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柿喰う客「発情ジュリアス・シーザー」 [演劇]

こんにちは。

六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
発情ジュリアス・シーザー.jpg
才人中屋敷法仁が作・演出に当たる、
肉体派の小劇場の劇団「柿喰う客」の、
「女体シェイクスピア」という企画の第3弾、
「発情ジュリアス・シーザー」が、
青山円形劇場で上演中です。

柿喰う客の芝居を見るのは、
今回が3回目で、
それほど熱心な観客ではありません。
チラシなどの宣材の質は、
なかなかのものなのですが、
作品は中屋敷さんの求める、
おそらくは70年代のアングラ小劇場的世界と、
役者さんの肉体の、
スタイリッシュで控え目な感じとが、
やや乖離しているように思えます。

たとえば、
僕が今一番アングラスピリッツを体現していると思う、
毛皮族の女優さんと比較して、
中屋敷さんの芝居に登場する女優さんは、
何処かよそゆきで、
アングラに一番必要な、
破れかぶれの感じがありません。
R1の芸人さんは、
実際に市民税や年金を、
一切払っていないのではないか、
と思わせるものがありますが、
中屋敷さんのお芝居の役者さんは、
真面目に払っていそうなのです。

今回の企画も、
「女体」とか「発情」という、
扇情的な文字が躍る割には、
いたって真っ当な世界が展開され、
初日のやや閑散とした客席には、
演劇好きの中高生の姿が多く、
内容もそれに見合っているように思えました。

この企画は要するに、
女優さんのみでシェイクスピア劇を演じる、
というもので、
これまでに「ハムレット」、「マクベス」が上演され、
今回は「ジュリアス・シーザー」です。

内容は意外に原作通りです。

「ジュリアス・シーザー」を90分にダイジェストし、
台詞はほぼ原作通りで、
それを上のチラシの通りの、
ハイカラさん的な衣装で演じています。

本来は女優さんのみでの上演ですが、
女優さんの1人が体調不良のため、
僕が見た初日の舞台では、
中屋敷さん本人が、
女装でその役を演じていました。

ただ、
これは意外に良い改変で、
他のキャストが生真面目に役を演じる中で、
異物としての中屋敷さんが混じるのは、
アクセントとして機能していましたし、
作品にも膨らみが出るので、
今後もこうした路線で行くのが、
良いのではないかと思いました。

「ジュリアス・シーザー」は、
チャールトン・ヘストンの映画版などもありましたが、
シェイクスピアの作品中では、
あまり舞台での上演頻度は多くないと思います。

僕は実際に舞台で見るのは、
今回が初めてです。

内容は勿論ローマ時代を舞台にした史劇で、
シーザーの凱旋から始まり、
ブルータスによるシーザーの暗殺があって、
それからアントニーとブルータスの戦いがあって、
最後はブルータスの死で終わります。

「ブルータス、お前もか」
の台詞もありますし、
特にブルータスとアントニーが、
シーザーの死を悼む演説をして、
それにより聴衆の考えが変化する場面が、
演説のお手本として、
教科書などに良く載っています。

今回戯曲を読み直しましたが、
強烈な個性がないので、
地味な印象は否めませんが、
シンプルでスピード感のある良い戯曲です。

この戯曲を現在日本で上演するとすれば、
今回の様式は、
決して悪いものではなかったと思います。

シェイクスピアの戯曲の魅力は、
そのスピード感にあるのですが、
所謂「真面目な上演」では、
そのスピード感は消滅してしまうので、
今回のように素の舞台で、
目を奪う衣装のみを配色に、
全体を90分で押し切るという手法は、
意外に効果的に思いました。

役者さんもビジュアルはなかなかなので、
結構楽しく見ることが出来ました。

ただ、
演技はやや中途半端に感じましたし、
別に猥雑にすればそれで良いとは思いませんが、
あまりにお上品で小さくまとまり過ぎている、
というようには思いました。

もう少しワンポイントでは、
目茶苦茶な場面があっても良いと思いますし、
女優さんの限界を感じさせるような、
ギリギリの緊張感があっても良いと思います。

ラストはいつも、
昔の天井桟敷のような感じで、
急に青いライトで、
スローモーションになったりするのですが、
カーテンコールなしでアフタートークがあるのは、
良いと思うのですが、
もう少し作品に見合ったラストの趣向があると、
もっと楽しくなるのにな、
とは思いました。

次回はもう少し、
破天荒な世界を、
期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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