地中海ダイエットの心筋梗塞等予防効果について [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝からレセプト作業をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
「地中海ダイエット」と呼ばれる食事療法の、
心筋梗塞や脳卒中の一次予防効果を検証した論文です。
かなり画期的な効果が認められたので、
雑誌の巻頭に掲載され、
解説も添えられています。
地中海ダイエットと言うのは、
地中海沿岸の地方で、
心臓病の死亡率が低いことに注目して発案され、
1960年代から提唱されている食事療法です。
その内容は、
オリーブオイルや魚介類、果物やナッツ、野菜を多く摂り、
その一方で赤身の肉や肉の脂身、
卵や乳製品、バターや生クリームなどは制限する、
という食事法です。
アルコールはワインが推奨されています。
この地中海ダイエットが、
心筋梗塞や脳卒中の予防効果を有するのではないか、
という考えは以前からあり、
これまでに観察研究のデータや、
心筋梗塞を起こした患者さんの再発予防のデータは存在していますが、
まだそうした発作は起こしてはいないけれど、
起こすリスクの高いような方においての、
予防効果について精度の高いデータは、
これまでにあまり存在しませんでした。
そこで今回の研究では、
スペインにおいて、
7447名の心筋梗塞や脳卒中のリスクが高い方を、
ほぼ2500名ずつの3つの群に分け、
1つの群はコントロールとして、
低脂肪の指導のみを行ない、
もう1つの群は通常の地中海ダイエットに、
エクストラヴァージンオリーブオイルを強化し、
3つ目の群ではオリーブオイルではなくナッツを増やして、
その後の経過を観察しています。
試験はもっと長期間の予定でしたが、
明確な差が付いたために、
平均観察期間が5年弱の段階で中途終了となっています。
その結果はどのようなものだったのでしょうか?
心筋梗塞や脳卒中の発症とそれによる死亡は、
トータルで288名に発症し、
内訳はコントロール群で109件に対して、
オリーブオイル強化の地中海ダイエットでは96件、
ナッツ強化の地中海ダイエットでは83件となり、
いずれもコントロールと比較して、
ほぼ30%の相対リスクの低下を有意に認めました。
興味深いことには、
このリスクの低下は、
心筋梗塞よりもより脳卒中において多く見られ、
脳卒中のリスクの低下は、
40%に達していました。
脳卒中の発症予防に、
これだけ明確な差のついた食事療法のデータというものは、
これまでに存在しなかったと思います。
それでは何故地中海ダイエットにはこのような効果があるのでしょうか?
この食事自体は、
かなり偏りのあるものです。
エクストラヴァージンオリーブオイルは、
週に1リットルの使用量ですから、
かなりの大量ですし、
ナッツは1日当たり30グラム摂取するようになっています。
当然脂質のカロリーに占める比率はかなり高くなり、
コントロール群では37%なのに対して、
地中海ダイエットでは41%に達しています。
ただ、その組成は、
オリーブオイル強化群では、
オリーブオイルに多く含まれる、
単価不飽和脂肪酸が4%増え、
ナッツ強化群では、
単価及び多価不飽和脂肪酸が、
併せて4%増えています。
つまり、肉などに含まれる飽和脂肪酸が減少し、
その代わりに不飽和脂肪酸が増えているのが特徴で、
トータルにはむしろ高脂肪食となり、
それ以外の栄養素には殆ど違いがありません。
この研究には糖尿病や高血圧、高コレステロール血症の患者さんが、
多く含まれていますから、
単純に考えると、
これでは血糖値などに悪影響を与えそうですが、
実際にはそうした結果は得られてはいないのです。
ただ、
脂質の増加が体重を増やす可能性はありますし、
もう少し個々のデータの詳細な解析が、
望まれることろだと思います。
コレステロール低下療法は、
心筋梗塞の予防には、
明確な効果が得られていますが、
脳卒中に関しては、
その効果はまだ議論の余地を残しています。
今回の結果などを見ると、
矢張り両者は別物の部分があり、
充分な脂質を摂り、
その組成を不飽和脂肪酸優位に変えることが、
むしろその予防には重要なことのように思えます。
今後の詳細な検討の結果を待ちたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝からレセプト作業をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
