バルバラ・フリットリ ソプラノ・リサイタル(2014) [コロラトゥーラ]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
現在最高のリリックソプラノの1人、
イタリアの名花バルバラ・フリットリのリサイタルが、
先日東京オペラシティで行なわれました。
フリットリは初来日は2005年と遅かったのですが、
その後はコンスタントに来日を繰り返していて、
キャンセルの相継いだ2011年6月の、
メトロポリタン歌劇場の来日公演にも参加してくれました。
日本で披露してくれたオペラのレパートリーは、
2005年のヴェルディ「ルイーザ・ミラー」のタイトルロールから始まって、
「フォルスタッフ」のアリーチェが2回、
「ラ・ボエーム」のミミが2回、
「ドン・カルロ」のエリザベッタ、
「コジ・ファン・トゥッテ」のフィオルディリージと、
いずれも極めて安定感のある、
充実した舞台が続きます。
僕は全て1回以上は聴いていますが、
一度も失望したことはありません。
ミミは日本での初役です。
ただ、「トゥーランドット」のリューを1日だけ歌うと言って、
当日にキャンセルし、
昨年は「トスカ」を歌うと言って全てキャンセルし、
今回はローマ歌劇場で「シモン・ボッカネグラ」を歌う予定が、
これも直前キャンセルになりました。
結果として今回の来日は、
このリサイタルのみとなったのですが、
蓋を開けて見れば絶好調の歌唱で、
どうもオペラの舞台に関しては、
特に喉への負担の大きなものについては、
非常に慎重になっているように思いました。
日本でリサイタルも何度も行なっていますが、
今回は間違いなくこれまでのベストで、
選曲も良く、歌い廻しも緻密でドラマチックで、
珍しく上の階まで殆ど満員の観客を、
大いに沸かせました。
何となく、もう日本での舞台はこれを最後にするつもりかしら、
と、あまりの気合の入り方に、
不安を覚えたくらいでした。
間違いなく、リサイタルとしては、
今年のこれまでのベストです。
彼女の魅力はまずはその天性の声で、
美しく磨き上げられた磨りガラスのような、
ちょっとくぐもった趣のある響きです。
変に透明で味わいのない声のソプラノは多く、
その一方で喉の使い方が悪く、
ただの痛んだ声になったしまったソプラノも多いのですが、
フリットリの声はそのいずれとも違っていて、
楽器で言えば、
年輪を経たほど良く枯れたそれでいて深い味わいです。
こうしたソプラノは今はあまりいません。
技術もあってコロラトゥーラのような装飾歌唱もこなします。
僕はモーツァルトのアリアの歌い廻しなど、
アジリタはそれほど高速ではありませんが、
端正で非常に好きです。
ただ、最近はあまり好んでは歌っていません。
今回は「皇帝ティートの慈悲」にある、
矢鱈と音程を上下するアリアを1曲入れていて、
これは絶品でした。
ヴェルディやプッチーニのドラマチックなアリアが、
また非常に見事で、
他の多くのソプラノがリサイタルなどでやるように、
無意味に声を張り上げたり、
中音域の誰でも歌えるような部分を、
矢鱈と長く伸ばして熱演っぽく見せるような下品なことを、
彼女は決してやりません。
繊細な弱音に情感を籠め、
盛り上がりは声よりもむしろ情感を先に溜めて高め、
それから声が後に続くようにコントロールして、
時にそれをスパッと断ち切って、
その余韻に万感の思いを籠めます。
「トスカ」の「恋に生き、愛に生き」のアリアは、
これまでにもリサイタルで何度か聴いたのですが、
今回が最も良かったですし、
このアリア単独で言えば、
これまでに生で聴いた、
全てに勝る出来栄えと断言出来ます。
情感の盛り上がりをスッパりと断ち切った後、
その音圧の反作用のように、
身体をちょっと引くような動作があって、
彼女はこれまであまりそうした大仰なプリマドンナめいた仕草を、
むしろ控えていたように思うのですが、
今回は風格を持ってそうした仕草も堂々を演じていて、
つくづく彼女は本物の大歌手になったと、
その思いを強く感じたのです。
今年はどうも、やる気がなかったり、
実力がなかったり、
声の調子が悪くでボロボロだったり、
ただ声を張り上げるだけで、
アンコールでは疲れて尻すぼみになったりと、
ヘッポコリサイタルを山のように聴いたので、
掛け値なしの本物にようやく出逢えて、
満足の余韻のうちにホールを後にすることが出来ました。
最初の歌曲の後で拍手の起こった時は、
この間のエルトマンの悪夢を思い出して、
絶望的な気分になったのですが、
幸いその後は合間の無神経拍手もなく、
フライングの拍手も少なかったので、
まずまずホッとした思いがしました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
現在最高のリリックソプラノの1人、
