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2型糖尿病の認知機能低下とその予防について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

メダルが取れると期待した選手が、
失敗してメダルが取れない結果に終われば、
アメリカ大使館のセレブのおばさんでなくても「失望」しますし、
ガッカリしますよね。

なぜ失望するのかと言えば、
それは期待をしていたからです。

要するに失望とかガッカリというのは、
単独で存在するものではなく、
予め期待というものがあるからこそ、
その期待の大きさに応じて、
自然と生じる感情の作用な訳です。

にもかかわらず、
多くの良識的と言われている方や、
マスメディアの方や、
ツィッターなどで幅を利かせている方は、
期待だけは充分に持ち、
期待を煽るようなことをしているのに、
一般人が失望したりガッカリすると、
「選手が頑張った結果なのだから、
そういうことを言うのは失礼だ。
あなたは人間として恥ずかしくないのですか?」
のようなことを言って、
素朴なガッカリの反応をする人を、
今度は恥知らずのように批判しますよね。

勿論、一番苦しんでいるのは選手の筈ですから、
選手を非難するようなことが、
良いことでないのは分かります。

でも、期待すればガッカリするのは自然なことでしょ。

ガッカリしたくなければ期待しなければいいだけのことなのに、
期待だけは煽るのですから、
それはフェアではないような気がします。
何より感情を無理に抑えて、
「良い人」であることを演じないといけないのですから、
非人間的な感じがします。

怒る人もいて、
失望して悪口を言う人もいて、
いやいや頑張ったんだから暖かく迎えてあげよう、
という人もいるのが、
本当は健全なことではないかしら。

こうしたことをしていれば、
抑圧された「ガッカリ」は地下に潜り、
良からぬ何かに変わるような気がします。

以上は雑談でした。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖尿病の認知機能への介入試験.jpg
今月のJAMA Intern Med.誌にウェブ掲載された、
糖尿病の患者さんの認知症の予防についての論文です。

高齢者の2型糖尿病において、
糖尿病のない患者さんより認知症は進行し易く、
糖尿病の患者さんの中でも、
血圧が不安定であったり、
コレステロールや中性脂肪の異常があると、
より認知症が進行し易いということは、
多くの疫学データで確認された事実です。

それでは、
より厳格な血圧のコントロールや、
脂質のコントロールを行なうと、
糖尿病の患者さんにおける認知症の進行が予防出来るのか、
という点に関しては、
これまで明確なデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究においては、
糖尿病の患者さんを対象とした、
大規模な臨床研究であるACCORDという試験のデータを、
部分的に活用して、
血圧の厳格なコントロールと、
脂質の厳格なコントロールにより、
その後の認知機能の低下が、
予防されるかどうかを検証しています。

試験のデザインは複雑なのですが、
この認知症の予防に関しては、
平均年齢が62歳で、
糖尿病になってから平均で10年以上の期間があり、
血糖コントロールの指標であるHbA1cと言う数値が、
平均で8.3%という、
コントロールがやや不良の患者さんが対象となっています。

その結果、
血圧を120未満に厳格にコントロールしても、
悪玉コレステロールをスタチンという薬を使用して、
100mg/dL未満に下げた上に、
フィブレートという薬剤で更に中性脂肪も低下させても、
そうした強化療法により、
観察期間40ヵ月までの認知機能の低下に、
何ら違いは認められませんでした。

そればかりか、
血圧を120未満を目標として低下させると、
140未満を目標とした場合と比較して、
40ヵ月後の脳萎縮の進行は、
より悪化する傾向を認めました。

こうした予防効果というのは、
その病気の段階によっても異なるものだと思います。

糖尿病の初期の状態においては、
厳格な血糖コントロールも、
脂質のコントロールも、
血圧のコントロールも、
それぞれ認知症の進行予防に、
一定の意義のある可能性が高いのですが、
糖尿病になってコントロールの悪い状態のまま、
10年以上が経過し、
合併症もそれなりに進行したような段階となると、
厳格な血圧のコントロールや厳格な血糖のコントロールは、
認知症のような病態を、
進行させてしまうようなリスクがあるのかも知れません。

その時点の病態に合わせた、
慎重な投薬が重要なのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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モカ

こんにちは。
いつも拝読しています。

多くの因子がかかわってくる病気の予防というのはなかなか難しいですね。
共通する健康的な暮らしといのはあるかとは思いますが。

お酒、タバコ、肥満、運動、食生活、睡眠、ストレス。

たくさんありますね(^^;
by モカ (2014-02-21 11:22) 

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