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東陽一「サード」 [映画]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

診療所は明日まで年末年始の休診です。

今奈良から戻ったところです。
京都は大雪で驚きました。
奈良も吹雪きましたが、
パウダースノーですぐに溶けました。

帰りの新幹線は結構遅れました。

今日は僕の好きな映画の話です。

それがこちら。
サード.jpg
東陽一監督の「サード」は、
1978年制作のATG映画で、
1977年に新人賞を取った「九月の町」という小説を原作に、
寺山修司が台本を書き、
主役は新人の永島敏行で、
共演はこれもデビューとなった新人の森下愛子です。

と言っても、
実際には寺山修司の台本は殆ど使用されず、
上演台本ははぼ東監督のオリジナルです。

寺山修司をリスペクトする意味で、
封切り時のパンフレットには、
寺山版の台本の全文が載せられていますが、
例によって散文を連ねた、
過剰なナレーションや詩などが流れるもので、
基本的に情緒的で静謐な東陽一の世界とは、
水と油のようなものでした。

従って、仕上がった作品に、
寺山色はまるでありません。

僕は封切りの時は高校生で、
週間朝日の劇評で、
白井佳夫さんが絶賛していたのを読んで行くことにしました。

ちなみに、
白井さんの劇評は辛口で好き嫌いが激しく、
白井さんの評価を読んで観た映画のうちで、
当たりはこの「サード」以外には、
ルパン3世のマモーとカリオストロの城の映画くらいで、
後は随分と妙ちきりんで万人向けとは、
とても言えないような映画も見ています。

観たのは日劇地下で、
ここではATG映画の回顧上映や、
ベルイマンの「沈黙」や「魔術師」、
ヒッチコックの「海外特派員」や「逃走迷路」などを観ています。

舞台は少年刑務所で、
収監されている永島敏行の日常を、
淡々と綴り、
それから過去の売春絡みの、
悲しい事件が明らかになります。

今観ると北野武の映画のトーンに近く、
沈んだブルーを強めた透明感のある映像もそうですし、
緊張感を孕んだ、
淡々としたタッチも共通しています。
素人の役者を、
そのままの素で使うという姿勢も共通しています。
勿論こちらの方が元祖です。

永島敏行の寡黙な存在感が抜群で、
全てがもう既に終わってしまった、
というような終末感のある世界に、
良く似合っていました。

それはニューシネマ全盛の当時の雰囲気でもありましたが、
今観るのにも通底する気分でもあるように思います。

今のこの時代は、
意外に70年代の気分に回帰しているような気がします。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い新年をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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