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局所的感染症情報(2014年12月) [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から紹介状など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は診療所周辺の感染症情報です。

インフルエンザの流行が本格化し、
診療所のある渋谷区でも患者さんが増加しています。

今のところA型(おそらくA香港型)が殆どで、
B型が極少数混ざっている、
という感じです。

診療所でも少数のB型の患者さんを経験していて、
熱の上がりがそれほどではない割には、
重症感が強く、
発熱期間も持続するため、
1例は点滴のラピアクタを使用しました。

ただ、敢くまで少数の事例のみの検討ですから、
全てに当て嵌まるという訳ではありません。

A香港型に関しては、
お子さんや若年成人では、
かなり典型的なインフルエンザの経過を取っています。

突然の高熱で発症し、
寒気や関節痛、頭痛などを伴い、
かなり重症感があります。

症状の初期には吐き気を伴うことが多いのですが、
ウイルス性腸炎とは違って、
下痢や腹痛が前面に立つことはほぼありません。

高熱の持続期間は短く、
多くは3日以内で速やかに改善に向かいます。

一方で高齢者に感染したケースでは、
あまり高熱にはならないことが多く、
咳や痰が症状としては目立つ印象です。
初期には比較的重症感があるのですが、
熱はすぐに微熱になり、
それでいて咳などの症状は結構持続します。

当初はあまりインフルエンザを疑わず、
検査もしなかったのですが、
高齢者施設で集団感染の事例があり、
それからそうした事例が、
結構多いことが分かりました。

今年のインフルエンザに関しては、
12月の初めにこんなニュースがありました。

今年のインフルエンザでは、
変異したウイルスが多く検出されていて、
インフルエンザワクチンは効かない可能性が高い、と言うのです。

その後で診療所に見えた患者さんからは、
「今年のワクチンは効かないんでしょ。
じゃ、今年は打つのは止めますね」
というような話を何度も聞きました。

その報道の元になっているのが、
おそらくこれです。
CDC.jpg
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が、
12月4日に出したプレスリリースです。

アメリカの話ですが、
今シーズンのインフルエンザの流行は、
A香港型(H3N2型)が主体になる可能性が高く、
しかもその半数ではワクチン株とは異なる変異が認められる、
という内容になっています。

日本のメディアは意地悪なので、
「今年のワクチンは効かない」というような文面になっていて、
アメリカの話なのに日本のことのように、
混同させるような表現も認められました。

ただ、元の文面を読んで頂くと、
決してそうした内容ではなく、
今年はややウイルス株と流行株が、
A香港型についてはマッチしていないので、
その有効性が低下する可能性が高い、
ということは事実なのですが、
一定の有効性はあるので、
ワクチン接種自体は推奨する内容になっています。

今年のインフルエンザは重症化する、
と言うのは、
単純にA香港型の性質を言っているもので、
特に変異があるから重症、という意味合いではありません。

インフルエンザワクチンの選定株については、
基本的には世界同一で、
A香港型と2009年に新型と言われたH1N1、
そしてB型の3種類なのですが、
アメリカを含む多くの国が、
A香港型については、
昨シーズンと同一の、
A/テキサス/50/2012という株を選定していますが、
日本では、
A/ニューヨーク/39/2012株を唯一選定しています。

この理由は、
現行のワクチンの多くが鶏卵で培養されていて、
その製造過程の中で、
元のウイルス抗原に鳥型の変異が起こり、
元の株と抗原性が変わってしまう、
「卵馴化」という現象の影響を加味してのものです。

どんなウイルス株を用いても、
製法上こうした抗原性の変化は、
僅かには起こるのですが、
それが現行のワクチン株では大きいのではないか、
という想定から、
より抗原性の変化の少ない流行株を選定し、
今回の決定となった、ということのようです。

従って、
これはCDCの言うA香港型の変異とは、
全くの別物ですが、
今シーズンのワクチンに関しては、
海外のものと日本のものとは、
少し抗原性が異なるので、
その効果にも差がある可能性がある訳です。

いずれにしても流行はこれからがピークと思いますので、
皆さんもくれぐれもご注意ください。

今日は診療所周辺の感染症情報をお届けしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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