SSブログ

収縮期血圧と心血管疾患リスクの新知見 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
収縮期高血圧と心血管リスクの新知見.jpg
今年の6月のJAMA Intern Med誌に掲載された、
収縮期血圧と心筋梗塞や脳卒中のリスクとの、
関連についての文献です。

昨日も触れましたように、
今年改訂されたアメリカの高血圧ガイドライン(JNC-8)では、
高血圧の治療目標値は、
その基礎疾患の有無には関わらず、
59歳までの年齢では上が140で下が90に設定されました。

この主な理由は、
降圧剤などを使用して血圧を下げる臨床試験において、
それより血圧を下げることによるメリットが確認されない、
という点にあります。

一般の人達を対象にした疫学研究では、
概ね上が115mmHg、下が75mmHgを越えると、
高くなるに従って、
心筋梗塞や心不全による死亡リスクは増加します。

この結果を見る限りは、
血圧の目標値は、
上を120位にした方が、
より患者さんのメリットになるのではないか、
と推察されます。

しかし、一方でリスクのある患者さんに対して、
血圧を上が140くらいを目標にコントロールする場合と、
それより低くコントロールする場合とで比較すると、
少なくとも精度の高い臨床試験のデータでは、
明確な予後の差は証明されていません。

しかし、介入試験のデータが乏しいからと言って、
それだけで

今回のデータはアメリカにおいて、
現在も継続中の動脈硬化関連の大規模な疫学研究のデータを用いて、
収縮期血圧とその後の心血管疾患の発症リスクを、
平均で20年以上という長期間に渡って検証しています。

ポイントは一般の人口ではなく、
高血圧の患者さんに限って検証を行なっていることで、
これまでの同種の研究よりも、
より高血圧の臨床の実態に近い、
と言うことが出来ます。

対象は登録の時点で45歳から64歳の男女で、
血圧が上が140で下が90を越えているか、
高血圧の治療歴があるか、
もしくは高血圧の治療中で、
かつ心筋梗塞や脳卒中、心不全などの持病はない、
4480名が今回は選択されています。

この対象者を平均で21.8年経過観察し、
その間の心筋梗塞や脳卒中などのリスクを、
登録時の収縮期血圧が、
140mmHg以上、120から139、120未満という3群に分け、
収縮期血圧毎の予後を観察しています。

その結果…

収縮期血圧が140mmHg以上の群では、
それ未満の群よりも、
年齢で補正した心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクは高く、
120から139の群より120未満の群の方が、
より発症リスクは低くなっていました。
ただ、120から139の群と、120未満の群との比較においては、
有意な心血管疾患の発症リスクの差は、
認められませんでした。

つまり、
現状の理解においては、
血圧の目標値を140未満とすることと、
より低い目標値を設定することとの間で、
明確な患者さんの予後の違いは、
明確ではない、という判断で良いようです。

ただ、今回の検討でも、
白人種とアフリカ系の人種とでは、
それほど明確ではありませんが、
血圧値に比してのリスクの違いのある傾向があり、
日本人ではまた別個の傾向がある、
と言う可能性もあります。

しかし、現状では日本に欧米に匹敵するようなデータの蓄積はなく、
昨日と同じような結論になりますが、
末端の臨床医の立場としては、
基本的には欧米の知見を理解した上で、
個々の患者さんの状態に合わせて、
それを微調整しつつ診療の当たるよりないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍引き続き発売中です。

よろしくお願いします。


健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





nice!(37)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 37

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0