看護師さんとお茶の話 [身辺雑記]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
体調が悪いので駒沢公園には今日は行かず、
何となくダラダラして今PCに向かっています。
今日は雑談です。
ある企業の産業医をしていますが、
最初は人事の社員の方が担当をしてくれていました。
その時には、
面談や職場巡視で会社を訪れると、
お茶かコーヒーを出してくれました。
それが会社に健康管理室が出来、
看護師さんが所属して担当となると、
パタリとお茶やコーヒーが出て来ることはなくなりました。
ご機嫌を取り結ぶ、ということでもないのですが、
時々もらいもののお菓子などを、
看護師さんに持って行くのですが、
ちょっと意外そうに手に取って、
それでお終いです。
こうした時くらい、
そのお菓子を1つ、お茶と一緒に出してくれてもいいのにな、
とチラと思いますが、
そうしたことは絶対にありません。
医者にお茶を出すような行為は、
自分が医者の子分であるような気持ちにさせられて、
耐えられないのかしら、
と思ったりもします。
勿論お茶など出しても出さなくてもどちらでも良いのです。
ただ、こうしたこと1つにも、
医者と看護師という関係の微妙さと、
ある種の屈折した感じは、
見て取ることが出来るように思います。
今思うと微笑ましい感じがするのですが、
まだ僕が大学病院にいた20年くらい前に、
病棟にアメリカで最新の看護を学んで来た、
という看護婦さんがやって来て、
それまでの看護婦の仕事を見直して、
医者の下働きのような作業は、
「いたしません」というような宣言をしたことがありました。
その代わりに看護研究を朝から晩までやっていて、
医局は大騒ぎになりました。
ただ、元々大学病院の病棟では、
殆どの雑務は研修医や下っ端の医者の仕事ですから、
あまり看護婦さんの業務はありません。
採血も点滴も全部医者の仕事です。
それでも、点滴の準備をしたりする仕事があって、
それも「先生やって下さい」という感じになったので、
医局からも不満が出たのです。
僕は特に看護婦さんの考え方が変化することは、
おかしなこととは感じませんでしたが、
昔からずっとその病棟にいて、
医局の医者のやり方の全てを心得ていて、
歴代の教授の信頼も厚かった看護婦さんが、
医者に従順なのがけしからんとか、
准看護婦なのが気にいらんとか、
新しい教育も知識も身につけていないのがけしからんとか、
色々と理由があったのでしょうが、
主任格であったのが降格のような格好になり、
露骨な苛めを受けて辞めてしまったことに、
非常に腹が立ちました。
こうした改革で看護師さんの社会的地位が上がり、
看護師さんの専門的な技量が評価され、
より患者さんのためにもなる高度の医療が実現するなら、
それに越したことはありません。
しかし、どうも医者と看護師との関係がギスギスしただけで、
それ以上の変化はなかったように思いました。
そんな最中に、離婚したばかりの医局の先輩が、
病棟の看護婦さんと電撃結婚したのでビックリしました。
とても笑顔の素敵な看護婦さんで、
朝その笑顔を見せられると、
別に付き合っている訳ではないのですが、
「今日一日頑張ろう」
という気分にさせられたのです。
しかし、いつも「いたしません」の看護婦さんが、
ある時からその先輩の先生のためだと、
甲斐甲斐しく点滴の準備などするようになったのです。
こんな不公平があって良いのでしょうか?
