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今シーズンの「新型インフルエンザ」A(H1N1)pdm09ウイルスの動向について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
新型インフルエンザの動向2014JAMA.jpg
今シーズンのアメリカのインフルエンザの動向をまとめた、
先月のJAMA誌の解説記事ですが、
ほぼ同じ内容の同じ著者による記事が、
New England…にも先月巻頭の解説記事として載っています。

2009年に新型インフルエンザとして流行した、
H1N1というタイプのA型インフルエンザウイルスの感染症が、
その後数年は世界的になりを潜めていて、
今シーズン再び世界的な流行をしています。

ややこしい言い方ですが、
A(H1N1)pdm09ウイルスと呼ぶのが正式です。

このA(H1N1)pdm09ウイルスの流行には、
幾つかの問題があります。

その1つはこのウイルスが時に重症の合併症の原因となることと、
タミフルの耐性ウイルスが見付かっていることです。

上記の文献によれば、
今シーズン流行している「新型インフルエンザ」ウイルスは、
2009年流行時から基本的には大きな変異はなく、
現行使用されているワクチンは有効だと考えられます。

従って、今シーズンのこのウイルスの流行の多数は、
ワクチン未接種者の感染の事例です。

これは日本でもアメリカでも変わることはない事項です。

タミフルの耐性ウイルスは、
アメリカでも日本でも同じように見付かっています。

ただ、その頻度は低く、
病状にも耐性のないウイルスと、
大きな違いはないと考えられています。
日本で見付かっているタミフル耐性ウイルスと、
アメリカで同定されている耐性ウイルスとでは、
その系統は異なっていますが、
その性質は大きな差はないようです。

要するに稀に重症化が見られることは同一ですが、
耐性ウイルスなので余計に重症化する、
ということはないと考えられます。

アメリカでのインフルエンザ治療薬の選択肢は、
基本的にはタミフルとリレンザのみで、
注射薬のラピアクタは、
一般使用薬品の扱いではなく、
タミフル耐性が強く疑われたり、
その使用が不適切である重症の患者さんに限って、
限定的に使用される薬の位置付けです。

翻って日本では、
タミフル、リレンザに加えて、
1日1回の吸入薬のイナビルが使用出来、
注射薬のラピアクタも、
僕のような診療所でも自由に処方が可能です。

診療の自由度が高いのは良いことですが、
薬の濫用に繋がるようなリスクも存在しているように思います。

日本で発見された耐性ウイルスは、
タミフルばかりではなく、注射薬のラピアクタにも耐性で、
吸入薬のリレンザとイナビルの耐性はありませんでした。

ただ、これが臨床の現場で常に正しいとは限りません。

現行の抗ウイルス剤は、
ウイルスの複製が行なわれている時期ではないと、
その効果が期待出来ないので、
通常発熱から2日以内に使用を開始し、
使用期間は最長5日間と規定されています。

ただ、これは通常の経過を取った場合の話で、
気道感染が重症化したようなケースや、
免疫状態の低下した高齢者などでは、
ウイルスの複製がより長期間続くことがあり、
従ってその可能性が高ければ、
発熱から2日や使用期間の5日と言う縛りを、
常に守る必要はありません。
ステロイド剤の使用は、
免疫を低下させてウイルスの複製期間を延長させるので、
絶対的な必要性がある時以外は、
原則禁忌と考えられています。

A(H1N1)pdm09ウイルスの感染症状は、
基本的には他の季節性インフルエンザと同じですが、
腹痛や下痢がしばしば認められる傾向があります。
これは上記の文献にある記載ですが、
診療所の事例を見ていても、
矢張りそうした傾向は同じと思います。

診療所周辺では1月はA(H1N1)pdm09ウイルスの感染が広がり、
2月になってからは今度はB型インフルエンザの感染が拡大して、
先週からはA香港型が混在しているという状況です。
個々の流行状況に注意を払いながら、
慎重に診療に当たりたいと思います。

今日は今シーズンのインフルエンザ感染についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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