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高齢男性の糖尿病の予後と罹病年数との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
糖尿病の予後.jpg
昨年のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
高齢男性の2型糖尿病の患者さんの予後と、
その罹病年数についての論文です。

糖尿病には3大合併症と呼ばれる、
網膜症、腎症、神経症という小さな血管の合併症と、
大きな血管の動脈硬化による、
心筋梗塞や脳卒中などの大血管合併症があります。

このうち小血管の合併症については、
古くから多くの疫学研究があり、
糖尿病に罹患してから、
10年から15年くらい経って発症し、
糖尿病の罹病早期から血糖コントロールを良くすることにより、
その予防が可能であることも、
ほぼ確立した事実となっています。

ところが…

糖尿病の患者さんの生命予後に、
大きな影響を与える大血管合併症については、
そうした罹病期間との関連についての、
明瞭なデータがあまり存在していません。

有名なフラミンガム研究のデータでは、
糖尿病の罹病期間が長いと、
心血管疾患による死亡リスクは増加していますが、
総死亡のリスクは増加はしていません。

2011年の別箇の疫学データでは、
早期発症で経過の長い糖尿病の患者さんは、
発症が遅く罹病期間の短い患者さんと比較して、
同年齢での心血管疾患のリスクが倍になっています。

このように幾つかデータはあるのですが、
かなり分析がラフであったり、
例数が少なかったりして、
小血管の合併症と比較するとかなり見劣りがします。

今回の研究はその点に着目して、
より精度の高いデータで、
2型糖尿病の患者さんの予後と罹病期間の関連を、
大血管合併症に絞って検証したものです。

オーストラリアにおいて、
トータル11728名の高齢男性の経過を追った、
コホート研究のデータを活用しています。

このうち糖尿病の患者さんは、
12.2%に当たる1433名です。

糖尿病の患者さんにおける総死亡のリスクを、
その罹病期間毎に見てみると、
糖尿病のない方と比較して、
その罹病期間が5から9年では1.37倍、
10から14年では1.35倍、
15年から19年では1.42倍、
20から24年では1.75倍、
それぞれ有意に総死亡リスクは増加しました。

心筋梗塞による死亡リスクは、
糖尿病の罹病期間が25年までは、
ゆるやかに増加し、
その後はあまり変化が認められません。

一方で脳卒中による死亡リスクは、
特に上限なく、
糖尿病の罹病期間が長いほど増加し、
年齢を増す毎に増加率も上がります。

また一旦心筋梗塞や脳卒中になると、
その後10から20年後をピークとして、
心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクを高めます。
要するに再発は致死的となる、
という意味合いです。

データをまとめると以下のようになります。

高齢の男性糖尿病患者においては、
その罹病期間が長いほど、
同じ年齢であっても、
心筋梗塞や脳卒中による死亡リスク、
また総死亡のリスクがいずれも増加します。
特に脳卒中においては、
その傾向は顕著となります。

従って、
糖尿病の罹病期間を重視して、
患者さんの心筋梗塞や脳卒中のリスクを勘案し、
その予防のための措置を取る必要がある、
ということになるのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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