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血圧の変動と病気との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

朝から診察室の片付けなどして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
血圧の日内変動と予後.jpg
今月のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
外来の診察室での血圧の変動が、
患者さんの予後に与える影響についての論文です。

血圧が健康の大きなバロメーターの1つであり、
高血圧が多くの病気のリスクであることは、
これまでの多くの研究により実証されている事実です。

つまり、血圧の数値には健康上の大きな意味があります。

その一方で、
血圧の数値が不安定で、
変動し易いこともまた事実です。

家で自己測定して頂く血圧値が、
診察室での血圧と大きく違っている、
というようなことはしばしばあります。
これは環境による変動もありますし、
測定の仕方による違いもあると思います。

また、健康診断などで血圧を測定すると、
普段より極端に高い数値が出る、
という話も良く聞くところです。

高血圧の診療を20年以上続けて来て思うことは、
患者さんによって、
血圧値が大きく変動し易い場合と、
極めて安定している場合との、
2つに大きく分かれる可能性が大きい、
という経験的な知見です。

近年家庭血圧の重要性がしばしば指摘されますが、
それでも血圧値のスタンダードは、
診察室で医者が測る血圧であることには違いはありません。

それでは、その血圧値がその時により大きく変動することが、
患者さんの予後にどのような影響を与えると、
考えれば良いのでしょうか?

診察毎の血圧を集計した時に、
その収縮期血圧の変動幅が大きな患者さんは、
小さい患者さんよりも、
脳卒中や心筋梗塞のリスクが増加した、
とする報告が幾つか存在しています。
しかし、その一方でそうした関連はない、
とする報告も同じように存在しています。

臨床試験のデザインも様々で、
単純に比較が可能という訳でもありません。

今回のデータは、
3種類の降圧剤治療の予後を比較した、
ALLHATと呼ばれる大規模臨床試験のデータを活用して、
心血管疾患のリスクのある患者さんにおける、
診察室血圧の変動と、
その予後との関連を再解析したものです。

対象患者数は25814名で、
登録後3から4ヶ月毎に、
合計7回の外来受診において、
それぞれ血圧測定が行われています。
この7回の血圧の変動幅を、
収縮期と拡張期とに分けて、
その変動幅と予後との関連を、
検証しています。
平均の観察期間は2.7から2.9年ですから、
それほど長くはありません。

血圧の変動幅を5分割して検討すると、
収縮期血圧の最もばらつきの大きな群の、
標準偏差(ばらつきの指標)は、
14.4mmHg以上で、
最もばらつきの小さな群では6.5mmHg未満でした。

そして、
最もばらつきの大きな群は、
小さな群と比較して、
致死的心血管疾患と致死的ではない心筋梗塞のリスクが1.30倍、
総死亡のリスクが1.58倍、
脳卒中のリスクが1.46倍、
心不全のリスクが1.25倍、
それぞれ有意に高いという結果になりました。

つまり、血圧の受診日毎の変動が大きいほど、
患者さんの予後は悪かった、という結果です。

このことの臨床的な意義はまだ不明で、
臨床の現場で、
仮に患者さんにこうした傾向があったとしても、
その時どのような対応をすれば、
患者さんの予後に良い影響が与えられるのか
といった点もまだ不明ですが、
臨床の末端にも大きな関連のあるデータでもあり、
今後のデータの蓄積を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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