アンドリュー・ロイド・ウェーバー「ラブ・ネバー・ダイ」 [演劇]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から診察室の片付けなどして、
それから今PCに向かっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
アンドリュー・ロイド・ウェーバー作曲の大ヒットニュージカル、
「オペラ座の怪人」の後日談を、
同じウェーバーが作曲したイギリス発のミュージカルの、
オーストラリア上演版をそのまま移植した日本版が、
今日生劇場で上演中です。
ロイド・ウェーバーの「オペラ座の怪人」は、
言わずと知れた大ヒットミュージカルで、
日本では劇団四季がロングランを行ないました。
「オペラ座の怪人」はガストン・ルルーの小説ですが、
ミュージカル版は原作そのものより、
その何度かの映画化、
特にサイレント時代の大ヒット映画を、
その主な下敷きにしています。
最後はちょっと尻すぼみのところがあるのですが、
オペラを巧みに取り込んだ音楽が楽しく、
最初のシャンデリアが吊り上って時間が遡るところは、
本当にワクワクする魅力があります。
今回の「ラブ・ネバー・ダイズ」は、
前作の10年後のアメリカを舞台にしたもので、
小さな芝居小屋を舞台としていることからも、
意図的に前作よりこじんまりとした作品を志向していることが分かります。
前作のファントムと歌姫クリスティーヌのキャストが、
そのまま演じて違和感がない、
というところがこの企画の肝なのではないかと思います。
今回の上演ではファントム役に、
かつて四季版の「オペラ座の怪人」で同役を務めた、
市村正親と、
上演時には既に退団していた鹿賀丈史が、
ダブルキャストで歌いますが、
鹿賀丈史の状態はあまり良いとは言えないようで、
「体調のため」という発表の元に、
既に何度か予定をキャンセルしています。
僕が観たのは市村正親と平原綾香のペアのものですが、
オヤオヤという感じのストーリーを、
何とか市村さんの気合で見せ切った、という感じの舞台で、
海外発の演出が、
なかなかしっかりと出来ていたのが何よりでした。
予算の問題も大きいのでしょうが、
国産の演出でこの手のものを手掛けると、
大体悲惨な舞台になることが多いからです。
以下ネタばれがあります。
前作で死んだ筈のファントムが、
実はマダム・ジリーの手引きでオペラ座を逃れてアメリカに渡り、
マダムが率いる芝居小屋に、
かつてのようなグロテスクな世界を作っています。
前作のヒロインのクリスティーヌは、
オペラの世界的なスター歌手になりますが、
彼女と結婚したラウルは酒浸りで借金塗れの状態で、
お金のためにアメリカでの公演の話を受けるのですが、
それが実はクリスティーヌのことが忘れられない、
ファントムの策略だったのです。
クリスティーヌとラウルには、
10歳になる1人息子がいますが、
実はその息子の父親はファントムです。
マダム・ジリーの1人娘はその芝居小屋の一座の花形で、
ファントムに認められたいと願っているのですが、
ファントムはクリスティーヌの歌声以外には、
何の興味も示さないのです。
このようにして、
愛憎は絡み合い当然の如くに悲劇が生じます。
内容はなるほどな、という感じではあるのですが、
子供の話はちょっと脱力する感じがありますし、
前作のようにファントムが悲劇の悪漢ではなく、
ただウジウジ悩んでいるだけの人なので、
話はどうしても悪役不在で盛り上がりには欠けます。
ウェーバーの音楽は、
1シーンのみ前作の曲が部分的に使用されますが、
後はこの作品のオリジナルで、
その点では意欲的です。
ただ、楽曲の魅力は前作には遠く及びませんし、
クライマックスがファントムが心血を注いだ一曲を、
クリスティーネが歌う、という場面にありながら、
その曲がやや凡庸なものである、
という点が減点材料です。
オリジナルの「オペラ座の怪人」は、
疑似オペラというようなスタイルが通底していて、
ドニゼッティ風の旋律があったり、
ヴェルディ風の旋律があったりして、
オペラファンにも楽しめるものであったのですが、
今回の作品はもっとロックオペラの形式に近く、
オペラ風の旋律は全くなかったのは個人的には残念に思いました。
演出と美術はなかなか凝った面白いもので、
ティム・バートンの「バットマン・リターンズ」を彷彿とさせるような、
畸形の楽園のビジュアルが、
個人的には好印象です。
クリスティーネとラウルの前に、
機械仕掛けの怪しい馬車が姿を現すところなど、
往年の怪奇映画を思わせる楽しさです。
キャストは市村正親のファントムがさすがの存在感で、
僕は市村さんの舞台に、
あまり良い印象を持ったことが少ないのですが、
今回はその資質の良く現れた熱演と感じました。
クリスティーネの平原綾香さんは、
もう少し歌える人だと思っていたので、
不安定なファラセットの高音など、
ちょっと残念に感じました。
総じて悪くない世界観で、
畸形の行進などグッと来るのですが、
作品自体はこじんまりとしてるのに、
仰々しい売り方をしているので、
ちょっと落胆を感じますし、
僕の聴いた日の歌唱では、
クリスティーネの歌は落第点だと思いました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から診察室の片付けなどして、
