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毛髪ミネラル分析の精度について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日話題です。

今日はこちら。
毛髪ミネラル分析.jpg
2001年のJAMA誌に掲載された、
毛髪ミネラル分析の精度についての文献です。

10年以上前の文献ですが、
この検査についての解説などでは必ず引用されるもので、
僕の認識の範囲では、
この時点以降に、
この問題についての新しい知見は、
あまり報告はないように思います。

毛髪ミネラル分析(Hair mineral analysis)というのは、
髪の毛を分析することで、
そこに含まれている微量な金属などを検出する検査のことです。

この検査は1980年代の初めには既に、
「商品」としてアメリカで販売されていて、
一般の人が自分の毛髪を送ると、
検査データが送られて来て、
ある成分が不足していたり、
多く蓄積していたりすると、
解毒のためのサプリメントが勧められたり、
補充のためのサプリメントが勧められたりする、
という仕組みの健康ビジネスに利用されています。

日本でもこの検査や同様の手法の爪のミネラル検査が、
近年、特に福島の原発事故以降は、
その絡みでも宣伝され施行されています。
医療機関が窓口になっているケースもあり、
そうでないケースもあります。
いずれの場合でも、
検査結果を元にサプリメントなどが勧められる、
という流れは一緒です。

別に商売目的の検査であっても、
検査として信頼がおけるもので、
一定の意義があれば目くじらを立てるようなものではありません。

しかし、本当のところはどうなのでしょうか?

1985年のJAMA誌にそれについての論文が掲載され、
その時点での解析では、
毛髪ミネラル分析と称する検査の再現性は低く、
データはまちまちで正常範囲の設定根拠も明確ではなく、
信頼のおける検査とは言えない、
という結論になっています。

しかし、そうした報告にも関わらず、
この検査自体は売上を伸ばし、
2001年の時点でアメリカ全土で年間225000件の検査が、
9社の検査会社によって行われている、
という記載が上記の文献中にはあります。

2001年時点で行なわれている検査は、
1985年時点よりは進歩している可能性はあり、
今回の文献では、
その検証目的で同じ毛髪のサンプルを、
9社うちで90%のシェアのある6社にそれぞれ送って、
解析結果を分析しています。
値段は30ドルから69ドルの間でした。

その結果…

ミネラルの濃度は、
本来は同じ筈ですが、
検査結果は最大で10倍を超える違いがあり、
その基準値も会社によりかなりのばらつきが存在していました。

従って、1985年の調査時と、
その信頼性の低さは違いがない、
という結果になりました。

総じて毛髪のミネラル検査は、
その濃度の個人差がかなり大きく、
再現性が低く、
トリートメントなどの髪に付ける成分によっても、
その数値は変動します。
また、これまでその精度や基準値、
実際の重金属中毒との関連性などが、
科学的に検証されたことは殆どなく、
現状は科学的な検査としては推奨されない、
というのが現時点での結論のようです。

皆さんも施行される場合にはご注意下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

bpd1teikichi_satoh

Dr.Ishihara爺が昔々、某医科大学の衛生学。公衆衛生学教室
に在籍していた時、患者さんの肺の組織の鉛の含有量を
原子吸光分析計で測定したことが有ります。測定する為には前処理(恢化)しなければ成らず、当時教室には、恢化装置が無かった為に、大学院の無機化学の友達に依頼して、両方の機器で測定した記憶が有ります。重金属を精密に分析する事は、中々難しい技術です。
by bpd1teikichi_satoh (2014-04-18 05:55) 

fujiki

bpd1teikichi_satoh さんへ
コメントありがとうございます。
原子吸光は私もストロンチウムの測定などで、
実験に使っていました。
髪や爪での測定の判断は難しく、
血液と尿の測定が、
現状はスタンダードなようです。
by fujiki (2014-04-18 08:23) 

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