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西加奈子「舞台」 [小説]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は祝日で診療所は休診です。
まだ体調が戻らずに駒沢公園へは行きませんでした。

やることは沢山あるのですが、
なかなかやる気が出ません。

仕方がないですね。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
西加奈子「舞台」.jpg
西加奈子さんの新作長篇が、
今月発売されました。
昨年の「群像」誌に一括掲載されたものです。

これは主役が29歳の男性で、
作家であった父親との葛藤があり、
父親の死後に、
父が行きたかったニューヨークに1人旅をする、
という話です。

帯に「生きているだけで恥ずかしいー。」とあるように、
太宰治の「人間失格」が1つのモチーフになっています。
もう1つサリンジャーみたいな感じも、
あのような無残さや切なさはありませんが、
少し入っているように感じました。

太宰の「人間失格」は、
好き嫌いの分かれる小説だと思います。
中学生の頃既に、
太宰の「人間失格」が好き、
という同級生がいましたし、
高校、大学でもそうした人が必ずいました。
僕はそうした文学好きの学生からは、
疎まれることが多くて、
あれは結構いじめっ子が書いたような小説だと、
個人的には思っています。
中学の頃に読むと、
気分が悪くなりました。
ただ、最近読み直すと、そう不快には感じませんでしたし、
結構面白く思いました。

あの世界を少し客観視出来るようにならないと、
いじめられっ子が読むにはきついようです。

西加奈子さんはこれまでに何作か、
男性を主人公にした作品を書いていますが、
総じてあまり良い出来ではないように思います。
女性が読むとまた違う感想になるのかも知れませんが、
男が必ず持っているロマンチックで甘い部分を、
理解されていないように感じるのです。
唯一「地下の鳩」の自堕落な中年男には、
生々しさがありましたが、
あれは何かモデルになったキャラがあるのではないかと思います。

今回の作品は大甘の教養小説ですが、
主人公の造形はとても薄っぺらで、
正直西さんの悪いところが出たな、
という印象です。

内容もかつての「うつくしい人」に近い感じで、
作者の頭の中にある、
葛藤のようなものは理解が出来るのですが、
それが小説としては昇華されていないように思うのです。

全編ニューヨークが舞台になりますが、
全くリアルな感じがなく、
単にガイドブックの中を旅しているような印象しか残りません。
印象的な登場人物も一切登場せず、
ただただ、主人公の心理的な堂々巡りが、
そのままに描写されて物語は終わります。

前作の「ふる」もかなりシンプルな教養小説でしたから、
そうしたシンプルな構成のものが、
今の西さんのトレンドなのかも知れません。

正直コアな西さんのファン以外には、
あまりお勧めは出来ませんが、
また女性が読まれれば、
違った印象を持たれるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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