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2型糖尿病の癌リスクをどの程度に考えるか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
2型糖尿病と癌.jpg
今月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
2型糖尿病と癌の発症率や予後との関連についての論文です。

糖尿病では癌が多く、
癌の発症率も死亡率も、
糖尿病でない人よりずっと多い、
というような話は、
糖尿病の教科書などには、
必ず載っている話です。

しかし、実際にどのタイプの癌のリスクが、
どの程度増えるというデータがあり、
そのデータの信頼性はどの程度のものなのか、
というように調べて見ると、
意外に心もとない結果が多いことに気付きます。

そもそも糖尿病における、
独立した発癌メカニズムのようなものが、
あるのかどうかという点も、
定かではありません。

全ての癌が一様に糖尿病で増加するかと言うと、
決してそうしたことはなく、
たとえば前立腺癌は、
明瞭なものでは唯一、
糖尿病の患者さんの方が発症率が低いというデータが、
複数存在しています。

胃癌はどうかと思って、
メタ解析の結果などを見てみると、
発癌リスクが1.08倍増加する、
というような、
これで本当に差があると臨床的に言えるのかしら、
と疑問の残るような数字に突き当たります。

そもそも糖尿病は全身疾患で、
その進行した状態では、
多くの全身の病気を併発しますから、
癌が糖尿病で多いということ自体は、
ほぼ事実と考えて良いと思いますが、
定期的に色々な検査をしているので、
そのために見付かり易い、
というようなバイアスも考えられますし、
糖尿病そのものではなく、
そこに併発する色々な状態の方が、
発癌のリスクとなっている可能性もある訳です。

今回の研究では、
これまでの2型糖尿病と癌との関連についての、
主なメタ解析27種類を俯瞰的に検証し、
実際にどのタイプの癌と、
2型糖尿病との関連が強いのかを検討しています。

その結果では、
多くの癌について、
確かにそれなりの相関は認められるけれど、
明確に関連があると厳しい基準で認定出来るものは、
その中の僅かで、
具体的には乳癌と子宮体癌、
肝内胆管癌と大腸癌については、
明確に糖尿病と関連付けられると結論付けています。
ただ、これは全て発症リスクに関してのもので、
死亡リスクについては、
明確には関連のあると確定的な癌はありません。

ちなみに最もリスクが高いのが、
肝内胆管癌と子宮体癌で、
この2種類に関しては、
糖尿病の患者さんでそうでない人の2倍程度の、
発症リスクの増加が認められます。

膵臓癌などは、
リスクが増加したとする報告は多く、
4倍以上というデータもあるのですが、
そもそも膵臓癌自体が糖尿病を合併しますから、
かなり条件のバラバラなデータが多く、
きちんとした評価に耐えうるようなものではないのです。

要するにこれまでの疫学データから厳密に言えることは、
大腸癌、乳癌、子宮体癌、肝内胆管癌の4種類の癌では、
最大で2倍程度の発癌リスクの増加が、
糖尿病により認められるので、
よりその可能性を念頭においた、
患者さんの管理が重要になる、
ということです。
それ以外の癌については、
若干は増える可能性がありますが、
厳密な意味では糖尿病との関連ははっきりしないのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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