飲み水の微量元素が甲状腺機能に与える影響について [医療のトピック]
こんにちは。
石原藤樹です。
北品川藤クリニック開院直前で、
ドタバタした日々が続いています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のThyroid誌に掲載された、
水道水に含まれる微量元素が、
甲状腺機能に与える影響についての論文です。
リチウムは微量元素で金属の一種ですが、
双極性障害(昔の躁鬱病)の治療にも使われている不思議な成分です。
放射性物質としてその被ばくが問題となった、
セシウムもそうですが、
元々微量には土壌に含まれる成分であるため、
食物や飲料水の中にも微量には含まれていて、
その影響が議論となることもあります。
勿論日本の水道水にも含まれています。
このリチウムについては、
多く含有する飲料水が使用されている地域の住民は、
自殺のリスクが少ないというような、
興味深い報告もあります。
その一方でリチウムには多くの有害な作用も生じる可能性があり、
その中で有名なのは甲状腺の機能異常です。
薬として使用されているリチウム製剤では、
甲状腺の機能異常、特に甲状腺機能低下症が、
生じ易い副作用であることが知られています。
それでは、
水道水などに含まれている程度の微量のリチウムでも、
甲状腺に影響を与えるのでしょうか?
今回のデータはアルゼンチンにおいて、
194名の妊娠されている女性を対象とし、
飲料水に含まれているリチウムの濃度と、
血液中のリチウムの濃度や、
他の微量元素の濃度と、
甲状腺機能異常との関連を検証しています。
その結果…
リチウムの血液濃度は平均で0.0036mmol/Lで、
0.000027から0.021という広範囲に分布しています。
リチウムを薬として使用した場合の血液濃度は、
上限で1.2mmol/L程度ですから、
勿論飲料水に含まれているリチウムは、
極めて微量である、
ということは間違いがありません。
しかし、それでもリチウム濃度が高いほど、
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は高く、
甲状腺ホルモンであるT3は低いという相関を示しました。
つまり、リチウム濃度が高いほど、
甲状腺機能低下症の「傾向」を示しています。
ただし、これは勿論顕性の甲状腺機能低下症になっている、
ということではありません。
臨床的には問題にはならないレベルの変化です。
今回もう1つ、
セシウムの濃度が高いほど、
血液のT3濃度が低いという相関が認められました。
ただし、TSHについては相関は認められませんでした。
これも臨床的には問題にならないレベルです。
今回のデータでは、
極微量のリチウムやセシウムでも、
僅かながら甲状腺機能に影響を与えることが示唆されました。
こうした僅かな変化が、
通常は臨床的に問題になるようなことはほぼないと思いますが、
妊娠中の女性のような、
甲状腺機能が胎児の成長に影響を与える可能性があるようなケースでは、
一応配慮をしておく必要があるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
石原藤樹です。
北品川藤クリニック開院直前で、
ドタバタした日々が続いています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のThyroid誌に掲載された、
水道水に含まれる微量元素が、
甲状腺機能に与える影響についての論文です。
リチウムは微量元素で金属の一種ですが、
双極性障害(昔の躁鬱病)の治療にも使われている不思議な成分です。
放射性物質としてその被ばくが問題となった、
セシウムもそうですが、
元々微量には土壌に含まれる成分であるため、
食物や飲料水の中にも微量には含まれていて、
その影響が議論となることもあります。
勿論日本の水道水にも含まれています。
このリチウムについては、
多く含有する飲料水が使用されている地域の住民は、
自殺のリスクが少ないというような、
興味深い報告もあります。
その一方でリチウムには多くの有害な作用も生じる可能性があり、
その中で有名なのは甲状腺の機能異常です。
薬として使用されているリチウム製剤では、
甲状腺の機能異常、特に甲状腺機能低下症が、
生じ易い副作用であることが知られています。
それでは、
水道水などに含まれている程度の微量のリチウムでも、
甲状腺に影響を与えるのでしょうか?
今回のデータはアルゼンチンにおいて、
194名の妊娠されている女性を対象とし、
飲料水に含まれているリチウムの濃度と、
血液中のリチウムの濃度や、
他の微量元素の濃度と、
甲状腺機能異常との関連を検証しています。
その結果…
リチウムの血液濃度は平均で0.0036mmol/Lで、
0.000027から0.021という広範囲に分布しています。
リチウムを薬として使用した場合の血液濃度は、
上限で1.2mmol/L程度ですから、
勿論飲料水に含まれているリチウムは、
極めて微量である、
ということは間違いがありません。
しかし、それでもリチウム濃度が高いほど、
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は高く、
甲状腺ホルモンであるT3は低いという相関を示しました。
つまり、リチウム濃度が高いほど、
甲状腺機能低下症の「傾向」を示しています。
ただし、これは勿論顕性の甲状腺機能低下症になっている、
ということではありません。
臨床的には問題にはならないレベルの変化です。
今回もう1つ、
セシウムの濃度が高いほど、
血液のT3濃度が低いという相関が認められました。
ただし、TSHについては相関は認められませんでした。
これも臨床的には問題にならないレベルです。
今回のデータでは、
極微量のリチウムやセシウムでも、
僅かながら甲状腺機能に影響を与えることが示唆されました。
こうした僅かな変化が、
通常は臨床的に問題になるようなことはほぼないと思いますが、
妊娠中の女性のような、
甲状腺機能が胎児の成長に影響を与える可能性があるようなケースでは、
一応配慮をしておく必要があるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2015-09-29 11:20
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