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咽喉の痛みに適切な抗生物質 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
咽頭痛みの抗生物質.jpg
今月のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
アメリカにおける抗生物質使用の変遷についてのレターです。

抗生物質というのは、
細菌感染症の治療薬です。

最初の抗生物質であるペニシリンの発売により、
肺炎などの多くの命に関わる病気が、
治る病気に変わったことは、
現代医学の歴史の中でも、
画期的な出来事の1つです。

しかし、
抗生物質の効果が劇的で、
かつ製薬会社の宣伝も巧みであったので、
熱が出たり体調が急に悪くなれば、
どんな時でもペニシリンがあれば安心、
というように誤解が広がった面があります。

その後抗生物質はより強力に、より使い易く進歩し、
多くの新製品が医療の現場にもたらされました。

これは大きな進歩ではあったのですが、
その反面、抗生物質が効かない耐性菌が生まれ、
そのイタチゴッコとなって、
殆どの抗生物質の効かない、
怪物のような細菌が、
大学病院などの高次の医療機関で、
患者さんに感染し命に関わるといった、
抗生物質の発見時には、
想像すらつかない事態を引き起こすに至りました。

従って、
現在における抗生物質の使い方は、
使うことではなく、
むしろどのように使わず我慢するか、
という点にこそ、
ポイントがある、というように考えられます。

勿論僕も偉そうなことは言えません。

上記のレターにおいては、
一般の臨床で抗生物質が「気軽に」使用されることの多い、
「咽喉の痛み」に対する抗生物質の使用が、
1997年から2010年の間に、
どのくらい改善されたのかを、
アメリカのプライマリーケアや救急病院などのデータから解析しています。

文献の著者らの意見は、
咽喉の痛みで抗生物質の使用が適切なのは、
A群溶連菌という細菌による咽喉の感染に対する、
ペニシリンの使用のみであって、
その頻度は症状のある患者さんの、
10%に留まる筈だ、
というものです。

1993年頃の調査では、
アメリカにおいても症状のある患者さんのうち、
70~80%には抗生物質が使用されていました。

今回1997年から2010年までの調査では、
60%の咽頭痛の患者さんに対して、
抗生物質の処方が行なわれていて、
これはそれ以前より減少はしてはいるものの、
適切な使用が10%程度とすれば、
未だ過剰な処方が行なわれていることは間違いがありません。

ガイドラインでの第一選択であるペニシリンは、
処方の比率は全体の9%で、
その比率は1996年以前と変わりは殆どなく、
その代わりにアジスロマイシン(商品名ジスロマック)が、
目立って増えていました。

セファロスポリンやペニシリンとβラクタマーゼ阻害剤との合剤、
ニューキノロンは、明確に不適切な処方とされていますが、
その比率も15%程度は存在しています。

日本においても、
こうした傾向は基本的には変わりないと考えられ、
他山の石として、
より適切な診療を、
末端の医療者の1人として、
心掛けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

ゆーち

私も風邪を拗らせて咳や痰がなかなか治らなかったときにジスロマック、2度ほどもらったことがあります。
普段少しこじらせて鼻水や痰に色が付いてきたような感じのときは、クラリシッドが多いですね。
by ゆーち (2013-10-11 01:50) 

fujiki

ゆーちさんへ
コメントありがとうございます。
それは海外でも同様の傾向のようです。
by fujiki (2013-10-12 08:26) 

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