イタリアの名花バルバラ・フリットリのリサイタルが、
先日東京オペラシティで行なわれました。
フリットリは初来日は2005年と遅かったのですが、
その後はコンスタントに来日を繰り返していて、
キャンセルの相継いだ2011年6月の、
メトロポリタン歌劇場の来日公演にも参加してくれました。
日本で披露してくれたオペラのレパートリーは、
2005年のヴェルディ「ルイーザ・ミラー」のタイトルロールから始まって、
「フォルスタッフ」のアリーチェが2回、
「ラ・ボエーム」のミミが2回、
「ドン・カルロ」のエリザベッタ、
「コジ・ファン・トゥッテ」のフィオルディリージと、
いずれも極めて安定感のある、
充実した舞台が続きます。
僕は全て1回以上は聴いていますが、
一度も失望したことはありません。
ミミは日本での初役です。
ただ、「トゥーランドット」のリューを1日だけ歌うと言って、
当日にキャンセルし、
昨年は「トスカ」を歌うと言って全てキャンセルし、
今回はローマ歌劇場で「シモン・ボッカネグラ」を歌う予定が、
これも直前キャンセルになりました。
結果として今回の来日は、
このリサイタルのみとなったのですが、
蓋を開けて見れば絶好調の歌唱で、
どうもオペラの舞台に関しては、
特に喉への負担の大きなものについては、
非常に慎重になっているように思いました。
日本でリサイタルも何度も行なっていますが、
今回は間違いなくこれまでのベストで、
選曲も良く、歌い廻しも緻密でドラマチックで、
珍しく上の階まで殆ど満員の観客を、
大いに沸かせました。
何となく、もう日本での舞台はこれを最後にするつもりかしら、
と、あまりの気合の入り方に、
不安を覚えたくらいでした。
間違いなく、リサイタルとしては、
今年のこれまでのベストです。
彼女の魅力はまずはその天性の声で、
美しく磨き上げられた磨りガラスのような、
ちょっとくぐもった趣のある響きです。
変に透明で味わいのない声のソプラノは多く、
その一方で喉の使い方が悪く、
ただの痛んだ声になったしまったソプラノも多いのですが、
フリットリの声はそのいずれとも違っていて、
楽器で言えば、
年輪を経たほど良く枯れたそれでいて深い味わいです。
こうしたソプラノは今はあまりいません。
技術もあってコロラトゥーラのような装飾歌唱もこなします。
僕はモーツァルトのアリアの歌い廻しなど、
アジリタはそれほど高速ではありませんが、
端正で非常に好きです。
ただ、最近はあまり好んでは歌っていません。
今回は「皇帝ティートの慈悲」にある、
矢鱈と音程を上下するアリアを1曲入れていて、
これは絶品でした。
ヴェルディやプッチーニのドラマチックなアリアが、
また非常に見事で、
他の多くのソプラノがリサイタルなどでやるように、
無意味に声を張り上げたり、
中音域の誰でも歌えるような部分を、
矢鱈と長く伸ばして熱演っぽく見せるような下品なことを、
彼女は決してやりません。
繊細な弱音に情感を籠め、
盛り上がりは声よりもむしろ情感を先に溜めて高め、
それから声が後に続くようにコントロールして、
時にそれをスパッと断ち切って、
その余韻に万感の思いを籠めます。
「トスカ」の「恋に生き、愛に生き」のアリアは、
これまでにもリサイタルで何度か聴いたのですが、
今回が最も良かったですし、
このアリア単独で言えば、
これまでに生で聴いた、
全てに勝る出来栄えと断言出来ます。
情感の盛り上がりをスッパりと断ち切った後、
その音圧の反作用のように、
身体をちょっと引くような動作があって、
彼女はこれまであまりそうした大仰なプリマドンナめいた仕草を、
むしろ控えていたように思うのですが、
今回は風格を持ってそうした仕草も堂々を演じていて、
つくづく彼女は本物の大歌手になったと、
その思いを強く感じたのです。
今年はどうも、やる気がなかったり、
実力がなかったり、
声の調子が悪くでボロボロだったり、
ただ声を張り上げるだけで、
アンコールでは疲れて尻すぼみになったりと、
ヘッポコリサイタルを山のように聴いたので、
掛け値なしの本物にようやく出逢えて、
満足の余韻のうちにホールを後にすることが出来ました。
最初の歌曲の後で拍手の起こった時は、
この間のエルトマンの悪夢を思い出して、
絶望的な気分になったのですが、
幸いその後は合間の無神経拍手もなく、
フライングの拍手も少なかったので、
まずまずホッとした思いがしました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/05/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
2014-06-07 08:08
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