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インフルエンザ(H7N9)の遺伝子解析と臨床との関連について [インフルエンザ(H7N9)]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプトの事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
H7N9ウイルスの感染事例Lancet.jpg
今月のLancet誌に掲載された、
中国で発生している新型インフルエンザの、
初期の4例の事例を解析した文献です。

先日3例の事例を解析した、
New England…の論文をご紹介しましたが、
基本的には別個の事例を扱ってはいても、
似通った内容のものです。

ただ、この論文でより明確化されている情報もあり、
そうした点を中心に、
今日はご紹介したいと思います。

この論文では、
浙江省の患者さんが4名紹介されています。
39歳の男性と68歳の男性、64歳の男性、そして51歳の女性です。
このうち39歳の男性と64歳の男性が亡くなっています。
4例とも明確に家禽との接触があります。
そして、接触後3~8日で発熱などの症状が出現しています。

比較的軽症であった68歳の男性と、
亡くなった64歳の男性では、
血液中のサイトカインと呼ばれる炎症物質が計測されていて、
それによると軽症の事例ではサイトカインの上昇は軽度で、
死亡事例では高度のサイトカインの持続的な上昇が、
認められています。

つまり、
これは多臓器不全などの重症化に、
サイトカインストームと呼ばれるような、
炎症性物質の過剰反応が、
関与している可能性を示唆するものです。

もう1つ興味深いことは、
New England…の論文で取り上げられていた、
27歳と35歳という若年の事例、
そして今回のうちでも39歳の若年の事例では、
全てB型肝炎の感染が基礎疾患として認められている、
ということです。

これは勿論ただの偶然かも知れませんが、
今後より多数例の検証において、
より大きな意味を持つ可能性もあるように思います。

今回の検討においては、
4例前例でウイルスの遺伝子が解析され、
特に亡くなった64歳の男性の事例のウイルス遺伝子と、
鶏から検出されたウイルス遺伝子との相同性が、
99%を越えるレベルで認められています。

つまり、
こうしたデータから、
家禽よりの感染という推測が、
裏打ちされている訳です。

こちらをご覧下さい。
H7N9の遺伝子変異Lancet.jpg
これは4人の患者さんと、
相同性のある鶏から検出されたウイルスの、
人間への病原性に関わる主な変異の有無を確認したものです。
一番左は今回の64歳の男性の事例で、
次が相同性のある鶏から検出したウイルス、
その右の3例は、
以前ご紹介したNew England…で解析されていた、
上海市などの3例の事例です。

4例の感染者のうち3例では、
人間の下気道にも上気道にも、
接着し易いような変異があり、
4例全てが今はあまり使用されない抗ウイルス剤の、
アマンタジンに対する耐性の変異を持っています。
上海市の1例を除き、
タミフルやリレンザへの耐性化の変異は認められていません。

つまり、
今回のウイルスは人間の気道に感染し易い性質を持っているけれど、
現時点ではタミフルなどの抗ウイルス剤は有効である可能性が高い、
ということになります。

より高温でもウイルスが増殖し易く、
より哺乳類に感染し易くなる蛋白の変異が、
今回の事例では検出されませんでしたが、
上海などの他の事例では認められています。

このようにウイルスの性質は、
必ずしも同一ではありませんが、
鳥よりもより哺乳類に感染し易くすることが分かっている、
複数の変異が認められていることより、
今後よりその動向に慎重である必要があるのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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