三谷幸喜版「ロストインヨンカーズ」 [演劇]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日なので診療所は休診です。
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
訪問診療に行って、
それから今PCに向かっています。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ニール・サイモンの戯曲を、
三谷幸喜が自分で構成した台本で演出した、
「ロストインヨンカーズ」の公演が、
今パルコ劇場で上演中です。
三谷幸喜がニール・サイモンのファンであるのは周知の事実ですから、
その戯曲を初めて手掛けた今回の舞台は、
非常に注目を集めました。
批評も概ね好評のようです。
ただ、僕はニール・サイモン自体も、
それほど好きではありませんし、
内容は如何にも○○○という、
しみったれた感じの話なので、
正直あまり乗り切れませんでした。
ただ、キャストはいずれも好演で、
特に難しい役柄を演じた中谷美紀と、
如何にもの存在感を示した松岡昌宏の芝居には、
生の舞台の醍醐味を感じました。
それなりにお薦めです。
以下ネタばれがあります。
戦時中のアメリカが舞台で、
雑貨店を営むユダヤ人の一家の人間模様を描いた2幕劇です。
2人の少年が借金を抱えた父親から、
厳格な祖母の家に預けられるのですが、
そこには祖母を助ける、
大人になっても少女のままの心を持ったベラおばさんがいて、
不良のルイおじさんも帰って来ます。
ベラおばさんはとってもイタイ恋をして、それに敗れ、
そのことをきっかけにして、
家族の絆は深まります。
少女のままのベラおばさんを演じた中谷美紀が出色で、
これは国産の戯曲では、
なかなか描くことが難しい役柄を好演しています。
特に家族が全員集まった場面で、
ベラが恋人のことを話し、
それが微妙な波紋を投げて切ない終焉を迎える一場は、
「ガラスの動物園」にも似た、
切ない抒情がありました。
眼目のラストで、草笛光子演じる母と、
ベラが対峙する場面は、
評価する方が多いのですが、
僕はベラがあまりに立派な感じになり過ぎて、
違和感を覚えました。
セットも立派過ぎて、
大富豪の屋敷のように見えるので、
雑貨店を経営する老婆の家、と言う感じには程遠く、
衣装も奇麗で違和感があります。
作品のテーマの1つになっている、
金銭的な苦労というものが、
舞台面を見る限りは全く感じられないので、
この点はやや再考の余地があるように思いました。
不良のルイおじさんを演じた松岡昌宏は、
個人的には今回一番良かったと思います。
彼ならではのシャイなところが、
役柄に合っていましたし、
かなり細かい役作りをしていたと思います。
草笛光子は以前にも別演出で同役を演じていて、
安定感がありますが、
最初から予想される通りのイメージで、
役柄に意外性が乏しく、
ご高齢で仕方のないことですが、
演技が単調に流れるので今ひとつに感じました。
作品自体は個人的にはあまり好きではありません。
映画ならともかく、
舞台で少年の目から見た大人の世界、
というようなものを、
リアリズムで描くことには、
日本の演劇状況では無理があるように思います。
アメリカ戯曲に比較的共通の特徴ですが、
語り手的な人物をおいて、
要所で説明を重ねるような台詞が多いので、
何となく観ていてイライラします。
せっかく情感のあふれる良い場面があるのに、
その後ですぐに説明的な台詞が語り手から入るので、
何か感動が奪われるような気分になるのです。
三谷幸喜のダイアローグは、
非常に巧みに出来ていて、
彼が描く海外を舞台にしたオリジナルと、
観ている時の印象は、
殆ど変わらないのはさすがです。
彼は間違いなく、
日本の翻訳劇の上演を変えたと思います。
そんな訳で、
個人的には好きな戯曲ではありませんが、
キャストも熱演で、
三谷幸喜の手際も鮮やかなので、
観て損はない舞台に仕上がっていると思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日なので診療所は休診です。
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
訪問診療に行って、
それから今PCに向かっています。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ニール・サイモンの戯曲を、
三谷幸喜が自分で構成した台本で演出した、
「ロストインヨンカーズ」の公演が、
今パルコ劇場で上演中です。
三谷幸喜がニール・サイモンのファンであるのは周知の事実ですから、
その戯曲を初めて手掛けた今回の舞台は、
非常に注目を集めました。
批評も概ね好評のようです。
ただ、僕はニール・サイモン自体も、
それほど好きではありませんし、
内容は如何にも○○○という、
しみったれた感じの話なので、
正直あまり乗り切れませんでした。
ただ、キャストはいずれも好演で、
特に難しい役柄を演じた中谷美紀と、
如何にもの存在感を示した松岡昌宏の芝居には、
生の舞台の醍醐味を感じました。
それなりにお薦めです。
以下ネタばれがあります。
戦時中のアメリカが舞台で、
雑貨店を営むユダヤ人の一家の人間模様を描いた2幕劇です。
2人の少年が借金を抱えた父親から、
厳格な祖母の家に預けられるのですが、
そこには祖母を助ける、
大人になっても少女のままの心を持ったベラおばさんがいて、
不良のルイおじさんも帰って来ます。
ベラおばさんはとってもイタイ恋をして、それに敗れ、
そのことをきっかけにして、
家族の絆は深まります。
少女のままのベラおばさんを演じた中谷美紀が出色で、
これは国産の戯曲では、
なかなか描くことが難しい役柄を好演しています。
特に家族が全員集まった場面で、
ベラが恋人のことを話し、
それが微妙な波紋を投げて切ない終焉を迎える一場は、
「ガラスの動物園」にも似た、
切ない抒情がありました。
眼目のラストで、草笛光子演じる母と、
ベラが対峙する場面は、
評価する方が多いのですが、
僕はベラがあまりに立派な感じになり過ぎて、
違和感を覚えました。
セットも立派過ぎて、
大富豪の屋敷のように見えるので、
雑貨店を経営する老婆の家、と言う感じには程遠く、
衣装も奇麗で違和感があります。
作品のテーマの1つになっている、
金銭的な苦労というものが、
舞台面を見る限りは全く感じられないので、
この点はやや再考の余地があるように思いました。
不良のルイおじさんを演じた松岡昌宏は、
個人的には今回一番良かったと思います。
彼ならではのシャイなところが、
役柄に合っていましたし、
かなり細かい役作りをしていたと思います。
草笛光子は以前にも別演出で同役を演じていて、
安定感がありますが、
最初から予想される通りのイメージで、
役柄に意外性が乏しく、
ご高齢で仕方のないことですが、
演技が単調に流れるので今ひとつに感じました。
作品自体は個人的にはあまり好きではありません。
映画ならともかく、
舞台で少年の目から見た大人の世界、
というようなものを、
リアリズムで描くことには、
日本の演劇状況では無理があるように思います。
アメリカ戯曲に比較的共通の特徴ですが、
語り手的な人物をおいて、
要所で説明を重ねるような台詞が多いので、
何となく観ていてイライラします。
せっかく情感のあふれる良い場面があるのに、
その後ですぐに説明的な台詞が語り手から入るので、
何か感動が奪われるような気分になるのです。
三谷幸喜のダイアローグは、
非常に巧みに出来ていて、
彼が描く海外を舞台にしたオリジナルと、
観ている時の印象は、
殆ど変わらないのはさすがです。
彼は間違いなく、
日本の翻訳劇の上演を変えたと思います。
そんな訳で、
個人的には好きな戯曲ではありませんが、
キャストも熱演で、
三谷幸喜の手際も鮮やかなので、
観て損はない舞台に仕上がっていると思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2013-10-27 10:52
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