意味もなく「畜生」と思いました。
勿論怒る方が馬鹿で、
世の中というのはそうしたものなのです。
医療は医者を頂点とするピラミッド構造で、
それなりに機能していたのですが、
最近は専門職の数も増えましたし、
介護の占める役割も大きくなりましたから、
そうした構造は成立し難くなり、
あちこちで軋轢が生じているのが昨今だと思います。
医者と他の職種とのトラブルも勿論あるのですが、
それ以上にこじれ易いのが、
医者以外の専門職種同士の関係のようです。
老人ホームでは看護師さんとヘルパーさんとの関係は、
あまり良くないことが多く、
お互いに相手がまっとうな仕事をしていない、
と感じていることが多く、
待遇面においても多くの不満を抱えていることがしばしばあります。
施設の経営者は医師や看護師ではないことが殆どなので、
概ね専門職としての看護師の仕事への理解が乏しく、
採用の際の判断も甘いことが多いので、
仕事の出来ない看護師を採用してしまって、
こんな仕事ならヘルパーでも充分、
と考えて給料を減らし、
待遇が悪いので更に良い看護師が集まらない、
という悪循環に陥ります。
看護師さんは医者を相手に待遇改善や自分達の職種の有用性を、
戦って来たという側面が大きいので、
他の介護職や医療職との関係における、
自分達の専門性や有用性の主張には、
慣れていないという側面もあるのではないかと思います。
医者は所詮馬鹿な世間知らずのお人よしですから、
看護師さんにワーワー言われればシュンとしてそれでお終いですが、
他の職種の方にその勢いで交渉しても、
思うような結果にならないばかりか、
職種間の軋轢が生じるだけの結果になるのかも知れません。
医者を頂点にした秩序など、
過去の遺物で論じること自体無意味ですが、
医療や介護はある対象者に、
統合的に提供される性質のものなので、
各職種間の連携は色々な意味で重要なことです。
ただ、その時に人間同士の関係以上に、
個々の職種の待遇面や専門職としての評価が、
確立されていることが重要だと思うのですが、
その辺りの不確定性が、
職種間の軋轢などの、
1つの大きな要因となっているように思われるのです。
行政はそうした混乱を知っていながら、
これを機に全ての専門職の待遇を下げ、
社会保障の人件費を削減しようと企んでいるので、
そうしたもめごとをむしろ煽っているのだと思いますから、
問題の解決はなかなか難しいことなのではないかと思います。
念のため補足しますが、
今日の文章に少しでも看護師さんへの悪意が感じられたら、
それは全くの誤解です。
看護師さん抜きで僕の仕事は何も廻りませんし、
本当に毎日感謝しています。
いつも本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
体調が悪いので駒沢公園には今日は行かず、
何となくダラダラして今PCに向かっています。
今日は雑談です。
ある企業の産業医をしていますが、
最初は人事の社員の方が担当をしてくれていました。
その時には、
面談や職場巡視で会社を訪れると、
お茶かコーヒーを出してくれました。
それが会社に健康管理室が出来、
看護師さんが所属して担当となると、
パタリとお茶やコーヒーが出て来ることはなくなりました。
ご機嫌を取り結ぶ、ということでもないのですが、
時々もらいもののお菓子などを、
看護師さんに持って行くのですが、
ちょっと意外そうに手に取って、
それでお終いです。
こうした時くらい、
そのお菓子を1つ、お茶と一緒に出してくれてもいいのにな、
とチラと思いますが、
そうしたことは絶対にありません。
医者にお茶を出すような行為は、
自分が医者の子分であるような気持ちにさせられて、
耐えられないのかしら、
と思ったりもします。
勿論お茶など出しても出さなくてもどちらでも良いのです。
ただ、こうしたこと1つにも、
医者と看護師という関係の微妙さと、
ある種の屈折した感じは、
見て取ることが出来るように思います。
今思うと微笑ましい感じがするのですが、
まだ僕が大学病院にいた20年くらい前に、
病棟にアメリカで最新の看護を学んで来た、
という看護婦さんがやって来て、
それまでの看護婦の仕事を見直して、
医者の下働きのような作業は、
「いたしません」というような宣言をしたことがありました。
その代わりに看護研究を朝から晩までやっていて、
医局は大騒ぎになりました。
ただ、元々大学病院の病棟では、
殆どの雑務は研修医や下っ端の医者の仕事ですから、
あまり看護婦さんの業務はありません。
採血も点滴も全部医者の仕事です。
それでも、点滴の準備をしたりする仕事があって、
それも「先生やって下さい」という感じになったので、
医局からも不満が出たのです。
僕は特に看護婦さんの考え方が変化することは、
おかしなこととは感じませんでしたが、
昔からずっとその病棟にいて、
医局の医者のやり方の全てを心得ていて、
歴代の教授の信頼も厚かった看護婦さんが、
医者に従順なのがけしからんとか、
准看護婦なのが気にいらんとか、
新しい教育も知識も身につけていないのがけしからんとか、
色々と理由があったのでしょうが、
主任格であったのが降格のような格好になり、
露骨な苛めを受けて辞めてしまったことに、
非常に腹が立ちました。
こうした改革で看護師さんの社会的地位が上がり、
看護師さんの専門的な技量が評価され、
より患者さんのためにもなる高度の医療が実現するなら、
それに越したことはありません。
しかし、どうも医者と看護師との関係がギスギスしただけで、
それ以上の変化はなかったように思いました。
そんな最中に、離婚したばかりの医局の先輩が、
病棟の看護婦さんと電撃結婚したのでビックリしました。
とても笑顔の素敵な看護婦さんで、
朝その笑顔を見せられると、
別に付き合っている訳ではないのですが、
「今日一日頑張ろう」
という気分にさせられたのです。
しかし、いつも「いたしません」の看護婦さんが、
ある時からその先輩の先生のためだと、
甲斐甲斐しく点滴の準備などするようになったのです。
こんな不公平があって良いのでしょうか?
