SSブログ

心筋梗塞急性期の血糖コントロールの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
血糖コントロールの急性冠症候群に対する効果.jpg
先月のJAMA Intern Med誌に掲載された、
心筋梗塞(急性冠症候群)の急性期における、
血糖の厳格なコントロールの効果についての論文です。

急性心筋梗塞(急性冠症候群)で、
治療のために医療機関を受診した患者さんの血糖値が、
高めであると、
その後の患者さんの予後が悪い、
というデータがあります。

糖尿病は動脈硬化を強力に進める因子ですから、
実際には心筋梗塞を起こした時点で、
血糖が高い人は多いのです。

それでは心筋梗塞の急性期に、
血糖を厳格にコントロールして正常化すると、
そのことにより患者さんの予後に良い影響があるのでしょうか?

この点については1995年に有名な論文が出ていて、
その研究ではインスリンによる血糖の厳格なコントロールをすることにより、
急性心筋梗塞の患者さんの1年後の生命予後が、
明確に改善していました。
しかし、その後に行なわれた幾つかの同種の試験では、
このようなクリアな結果は出ていません。

今回の研究は医療機関の受診から72時間という、
心筋梗塞の急性期に、
血糖の上昇している患者さんに対して、
通常の対応をする場合と、
厳格な血糖コントロールをする場合とで、
心筋の障害の範囲と、
その後の患者さんの予後に、
どのような影響があるかを解析しています。

オランダの単独の専門施設で、
急性冠症候群と診断された患者さんのうち、
受診時の血糖値が140mg/dLから288mg/dLの間にあった、
294名の患者さんを2つに分け、
一方は血糖の目標値を85~110mg/dLになるように、
インスリンを使用して厳格なコントロールを行ない、
もう一方は288は超えない範囲で、
通常のコントロールを行なって、
72時間後までの障害された心筋の範囲と、
6週間後までの予後を検討しています。

血糖コントロールを厳格にした方が、
心筋のダメージがより小さく抑えられ、
その患者さんの生命予後も改善するのではないか、
という推測の元に行なわれた試験です。

ところが…

実際には厳格なコントロール群と通常のコントロール群との間で、
障害された心筋の範囲には差はなく、
6週間後の予後においては、
厳格なコントロール群の方が、
死亡や心筋梗塞の再発が、
いずれも多かったという結果でした。
低血糖が生じないように、
頻回の血糖測定を元にインスリン量を調節する、
というタイプの試験であったにも関わらず、
重篤な低血糖の発症も、
矢張り厳格なコントロール群でのみ発症していました。

つまり、
急性期の血糖コントロールを厳格に行なっても、
心筋のダメージに良い影響はなく、
生命予後はむしろ悪くなる可能性が高い、
という結果です。

血糖コントロールは良いに越したことはない、
というのが少し前までの常識でしたが、
重症な病気の急性期などにおいては、
必ずしも良いコントロールが良い結果には結び付いておらず、
血糖の目標値は、
その患者さんの状態によって、
また合併する病気があれば、
その時期によって、
個別に考える必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(23)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 23

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0