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保湿剤によるアトピー性皮膚炎の発症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
保湿剤のアレルギー予防効果.jpg
今年のJournal of Allergy and Clinical Immunology誌に掲載された、
新生児期からの保湿剤の使用による、
アトピー性皮膚炎の予防効果を面症した論文です。

これは国立成育医療研究センターのグループによるもので、
医療ニュースとしても配信されました。

これは非常に興味深く、
一般の臨床に直結する意義のある研究だと思いますが、
一方で特定の商品の宣伝臭が強いのが難点です。

アトピー性皮膚炎のお子さんは多く、
それを予防するような生活習慣などがないだろうか、
というのは、多くのお母さんの願いだと思います。

アトピー性皮膚炎の原因は、
完全には分かっていませんが、
生まれつき身体の皮膚のバリア機能が低下していると、
細菌感染などによる、
皮膚の炎症性の変化が起こり易くなり、
それが誘因の1つとなるという考え方があります。
またピーナツオイルによるピーナツアレルギーのように、
特定の抗原が皮膚からアレルギーを誘導する、
というような考え方もあります。

その予防のための1つの方法として、
今回の研究では、
資生堂の2e(ドゥーエ)という保湿ローションを用いて、
アトピー性皮膚炎の家族歴のある新生児118人を2群に分け、
一方は生後すぐから32週間に渡り毎日全身に塗布し、
もう一方では未使用で、
乾燥したような部位のみにワセリンを塗布して、
その32週の時点までのアトピー性皮膚炎の発症の有無と、
アレルギーの抗体の有無を、
比較検証しています。

その結果…

32週までの間に、
保湿ローション使用群では59例中19例が、
未使用群では59例中28例がアトピー性皮膚炎を発症していて、
これは保湿ローションの連日の全身使用により、
アトピー性皮膚炎のその時点までの発症が、
32%抑制された、という計算になっています。

家族歴のある場合、
未使用ではほぼ半数のお子さんが、
生後1年以内にアトピー性皮膚炎を発症しているのですから、
これはかなりの高率ということになります。

ただ、その原因としての卵白抗原などの抗体価の測定においては、
皮膚炎を発症したお子さんにおいて高い傾向はありましたが、
保湿ローション使用群と未使用群との間では、
明瞭な差は認められませんでした。

要するに生後すぐからの皮膚のダメージを防ぐために、
全身への保湿剤の使用を継続すると、
その後のアトピー性皮膚炎の発症を、
一定程度予防出来る可能性がある、
ということになります。

ただ、それではどの時点までの保湿剤の使用が有効なのか、
一旦中止しても良いのか、
それとも場合によっては半永久的に使用するべきなのか、
というような点についてはこの研究では明らかではありません。
おそらく今後経過観察は続行されると思われますから、
その点は今後もう少し明らかになるように思います。

更には保湿剤がこの資生堂の商品でないといけないのか、
それとも通常臨床で使用される、
別箇の保湿剤でも同様の効果があるのかも、
今回のデータでは明らかではありません。

せっかく重要な意味を持つ研究であるのに、
結果として特定の商品の宣伝になっている、
という点には、ちょっと釈然としない思いもします。

いずれにしても、
お子さんの肌の状態を見ながら、
アトピーなどの家族歴のある場合には、
生後すぐから保湿剤の使用を継続することには、
一定の意義があると考えても良さそうに思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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