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劇団チョコレートケーキ「追憶のアリラン」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日から6日までは5月の連休に入ります。
診療所も休診です。
今日はこれから奈良へ出掛けるつもりです。
何処の誰か知りませんが、
お願いですから油を文化財に撒くのは止めて下さい。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
追憶のアリラン.jpg
社会派のドラマを一貫して上演している、
劇団チョコレートケーキの新作公演が、
先日東京芸術劇場シアターイーストで上演されました。

これは朝鮮半島での日本の統治が終わった時期の、
在朝の日本の検事局の検事を主人公に、
当時の日本人、朝鮮人双方から見た混乱を描いたもので、
小劇場演劇の素材としては、
あまり類例のないものではないかと思います。

題材が題材だけに、
一体どのようなスタンスのものになるのか、
危惧する思いがあったのですが、
蓋を開けてみると、
かなり慎重に色々な立場に目配りしたものになっていて、
なるほど、こう来たか、という感じがありました。
逸早く日本に脱出した軍の高官を悪党にして、
最後は国境を越えたヒューマニズムが、
主人公を救うという誰でも納得の行く結末に帰着します。
ただ、決してそれは主人公達の思いが通じたという、
ご都合主義的なものではなく、
裏にはそれなりの歴史の力学があったことも、
同時に描かれています。

いつもの実証主義的な骨太の作劇は健在で、
密度の高い演技で、
2時間強の上演時間を、
緩みなく構成している力技はさすがです。

ただ、劇場はこれまでの公演と比べるとかなり大きく、
階段などの導線が非常に長いので、
ややもたついた感じの間が空く瞬間が、
一度ならずあったのは残念でした。
朝日君の照明はいつも非常に斬新で面白いのですが、
今回に関しては舞台の要所を過不足なく照らすだけで精一杯、
という感じがありました。

特に人民裁判の場面は、
この少人数の作品で正面から描くのは、
さすがに無理があったように思いました。

役者は女優さんが弱いのが残念ですが、
いつものメンバーの力感ある緻密な芝居が楽しめました。
悪役を引き受けた佐瀬弘幸さんが、
「サラエヴォの黒い手」と同じように、
職業軍人をそれらしく演じて素晴らしく、
岡本篤さんの老け役の技術もより磨かれ、
作品の核となる浅井伸治さんの雰囲気も傑出していました。

総じて、意欲はかえますし、
意義のある上演であったことは間違いがないのですが、
これまでにない大きな空間を活かす演出には、
まだ研究の余地があったと思いますし、
ここまで多方面に配慮し、
苦労しないと成立しない公演であったとすれば、
今回は今回で悪くないのですが、
次回はまたヨーロッパに素材を取った方が、
より自由度の高い作品になるように思いました。

それでは今日はこのくらいで。
明日の更新はお休みの予定です。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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