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抹消動脈疾患(PAD)と血圧との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

昨日はクリニックの開院で、
遠方からも多くの方に来て頂きました。
ありがとうございました。
今日は休診日で、
昼は老人ホームに出掛けます。
まだまだこれからですが、
少しだけほっとしています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
抹消動脈疾患と血圧との関連.jpg
先月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
抹消動脈疾患(PAD)と血圧との関連について、
イギリスで420万人を超えるデータを解析した、
大規模な疫学研究の論文です。

抹消動脈疾患(peripheral arterial disease;PAD)というのは、
主に足の血管が動脈硬化などの原因で狭くなったり、
詰まったりする病気の総称です。

ASO(閉塞性動脈硬化症)という言葉があり、
これは動脈硬化で足などの血管が閉塞する病気です。
PADというのは、
そこに血管炎など、
直接は動脈硬化が原因でなくても、
同じような動脈の閉塞が起こる病気を、
総称した用語なのです。

その症状はまず、
足のしびれや冷たい感じが現れ、
それから少し歩くと足が痛くて歩けなくなり、
休むとそれが改善する、
間欠性跛行と呼ばれる症状が出現します。
更に進行すると常時痛みが生じ、
血管が完全に詰まると、
それより先の足に潰瘍が出来たり、
最悪は壊死してしまいます。

動脈硬化は血圧の上昇により、
進行することがほぼ実証されています。

しかし、このPADと高血圧との関係については、
それほど明確なことが分かっていません。
概ね血圧が高いほどそのリスクが高まる、
というデータになっているのですが、
症例数が少なく、
信頼のおけるような大規模なデータは、
これまでにあまり存在していなかったのです。

そこで今回の研究では、
イギリスにおいて、
医療データベースを活用して、
トータルでは420万人余という、
大規模な30から90歳の成人データを解析し、
抹消動脈疾患と血圧との関連を検証しています。

対象となっているのは、
イギリスのプライマリケアで、
1年以上の観察が行われ、
血圧の測定もされている患者さんです。

その結果…

44329例の抹消動脈疾患が、
登録時に存在、もしくは観察期間中に診断され、
収縮期血圧が110から170の範囲において、
20mmHg上昇するごとに、
抹消動脈疾患のリスクは63%増加しました。
一方拡張期血圧については、
10mmHgの上昇に伴い、
35%のリスク増加、という結果でした。
この収縮期血圧の重症に伴う抹消動脈疾患のリスク増加は、
年齢が高くなり、肥満度の指標であるBMIが上昇するに連れ、
明瞭ではなくなりましたが、
喫煙や性別の影響は受けませんでした。

虚血性心疾患や脳卒中など、
他の動脈硬化性疾患のリスクも、
抹消動脈疾患の存在により増加しました。

今回の研究は、
初めて制度の高いデータで、
末梢血管疾患が高血圧で増加することを示したもので、
血圧が多くの意味で健康のバロメーターであることを、
再認識させるものだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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心配ママ

先生、開院おめでとうございます。
新しいアドレスに相談メールを差し上げたのですが、無事に届いてますでしょうか?タイトルが北品川藤クリニック 医療相談でお送りしています。
by 心配ママ (2015-10-02 12:51) 

fujiki

心配ママさんへ
届いています。
ご返事は少々お待ち下さい。
by fujiki (2015-10-03 19:28) 

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