SSブログ

認知症は減っている、という話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
認知症の減少.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
解説記事の一部ですが、
ちょっと興味深いのでご紹介したいと思います。

アルツハイマー型を始めとする老年期認知症は、
癌と共に、現代の医療における、最も大きな未解決の問題で、
人間が直面している健康上の脅威であることは、
否定される方はいらっしゃらないと思います。

これから先進国では高齢化社会の到来が目前で、
日本はその中でも先行していることは間違いがありませんから、
認知症の患者さんの数も急ピッチで増えることは、
これも事実として受け止められています。

こうしたデータばかりが目に触れると、
病気としての認知症の頻度自体が、
増えているような印象を持ちます。

しかし、
患者さんの数が増えるということと、
その病気の頻度が増えるということとは、
また別個の事象です。

たとえば、80歳以上の全人口のうちに占める、
認知症の患者さんの発症する割合を見ると、
それが実は減っているということが、
海外の多くのデータで確認されています。

アメリカにおける認知症の統計においては、
65歳以上の人口に占める認知症の頻度は、
1982年には5.7%であったものが、
1999年には2.9%まで低下しています。

これを更に引き継いだ別個のアメリカの統計においても、
70歳以上の人口に占める認知症の頻度は、
1993年には12.2%であったものが、
2002年には8.7%に低下しています。

同様のイギリスの統計では、
65歳以上の人口に占める認知症の頻度が、
1989年から1994年の解析では8.3%であったのに対して、
2008年から2011年の解析では6.5%に低下しています。

何故こうした認知症の減少が起こっているのか、
と言う点については、
まだ明確な結論が出ているものではありませんが、
データの解析においては、
高等教育を受けている人口の増加や、
喫煙率の低下、
健康に気を配るようなライフスタイルの変化に伴い、
動脈硬化性疾患が予防されるようになったこと、
などが関連のある因子として浮上しています。

頻度は減っていても、
高齢化によって患者さんの数自体は増えているのですから、
決して楽観出来るようなデータではありません。

ただ、認知症の減少には必ず原因がある筈で、
その現象をしっかり検証することで、
認知症の予防や治療に関しても、
必ず役立つ要素があるのではないかと思います。

日本においても同様の傾向があるかどうかは、
データはあるのかも知れませんが、
現時点では把握していません。

臨床医の端くれとしては、
日々患者さんの診察に当たりながら、
大局的な観点から、
1つの社会現象としての認知症の存在についても、
思いを巡らすような視点を持ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(33)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 33

コメント 3

chima

日本でも同じ傾向だといいですね^^
by chima (2013-12-19 10:40) 

tukiko

母が今現在・・進行中です。
まだ、妹と交互に2~3週間の間の一人暮らしを挟みながら帰省して様子見中。
母のかかりつけのご年配の先生に、進行を遅らせる薬とかは?と聞いた時、「そんなものあったら私が飲んでる・・」と言われて諦めましたが、どうなんでしょうね・・・正月に帰った時、様子を見て、ほかの病院へも連れて行って検査などしたほうがよいでしょうか?・・
土日のブログ愛読者ですが、ほかの曜日もお勉強だと思って;読ませていただいています。
少し早めですが、よいお年を。
by tukiko (2013-12-19 19:02) 

fujiki

chima さんへ
コメントありがとうございます。
多分同じ可能性が高いと思います。
by fujiki (2013-12-20 08:14) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0