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大人用3種混合ワクチンの百日咳予防効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
百日咳ワクチンの大人への効果.jpg
今月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
アメリカにおける大人用3種混合ワクチンの、
百日咳予防効果についての論文です。

日本においてもアメリカにおいても、
百日咳を予防するためのワクチンは、
ジフテリアと破傷風と百日咳の毒素や抗原を混合した、
所謂「3種混合ワクチン」という形で接種されています。

アメリカにおいては、
1940年代から3種混合ワクチンの形で、
百日咳のワクチンのお子さんへの接種が開始され、
乳幼児の百日咳の頻度は著明に減少しました。
ただ、当時のワクチンは全菌体型といって、
副反応の強いものであったので、
1990年代から無菌体型のワクチンに、
順次切り替わった、という経緯があります

これはインフルエンザワクチンでも同様で、
当初は病原体を死滅させてそのまま用いる、
全粒子型のワクチンが使用されましたが、
その副反応が問題となったため、
今はその一部のみを利用した、
スプリットワクチンに切り替わっています。

ただ、
矢張りその効果は全菌体型や全粒子型の方が強いので、
その効果減弱が切り替えの場合には、
常に問題になります。

日本の場合には、
全菌体型のワクチンによる副反応が、
1975年に問題になって、
接種も一時中止され、
1981年から無菌体型のワクチンを利用した、
3種混合ワクチンに切り替わっています。

つまり、
無菌体型のワクチンへの移行は、
日本の方がアメリカよりずっと早いのです。

現行の接種スケジュールについては、
日本では7歳半までの間に、
3種混合ワクチンに不活化ポリオを含む、
4種混合ワクチンとして4回の接種をし、
10代で追加接種がありますが、
これはジフテリアと破傷風のみで、
百日咳の抗原は抜けています。
つまり、
百日咳の免疫に関しては、
日本は4回の接種で終了です。

一方アメリカの場合には、
7歳までに日本より1回多い5回の接種を済まし、
11歳で大人用の3種混合ワクチンを、
接種するのがスタンダードです。

この大人用の3種混合は日本ではまだ使用はされておらず、
子供の量の5分の2を使用した治験は行なわれたものの、
使用出来る環境にはなっていません。

大人用という言葉は不正確ですが、
実際には11歳以降に使用するワクチンのことで、
アメリカではTdapと略称されています。

このように、
日本と比較すれば、
遥かにアメリカでの百日咳の予防プログラムは充実しているのですが、
それでも近年特に8歳~11歳くらいの年齢層で、
百日咳は流行し、
2010年にはカリフォルニアでの大流行が問題となりました。

その原因が、
無菌体型ワクチンの効果の不足によるものではないか、
という危惧が高まり、
11歳以降の年齢層で接種した、
成人用3種混合ワクチンに、
果たしてどの程度の効果があるのか、
という点の検証が、
アメリカで複数の調査法により行われました。

今回ご紹介する文献はその1つで、
民間の医療保険のデータを活用して、
百日咳が2010年に流行した北カリフォルニアにおいて、
11歳以降の年齢層に接種された、
成人用3種混合ワクチンの効果が、
どの程度のものであったのかを、
遺伝子診断で百日咳と診断されたケースと、
診断されなかったケースとに分けて検討しています。

その結果…

成人用3種混合ワクチンの接種により、
11歳以降の年齢層の百日咳の発症リスクを、
相対リスクで概ね6割抑制する効果が確認されました。
これは乳幼児期に全菌体型のワクチンを使用していても、
無菌体型のワクチンを使用していても、
有意な差は認められませんでした。

つまり、
11歳以降の年齢層において、
成人用3種混合ワクチンを接種することは、
百日咳の予防に一定の効果が期待出来ますが、
発症抑制が6割程度では、
流行自体を阻止することは出来ず、
百日咳の流行阻止のためには、
より強力な効果を持つワクチンの開発を行なうか、
インフルエンザのように定期的な接種を繰り返すような、
接種スケジュールの改変が、
不可欠であることが、
明確になった結果と言えると思います。

振り返って日本においては、
百日咳の抗原を含むワクチンの接種は、
7歳半以降は一切行われていないので、
その流行には無防備な状態となり、
その改善は不可欠だと思いますが、
未だ明確な展望は得られていないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 5

ママさん

百日咳にならないような
健康な体と心を
日頃から作って行きたいと思いました。

by ママさん (2013-07-28 15:33) 

fujiki

ママさんさんへ
コメントありがとうございました。
by fujiki (2013-07-29 08:10) 

kao

フランスでは、10年更新のワクチンのようですが日本では10年更新の必要はないんですか? 今妊娠中で、こちらの病院から産まれてくる赤ちゃんの親族の百日咳のワクチン接種が勧められています。いろいろなサイトで日本では10年毎更新の様子ではないので私は更新しなければいけないのか、しなくてもよいのかわかりません。ワクチンの効き目がフランスのものとは違うのでしょうか・・・。

by kao (2014-05-10 15:33) 

fujiki

kaoさんへ
予防効果を期待するのであれば、
当然定期的な接種の継続は必要だと思います。
日本の場合は現行は、
乳幼児期の感染の予防のみを目的としているので、
大人の予防という観点自体が現時点ではなく、
データ自体も殆どないと思います。
日本は国産ワクチンを使用していますので、
ヨーロッパのものと違いのある可能性がありますが、
この点もしっかりとした比較データはないと思います。
by fujiki (2014-05-11 07:28) 

kao

御親切に、お返事ありがとうございました。
by kao (2014-05-11 18:49) 

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