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骨粗鬆症の治療薬で心筋梗塞が増えるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビスフォスフォネートと心血管リスク.jpg
先月のMayo Clin Proc.誌に掲載された、
ビスフォスフォネートという骨粗鬆症の治療薬と、
心筋梗塞の発症との関連性についての文献です。

ビスフォスフォネートは、
アレンドロネート(商品名ボナロン、フォサマックなど)や、
リセドロネート(商品名ベネット、アクトネルなど)がその代表で、
現時点で最も多用されている、
骨粗鬆症の治療薬です。

その主な作用は骨を壊す細胞の働きを抑制することにより、
骨量の減少を予防することにあります。

近年ビスフォスフォネートには、
血管壁にカルシウムが沈着するのを、
予防する効果があることが報告され、
動物実験のレベルでは、
動脈硬化を予防するというデータもあります。

また、高齢女性に限ったデータですが、
ビスフォスフォネートの使用が、
心筋梗塞や脳卒中のリスクの低下に結び付いた、
とする疫学データもあります。

ビスフォスフォネートには、
高コレステロール血症の治療薬であるスタチンと、
似通った作用を示して、
動脈硬化の進展を抑制する、
という見解もあります。

仮にこうしたことが事実であるとすれば、
高齢者にビスフォスフォネートを使用することは、
骨粗鬆症の治療であると共に、
動脈硬化の予防にもなり、
一石二鳥だ、ということにもなるのです。

しかし、
人間での臨床データは、
まだ不充分なもので閉経女性に偏っている、
という問題がありました。

そこで今回の研究では、
65歳以上の男性(白人が主体)の、
疫学データを活用して、
大腿骨頸部もしくは脊椎の骨折後に、
ビスフォスフォネートを使用した場合とそうでない場合とで、
その後の心筋梗塞の発症のリスクに、
違いがないかどうかを検証しています。

14256名が対象となっていて、
そのうちの2197名がビスフォスフォネートを使用しています。
薬剤としてはアレンドロネートが9割で、
7%がリセドロネートとなり、
他の薬剤はほんの数例の使用に留まっています。
心筋梗塞の既往はない方が対象で、
平均の観察期間は3.6年となっています。

その結果…

他の心筋梗塞の危険因子や他の薬剤の影響を補正した結果として、
ビスフォスフォネートを使用している患者さんでは、
使用していない患者さんと比較して、
その後の心筋梗塞の発症のリスクが、
1.38倍有意に増加した、
という結果が得られました。

要するに、
当初の推定であった、
ビスフォスフォネートが心筋梗塞の発症を予防するのでは、
という考えに全く反対の結果です。

何故このような相反する結果になったのでしょうか?

現状は全く分かりません。

これまでの予防効果があったとするデータの多くは、
閉経後の女性のものですから、
この現象には性差が存在しているのかも知れません。

いずれにしても、
この問題はまだ明確ではなく、
特に男性へのビスフォスフォネートの使用は、
場合によっては心筋梗塞のリスクを増す可能性を念頭に、
診療に当たる必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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