カフェインの摂取とその害について [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のJAMA誌に掲載された、
カフェインの摂取のリスクについての解説記事です。
カフェインはご存じのように、
コーヒーなどに含まれるアルカロイドで、
中枢神経の刺激作用を持っています。
少量のカフェインの摂取は、
覚醒の維持や集中力の維持に一定の効果があり、
眠気防止などに使用されています。
ただ、
このカフェインにどのような害があり、
その摂取をどの程度に留めるべきか、
という点については、
まだ明確なコンセンサスが得られていません。
日本においては、
現時点でカフェインの摂取量の上限も決められていませんし、
食品にも含まれているものなので、
その含有量の表示が、
義務づけられている訳でもありません。
要するに野放し状態です。
カフェインを含有する食品で、
代表的なものはコーヒーやお茶ですが、
コーヒーやお茶の飲み過ぎで、
死んだり中毒になった、
というような事例は、
確かなものはないと思います。
こうしたことからは、
カフェインは安全な物質であり、
特に規制は必要はないように思えます。
しかし…
今年の10月にアメリカにおいて、
14歳の少女がエナジードリンクによる、
カフェインの過量摂取により、
不整脈のために死亡したとして、
訴訟が起こされる事態が問題となり、
11 月にはFDAが、
この4年にカフェインを多く含む、
特定のエナジードリンクの使用者で、
13人が飲用後に死亡している、
という調査結果を発表しました。
何故こうした問題が起ったのかと言うと、
エナジードリンクの使用がポイントになります。
エナジードリンクというのは、
日本で言う「栄養ドリンク」と同じニュアンスのもので、
日本でも発売されているレッドブルやモンスターエナジー、
未発売のファイブアリーエナジーなどが、
アメリカでは一般的です。
こうした飲み物は、
アメリカでも日本と同じように、
元気を付けるためや、
眠気防止などに使用され、
若い男性の6%は毎日エナジードリンクを飲んでいる、
という調査があるほど、
その習慣的な飲用は拡大しています。
そこに多く含まれているのが、
カフェインです。
そもそもカフェインは、
こうしたドリンクにどの程度含まれていて、
どのくらいの量を摂取すると、
こうした危険があるのでしょうか?
上記の記事によれば、
血液の濃度が80μg/mLを超えると、
中毒による死亡のリスクがあるとされています。
通常の濃さのコーヒー1杯には、
概ね100ml当たり60mg程度のカフェインが含まれていて、
カップ1杯でそのカフェインの血液濃度は、
1~2μg/mLに上昇するとされています。
カフェインは非常に吸収が良く、
摂取後15~45分で最高血中濃度に達します。
その後は肝臓の薬物代謝酵素である、
CYP1A2により速やかに代謝されます。
こうしたことから、
通常の状態においては、
概ね3~10グラムのカフェインを、
1時間くらいの間に一気に摂取した場合に、
死亡のリスクがある、
ということが推測されます。
これはコーヒーであれば、
5リットルを一気に飲む、
というくらいになります。
まあ一気にそれだけのコーヒーを飲む、
ということは拷問でもなければ有り得ないので、
食品のカフェインが規制されないのには、
こうした理由もある訳です。
ただし…
カフェイン中毒で死亡する事態が、
幾つかの状態では起り得ます。
まず一部のエナジードリンクでは、
1本に100mgを超えるカフェインが含まれています。
日本においては、
レッドブルも含めて、
ほぼ横並びで50mgを超えるカフェインは含まれていませんが、
海外ではもっと大量カフェインを含む商品があり、
ネットではそうした商品を購入することも可能です。
アメリカで問題になっているのは、
特にアルコールとの併用です。
たとえばコークハイであれば、
コーラのカフェインをアルコールと共に摂取することになります。
アメリカではカクテルのように、
強いアルコールをエナジードリンクで割ることが、
バーなどではポピュラーな飲み方であるようです。
こうした併用が問題になるのは、
アルコールにより肝臓の代謝が落ち、
カフェインがより蓄積し易くなることと、
アルコールの神経抑制作用により、