それから今PCに向かっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
アンドリュー・ロイド・ウェーバー作曲の大ヒットニュージカル、
「オペラ座の怪人」の後日談を、
同じウェーバーが作曲したイギリス発のミュージカルの、
オーストラリア上演版をそのまま移植した日本版が、
今日生劇場で上演中です。
ロイド・ウェーバーの「オペラ座の怪人」は、
言わずと知れた大ヒットミュージカルで、
日本では劇団四季がロングランを行ないました。
「オペラ座の怪人」はガストン・ルルーの小説ですが、
ミュージカル版は原作そのものより、
その何度かの映画化、
特にサイレント時代の大ヒット映画を、
その主な下敷きにしています。
最後はちょっと尻すぼみのところがあるのですが、
オペラを巧みに取り込んだ音楽が楽しく、
最初のシャンデリアが吊り上って時間が遡るところは、
本当にワクワクする魅力があります。
今回の「ラブ・ネバー・ダイズ」は、
前作の10年後のアメリカを舞台にしたもので、
小さな芝居小屋を舞台としていることからも、
意図的に前作よりこじんまりとした作品を志向していることが分かります。
前作のファントムと歌姫クリスティーヌのキャストが、
そのまま演じて違和感がない、
というところがこの企画の肝なのではないかと思います。
今回の上演ではファントム役に、
かつて四季版の「オペラ座の怪人」で同役を務めた、
市村正親と、
上演時には既に退団していた鹿賀丈史が、
ダブルキャストで歌いますが、
鹿賀丈史の状態はあまり良いとは言えないようで、
「体調のため」という発表の元に、
既に何度か予定をキャンセルしています。
僕が観たのは市村正親と平原綾香のペアのものですが、
オヤオヤという感じのストーリーを、
何とか市村さんの気合で見せ切った、という感じの舞台で、
海外発の演出が、
なかなかしっかりと出来ていたのが何よりでした。
予算の問題も大きいのでしょうが、
国産の演出でこの手のものを手掛けると、
大体悲惨な舞台になることが多いからです。
以下ネタばれがあります。
前作で死んだ筈のファントムが、
実はマダム・ジリーの手引きでオペラ座を逃れてアメリカに渡り、
マダムが率いる芝居小屋に、
かつてのようなグロテスクな世界を作っています。
前作のヒロインのクリスティーヌは、
オペラの世界的なスター歌手になりますが、
彼女と結婚したラウルは酒浸りで借金塗れの状態で、
お金のためにアメリカでの公演の話を受けるのですが、
それが実はクリスティーヌのことが忘れられない、
ファントムの策略だったのです。
クリスティーヌとラウルには、
10歳になる1人息子がいますが、
実はその息子の父親はファントムです。
マダム・ジリーの1人娘はその芝居小屋の一座の花形で、
ファントムに認められたいと願っているのですが、
ファントムはクリスティーヌの歌声以外には、
何の興味も示さないのです。
このようにして、
愛憎は絡み合い当然の如くに悲劇が生じます。
内容はなるほどな、という感じではあるのですが、
子供の話はちょっと脱力する感じがありますし、
前作のようにファントムが悲劇の悪漢ではなく、
ただウジウジ悩んでいるだけの人なので、
話はどうしても悪役不在で盛り上がりには欠けます。
ウェーバーの音楽は、
1シーンのみ前作の曲が部分的に使用されますが、
後はこの作品のオリジナルで、
その点では意欲的です。
ただ、楽曲の魅力は前作には遠く及びませんし、
クライマックスがファントムが心血を注いだ一曲を、
クリスティーネが歌う、という場面にありながら、
その曲がやや凡庸なものである、
という点が減点材料です。
オリジナルの「オペラ座の怪人」は、
疑似オペラというようなスタイルが通底していて、
ドニゼッティ風の旋律があったり、
ヴェルディ風の旋律があったりして、
オペラファンにも楽しめるものであったのですが、
今回の作品はもっとロックオペラの形式に近く、
オペラ風の旋律は全くなかったのは個人的には残念に思いました。
演出と美術はなかなか凝った面白いもので、
ティム・バートンの「バットマン・リターンズ」を彷彿とさせるような、
畸形の楽園のビジュアルが、
個人的には好印象です。
クリスティーネとラウルの前に、
機械仕掛けの怪しい馬車が姿を現すところなど、
往年の怪奇映画を思わせる楽しさです。
キャストは市村正親のファントムがさすがの存在感で、
僕は市村さんの舞台に、
あまり良い印象を持ったことが少ないのですが、
今回はその資質の良く現れた熱演と感じました。
クリスティーネの平原綾香さんは、
もう少し歌える人だと思っていたので、
不安定なファラセットの高音など、
ちょっと残念に感じました。
総じて悪くない世界観で、
畸形の行進などグッと来るのですが、
作品自体はこじんまりとしてるのに、
仰々しい売り方をしているので、
ちょっと落胆を感じますし、
僕の聴いた日の歌唱では、
クリスティーネの歌は落第点だと思いました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2014-03-29 08:10
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