツ、ポーランド、スペインで、
患者さんが登録されています。

変形性膝関節症のある40歳以上の606名の患者さんを、
グルコサミン1500ミリグラムとコンドロイチン1200ミリグラムを併用する群と、
セレコキシブという消炎鎮痛剤を200ミリグラム使用する群の2つに分け、
半年間の経過観察を行なっています。
どちらのグループかは、
患者さんにも主治医にも知らされません。

その結果、
矢張り痛みはどちらの群でも減少していて、
しかし両群での効果の差は認められませんでした。

この研究は偽薬との比較ではないので、
その点はちょっと見劣りがするのですが、
膝関節症の痛みに対して、
痛み止めを使うべきか、
それともグルコサミンやコンドロイチンで様子を見るべきか、
というのは、
臨床において医者も患者さんも、
日々直面する問題ですから、
その意味では意義のある試験だと言って良いと思います。

膝関節症は、
物理的なストレスと老化が原因であっても、
その進行には一種の自己炎症のメカニズムが絡んでいて、
その意味では消炎鎮痛剤の使用が、
理に適っている側面があります。

しかし、こうして結果を見ると、
どうやらセレコキシブによる病状の改善効果は、
グルコサミンとコンドロイチンで、
充分代用は可能な水準のもののように思われます。
更には偽薬とどの程度違うかは、
神のみぞ知る、という感じです。

トータルに考えて、
グルコサミンとコンドロイチンの併用は、
2年間程度の使用における安全性はほぼ確立していて、
その効果は膝関節症の進行予防に、
僅かには関与しているようです。
ただ、その痛みなどの改善効果は、
多分にプラセボ効果を含んでいて、
それを除外するとかなり心許ない感じです。
それともう1つ、
変形性膝関節症に対する消炎鎮痛剤の使用は、
サプリメントと同程度の効果しか示さないので、
その副作用のリスクを考えれば、
急性の痛みのある時期を除いて、
あまり使用するべきではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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