カフェインの神経刺激作用がマスクされ、
大量のカフェインを摂取しても、
身体の異変に気付き難い、
という理由があるからです。
肝臓の代謝酵素のCYP1A2には変異のある場合があり、
それを知らずに摂取すると、
通常より血中濃度が上昇する可能性があります。
また、
喘息の治療に使うことのあるテオフィリンは、
同じ代謝酵素で分解されるので、
競合して矢張り溜まり易くなります。
薬剤の関連で言うと、
風邪薬の多くにはカフェインが含まれていて、
知らずに結構大量を摂取していることがあります。
その代表はPL顆粒で、
これには1回量の1グラム当たり、
60mgのカフェインが含まれています。
他の総合感冒剤と比較して、
このカフェイン量の多さは特徴的です。
風邪を引いていて風邪薬を飲み、
元気を出そうと栄養ドリンクを併用すれば、
通常より大量のカフェインが摂取される可能性があるので、
特に注意が必要です。
さて、
カフェイン中毒での死亡の事例は、
その多くが交感神経が刺激されることによる、
致死性の不整脈の発症なので、
特に心臓病や不整脈の持病のある方では、
カフェインの摂取をより慎重に考える必要があります。
上記の記事にあるアドバイスとしては、
1日当たり500mgを超えない摂取量であれば基本的には問題ないが、
肝臓の代謝酵素の変異があったり、
肝臓や心臓の病気がある場合には、
より慎重になる必要があり、
アルコールとの併用は避けるのが望ましい、
というものです。
それでは今日のまとめです。
カフェインは神経刺激作用のあるアルカロイドで、
基本的には安全性の高い物質ですが、
大量の使用や身体に溜まり易い状態があると、
中毒を起こすリスクがあり、
不整脈を誘発することがあります。
安全性を考えれば、
1日300mgを超えない摂取が望ましく、
特に風邪薬とアルコールや栄養ドリンクとの併用は、
原則として避けるのが安全です。
今後日本でもしっかりとした、
摂取量の制限が設けられることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のJAMA誌に掲載された、
カフェインの摂取のリスクについての解説記事です。
カフェインはご存じのように、
コーヒーなどに含まれるアルカロイドで、
中枢神経の刺激作用を持っています。
少量のカフェインの摂取は、
覚醒の維持や集中力の維持に一定の効果があり、
眠気防止などに使用されています。
ただ、
このカフェインにどのような害があり、
その摂取をどの程度に留めるべきか、
という点については、
まだ明確なコンセンサスが得られていません。
日本においては、
現時点でカフェインの摂取量の上限も決められていませんし、
食品にも含まれているものなので、
その含有量の表示が、
義務づけられている訳でもありません。
要するに野放し状態です。
カフェインを含有する食品で、
代表的なものはコーヒーやお茶ですが、
コーヒーやお茶の飲み過ぎで、
死んだり中毒になった、
というような事例は、
確かなものはないと思います。
こうしたことからは、
カフェインは安全な物質であり、
特に規制は必要はないように思えます。
しかし…
今年の10月にアメリカにおいて、
14歳の少女がエナジードリンクによる、
カフェインの過量摂取により、
不整脈のために死亡したとして、
訴訟が起こされる事態が問題となり、
11 月にはFDAが、
この4年にカフェインを多く含む、
特定のエナジードリンクの使用者で、
13人が飲用後に死亡している、
という調査結果を発表しました。
何故こうした問題が起ったのかと言うと、
エナジードリンクの使用がポイントになります。
エナジードリンクというのは、
日本で言う「栄養ドリンク」と同じニュアンスのもので、
日本でも発売されているレッドブルやモンスターエナジー、
未発売のファイブアリーエナジーなどが、
アメリカでは一般的です。
こうした飲み物は、
アメリカでも日本と同じように、
元気を付けるためや、
眠気防止などに使用され、
若い男性の6%は毎日エナジードリンクを飲んでいる、
という調査があるほど、
その習慣的な飲用は拡大しています。
そこに多く含まれているのが、
カフェインです。
そもそもカフェインは、
こうしたドリンクにどの程度含まれていて、
どのくらいの量を摂取すると、
こうした危険があるのでしょうか?
