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小児の維持点滴のナトリウム濃度について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
小児点滴のナトリウム濃度.jpg
今月のLancet誌に掲載された、
小児の点滴のナトリウム(塩分)濃度についての論文です。

点滴液には様々なナトリウム濃度のものがあります。

生理食塩水と言って、
人間の血液とほぼ同じナトリウム濃度のものがあり、
これはナトリウムが154mEq/Lという濃度になります。
これは出血したような時に、
一時的に血液の欠乏を補うために使用されます。

食事が一時的に摂れないような場合に、
口からの食事や飲水の代わりに使用する、
維持輸液としては、
ナトリウム濃度が77mEq/Lのものと、
51mEq/Lのもの、そして38mEq/Lのものなどがあり、
これがそれぞれの用途によって使用されています。

小児の維持輸液としては、
長く30mEq/L程度の、
低ナトリウム濃度のものが使用されて来ましたが、
ナトリウムの相対的な欠乏により、
低ナトリウム血症という病態がしばしば生じ、
痙攣などの原因となることが報告されています。
そこでよりナトリウム濃度の高い、
70から77mEq/L程度の維持液を使用する試みもあり、
一定の効果が確認されていますが、
それでも低ナトリウム血症の発生には、
あまり差がなかった、とする報告もあります。

今回の研究では、
オーストラリアの小児病院において、
数日間の点滴治療が必要となった、
生後3ヵ月から18歳の患者さん690名を、
くじ引きで2つの群に分け、
一方はナトリウム濃度が77mEq/Lの点滴を行ない、
もう一方は140mEq/Lの点滴を、
患者さんにも主治医や医療スタッフにも、
どちらかは分からないように、
3日間施行し、
その間の有害事象の有無や、
低ナトリウム血症の有無を検証しています。

事前に電解質濃度は測定して、
それが130未満と150以上のケースは除外とし、
基礎値から3以上の増減があって、
135未満となることを、
低ナトリウム血症と定義しています。

その結果…

経過の中で、
ナトリウム濃度が77mEq/Lの点滴では、
11%の患者さんが低ナトリウム血症になったのに対して、
140mEq/Lの点滴ではその頻度は4%で、
高濃度の点滴により、
低ナトリウム血症のリスクは、
69%有意に低下しました。

痙攣の発症も、
高濃度の点滴では1例であったのに対して、
低濃度の点滴では7例に認められました。

ただ、詳細は不明ですが、
重篤な有害事象は、
低濃度群で4例に対して高濃度群で8例と、
有意差はありませんが高濃度群で多い傾向にありました。

従って、
この結果のみをもって、
小児の維持輸液に高濃度のナトリウムが望ましい、
とも言い切れないように思いますが、
低ナトリウム血症を来し易い小児においては、
点滴剤のナトリウム濃度には、
より慎重な調節が必要だ、
ということは事実のようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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