「地中海ダイエット」と呼ばれる食事療法の、
心筋梗塞や脳卒中の一次予防効果を検証した論文です。
かなり画期的な効果が認められたので、
雑誌の巻頭に掲載され、
解説も添えられています。
地中海ダイエットと言うのは、
地中海沿岸の地方で、
心臓病の死亡率が低いことに注目して発案され、
1960年代から提唱されている食事療法です。
その内容は、
オリーブオイルや魚介類、果物やナッツ、野菜を多く摂り、
その一方で赤身の肉や肉の脂身、
卵や乳製品、バターや生クリームなどは制限する、
という食事法です。
アルコールはワインが推奨されています。
この地中海ダイエットが、
心筋梗塞や脳卒中の予防効果を有するのではないか、
という考えは以前からあり、
これまでに観察研究のデータや、
心筋梗塞を起こした患者さんの再発予防のデータは存在していますが、
まだそうした発作は起こしてはいないけれど、
起こすリスクの高いような方においての、
予防効果について精度の高いデータは、
これまでにあまり存在しませんでした。
そこで今回の研究では、
スペインにおいて、
7447名の心筋梗塞や脳卒中のリスクが高い方を、
ほぼ2500名ずつの3つの群に分け、
1つの群はコントロールとして、
低脂肪の指導のみを行ない、
もう1つの群は通常の地中海ダイエットに、
エクストラヴァージンオリーブオイルを強化し、
3つ目の群ではオリーブオイルではなくナッツを増やして、
その後の経過を観察しています。
試験はもっと長期間の予定でしたが、
明確な差が付いたために、
平均観察期間が5年弱の段階で中途終了となっています。
その結果はどのようなものだったのでしょうか?
心筋梗塞や脳卒中の発症とそれによる死亡は、
トータルで288名に発症し、
内訳はコントロール群で109件に対して、
オリーブオイル強化の地中海ダイエットでは96件、
ナッツ強化の地中海ダイエットでは83件となり、
いずれもコントロールと比較して、
ほぼ30%の相対リスクの低下を有意に認めました。
興味深いことには、
このリスクの低下は、
心筋梗塞よりもより脳卒中において多く見られ、
脳卒中のリスクの低下は、
40%に達していました。
脳卒中の発症予防に、
これだけ明確な差のついた食事療法のデータというものは、
これまでに存在しなかったと思います。
それでは何故地中海ダイエットにはこのような効果があるのでしょうか?
この食事自体は、
かなり偏りのあるものです。
エクストラヴァージンオリーブオイルは、
週に1リットルの使用量ですから、
かなりの大量ですし、
ナッツは1日当たり30グラム摂取するようになっています。
当然脂質のカロリーに占める比率はかなり高くなり、
コントロール群では37%なのに対して、
地中海ダイエットでは41%に達しています。
ただ、その組成は、
オリーブオイル強化群では、
オリーブオイルに多く含まれる、
単価不飽和脂肪酸が4%増え、
ナッツ強化群では、
単価及び多価不飽和脂肪酸が、
併せて4%増えています。
つまり、肉などに含まれる飽和脂肪酸が減少し、
その代わりに不飽和脂肪酸が増えているのが特徴で、
トータルにはむしろ高脂肪食となり、
それ以外の栄養素には殆ど違いがありません。
この研究には糖尿病や高血圧、高コレステロール血症の患者さんが、
多く含まれていますから、
単純に考えると、
これでは血糖値などに悪影響を与えそうですが、
実際にはそうした結果は得られてはいないのです。
ただ、
脂質の増加が体重を増やす可能性はありますし、
もう少し個々のデータの詳細な解析が、
望まれることろだと思います。
コレステロール低下療法は、
心筋梗塞の予防には、
明確な効果が得られていますが、
脳卒中に関しては、
その効果はまだ議論の余地を残しています。
今回の結果などを見ると、
矢張り両者は別物の部分があり、
充分な脂質を摂り、
その組成を不飽和脂肪酸優位に変えることが、
むしろその予防には重要なことのように思えます。
今後の詳細な検討の結果を待ちたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2013-04-09 08:13
nice!(31)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0