意味もなく「畜生」と思いました。
勿論怒る方が馬鹿で、
世の中というのはそうしたものなのです。
医療は医者を頂点とするピラミッド構造で、
それなりに機能していたのですが、
最近は専門職の数も増えましたし、
介護の占める役割も大きくなりましたから、
そうした構造は成立し難くなり、
あちこちで軋轢が生じているのが昨今だと思います。
医者と他の職種とのトラブルも勿論あるのですが、
それ以上にこじれ易いのが、
医者以外の専門職種同士の関係のようです。
老人ホームでは看護師さんとヘルパーさんとの関係は、
あまり良くないことが多く、
お互いに相手がまっとうな仕事をしていない、
と感じていることが多く、
待遇面においても多くの不満を抱えていることがしばしばあります。
施設の経営者は医師や看護師ではないことが殆どなので、
概ね専門職としての看護師の仕事への理解が乏しく、
採用の際の判断も甘いことが多いので、
仕事の出来ない看護師を採用してしまって、
こんな仕事ならヘルパーでも充分、
と考えて給料を減らし、
待遇が悪いので更に良い看護師が集まらない、
という悪循環に陥ります。
看護師さんは医者を相手に待遇改善や自分達の職種の有用性を、
戦って来たという側面が大きいので、
他の介護職や医療職との関係における、
自分達の専門性や有用性の主張には、
慣れていないという側面もあるのではないかと思います。
医者は所詮馬鹿な世間知らずのお人よしですから、
看護師さんにワーワー言われればシュンとしてそれでお終いですが、
他の職種の方にその勢いで交渉しても、
思うような結果にならないばかりか、
職種間の軋轢が生じるだけの結果になるのかも知れません。
医者を頂点にした秩序など、
過去の遺物で論じること自体無意味ですが、
医療や介護はある対象者に、
統合的に提供される性質のものなので、
各職種間の連携は色々な意味で重要なことです。
ただ、その時に人間同士の関係以上に、
個々の職種の待遇面や専門職としての評価が、
確立されていることが重要だと思うのですが、
その辺りの不確定性が、
職種間の軋轢などの、
1つの大きな要因となっているように思われるのです。
行政はそうした混乱を知っていながら、
これを機に全ての専門職の待遇を下げ、
社会保障の人件費を削減しようと企んでいるので、
そうしたもめごとをむしろ煽っているのだと思いますから、
問題の解決はなかなか難しいことなのではないかと思います。
念のため補足しますが、
今日の文章に少しでも看護師さんへの悪意が感じられたら、
それは全くの誤解です。
看護師さん抜きで僕の仕事は何も廻りませんし、
本当に毎日感謝しています。
いつも本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2014-01-12 13:01
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コメント(3)
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こんにちは。楽しく読ませてもらいました。このブログを今後も参考にさせてもらいます。ありがとうございました。
by towa (2014-02-11 19:15)
お疲れさまです。
興味深い内容なので、ずっと読ませていただいています。
看護師さんが、医師と恋愛関係にあるのは良いことだと思いますが、
いわずもがな、職場でそれを出して頂きたくはないです。
周りが対応に困りますし、ご本人達の職場での評価が下がると思います。
by さき (2015-03-24 14:18)
さきさんへ
コメントありがとうございます。
最近はあまり書いていない小ネタです。
by fujiki (2015-03-24 19:56)