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燐光群「クイズ・ショウ」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日2本目の演劇の記事になります。
今度はこちら。
クイズショー.jpg
坂手洋二さんの作・演出を中心として、
アジアを股に掛けた活動や、
海外戯曲の上演でも、
オリジナリティのある世界を構築している、
今では老舗の感のある社会派劇団「燐光群」の、
坂手洋二さん作・演出による新作公演に、
足を運びました。

坂手さんの作品では、
前にも記事にしましたが、
「屋根裏」が素晴らしくて、
これは2回梅ヶ丘のスタジオに足を運びました。
(下総さんが在籍時の舞台です)
これは、小劇場史上に残る名品です。
屋根裏という名前の、
引き籠りのためのような道具が、
色々な用途で使用され、
本当に極小の舞台での出来事が、
最後に一気に宇宙的な広がりを見せます。
知的で幻想的で素晴らしい作品でした。

それから他の劇団はまず取り上げないような海外戯曲の上演でも、
面白いものが多くありました。

たとえば、
「CVR チャーリー・ビクター・ロミオ」という作品は、
事故を起こした旅客機のボイス・レコーダーの会話のみを、
忠実に再現した、という海外戯曲で、
物凄く衝撃的で面白い作品でした。

全て本物の台詞のみ、
というのが異様な緊張感で、
舞台はコックピットのみ。
そして、事故は耳を聾する音響と共に、
突然の暗転で処理しています。
これが怖いのです。
死亡事故が続いた後、
ラストの事例のみがギリギリで助かります。
事故の原因が、事故後に字幕で説明されます。
「えっ」という感じで、
これも上質なミステリーのような驚きがありました。

また上演されれば必見の舞台です。

ただ、反戦演劇の路線に大きく傾斜してからは、
正しいことは理解出来ても、
娯楽としてはつらい作品が多く、
個人的には「屋根裏」のような、
1つの仮定から縦横無尽に想像力を広げて行くような作風が、
燐光群の主な魅力に感じていたので、
劇場からはしばらく遠ざかるようになりました。

元々が転位21の流れを汲んでいて、
演技の質感もアングラ色があったのですが、
最近は少なくとも演技からは、
そうした色は抜けています。

今回は「現代能楽集」として、
全編をクイズのみで構成する芝居、
という触れ込みでしたので、
これは昔の路線に近いのかな、
それなら観てみようかしら、
と思って急遽劇場に足を運びました。

結論的にはちょっとつらい観劇でした。

作品は「クイズ・ショウ」という言葉から派生するイメージを、
縦横無尽に取り込んで、
それぞれに結び付きのある断章を、
暗転をスパイスにして並べる、という趣向で、
それ自体は悪くありません。

ただ、当初想像していたように、
全てがクイズになっている、ということはなく、
「クイズ・ショウ」自体が演じられたり、
何処かに旅行に行ってからクイズが始まったり、
クイズを生き甲斐にしている人の話であったり、
というような具合で、
クイズをテーマにした、
普通のお芝居の短編集というような印象でした。

1テーマの作品集ということであれば、
特に目新しい趣向ではありません。
それにしては作品の自由度が少なく、
同じようなタイプの作品が連続する上に、
役者さんも同じようなタイプの方が多いので、
全体にのっぺりした単調なイメージで、
段々と観ているのがしんどくなって来ます。

2時間20分という上演時間も、
こうした作品としては如何にも長く感じます。
ぎゅっと圧縮して、
1時間半から2時間の間くらいにすれば、
もっと面白い作品になったのではないでしょうか。

クイズの内容やその捉え方、
「クイズ・ショウ」の何処に問題意識を持つか、
というような点では、
坂手さんらしい腕の冴えは感じられました。
ただ、内容にはもっと自由度があって良いと思いますし、
色々な形式のクイズがある筈なのに、
単一のものしか登場しない、
という辺りも退屈に感じます。

役者さんは力量はあるのですが、
あまりに同じようなスタイルの方が多いので、
全体に集団場面も膨らみが感じられません。
劇団員は良いとして、
ゲストの人選には、
もう少し工夫が必要なのではないか、
と感じました。
以前下総源太郎さんという役者さんがいて、
ちょっと変な芝居をして、
それがトータルには作品に膨らみを与えていたのですが、
下総さんが抜けてから、
どうも演技の平板な印象が強くなったように思います。

今回の作品などは、
強烈な個性の方が1人加わると、
また大分印象が変わったのではないか、
と思いました。

燐光群に僕が望みたいことは、
明確なアジテーションのあるような芝居も、
それはそれで良いと思いますし、
燐光群の持ち味だと思います。
そうした作品は、
中途半端に「公正」であるより、
メッセージが極端でも、芝居ですから良いと思うのです。
ただ、「屋根裏」のファンとしては、
今まで見ていた世界が、
グルリと反転するような、
純粋な想像力の世界が味わいたいので、
そうした作品は作品として、
上演を続けて欲しいと思います。
今回は私見ではちょっと中途半端で、
主張はちょこちょこ出しながら、
全体は煙に巻く、と言う感じなので、
こうしたものはあまり魅力を感じないのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 4

ぼんぼちぼちぼち

屋根裏 演劇史上に残る名作でやすよね。
あっしも複数回足を運びやした。
役者陣も秀逸でやしたね(◎o◎)
by ぼんぼちぼちぼち (2015-03-28 13:56) 

fujiki

ぼんぼちぼちぼちさんへ
あれは良かったですね。
ああいう密度のある芝居はなかなかありません。
by fujiki (2015-03-28 20:41) 

さき

お疲れさまです。
このお芝居の事は分かりませんが、医師が演劇、音楽、小説に
関心を持たれるのは、良いことではないかと思います。
下北沢の芝居小屋や舞台は、独特な雰囲気があると聞いています。
by さき (2015-03-31 14:20) 

fujiki

さきさんへ
コメントありがとうございます。
良いことかどうかはわかりませんが、
好きであることは確かです。
by fujiki (2015-03-31 22:43) 

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