上記の記事によれば、
血液の濃度が80μg/mLを超えると、
中毒による死亡のリスクがあるとされています。
通常の濃さのコーヒー1杯には、
概ね100ml当たり60mg程度のカフェインが含まれていて、
カップ1杯でそのカフェインの血液濃度は、
1~2μg/mLに上昇するとされています。
カフェインは非常に吸収が良く、
摂取後15~45分で最高血中濃度に達します。
その後は肝臓の薬物代謝酵素である、
CYP1A2により速やかに代謝されます。
こうしたことから、
通常の状態においては、
概ね3~10グラムのカフェインを、
1時間くらいの間に一気に摂取した場合に、
死亡のリスクがある、
ということが推測されます。
これはコーヒーであれば、
5リットルを一気に飲む、
というくらいになります。
まあ一気にそれだけのコーヒーを飲む、
ということは拷問でもなければ有り得ないので、
食品のカフェインが規制されないのには、
こうした理由もある訳です。
ただし…
カフェイン中毒で死亡する事態が、
幾つかの状態では起り得ます。
まず一部のエナジードリンクでは、
1本に100mgを超えるカフェインが含まれています。
日本においては、
レッドブルも含めて、
ほぼ横並びで50mgを超えるカフェインは含まれていませんが、
海外ではもっと大量カフェインを含む商品があり、
ネットではそうした商品を購入することも可能です。
アメリカで問題になっているのは、
特にアルコールとの併用です。
たとえばコークハイであれば、
コーラのカフェインをアルコールと共に摂取することになります。
アメリカではカクテルのように、
強いアルコールをエナジードリンクで割ることが、
バーなどではポピュラーな飲み方であるようです。
こうした併用が問題になるのは、
アルコールにより肝臓の代謝が落ち、
カフェインがより蓄積し易くなることと、
アルコールの神経抑制作用により、
カフェインの神経刺激作用がマスクされ、
大量のカフェインを摂取しても、
身体の異変に気付き難い、
という理由があるからです。
肝臓の代謝酵素のCYP1A2には変異のある場合があり、
それを知らずに摂取すると、
通常より血中濃度が上昇する可能性があります。
また、
喘息の治療に使うことのあるテオフィリンは、
同じ代謝酵素で分解されるので、
競合して矢張り溜まり易くなります。
薬剤の関連で言うと、
風邪薬の多くにはカフェインが含まれていて、
知らずに結構大量を摂取していることがあります。
その代表はPL顆粒で、
これには1回量の1グラム当たり、
60mgのカフェインが含まれています。
他の総合感冒剤と比較して、
このカフェイン量の多さは特徴的です。
風邪を引いていて風邪薬を飲み、
元気を出そうと栄養ドリンクを併用すれば、
通常より大量のカフェインが摂取される可能性があるので、
特に注意が必要です。
さて、
カフェイン中毒での死亡の事例は、
その多くが交感神経が刺激されることによる、
致死性の不整脈の発症なので、
特に心臓病や不整脈の持病のある方では、
カフェインの摂取をより慎重に考える必要があります。
上記の記事にあるアドバイスとしては、
1日当たり500mgを超えない摂取量であれば基本的には問題ないが、
肝臓の代謝酵素の変異があったり、
肝臓や心臓の病気がある場合には、
より慎重になる必要があり、
アルコールとの併用は避けるのが望ましい、
というものです。
それでは今日のまとめです。
カフェインは神経刺激作用のあるアルカロイドで、
基本的には安全性の高い物質ですが、
大量の使用や身体に溜まり易い状態があると、
中毒を起こすリスクがあり、
不整脈を誘発することがあります。
安全性を考えれば、
1日300mgを超えない摂取が望ましく、
特に風邪薬とアルコールや栄養ドリンクとの併用は、
原則として避けるのが安全です。
今後日本でもしっかりとした、
摂取量の制限が設けられることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2012-12-25 08:16
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昨夜
奥田脳神経薬というお薬を
150錠飲みました。
カフェイン 4500mg
ブロムワレリル尿素 9000mg
相当を
12%のワイン 375mlで。
安っぽい賭けをしてしまいました。
死ぬ程後悔しています。
by ☆ acco ☆ (2012-12-28 21:15)
acco さんへ
今日メールが届いたということは、
ご無事なのだと思うのですが、
大丈夫ですか?
賭けはされないで下さい。
ただ、ご無事であれば、
本当に良かったと思います。
心の底からそう思います。
軽率なことは言えないのですが、
過去や未来のくびきから離れて、
今を生きることは決して悪くないと思いますし、
ご自分を強く持って頂けたらと思います。
ご無事でしたら、
またご経過を教えて下さい。
by fujiki (2012-12-28 22:18)
おはようございます。
ご心配おかけしました。
申し訳ありません。
今年に入って
解離中の自傷行為やODで
6回入退院を繰り返しています。
国立下総精神医療センター
と言う病院(千葉市)は
保護室や閉鎖病棟の隔離室への
急な入院にも
柔軟に対応して下さるので
いつもお世話になっています。
先週もウット(12錠)を20箱
(ブロムワレリル尿素20g相当)
を飲んでしまったのですが、
今回同様、未遂に終わりました。
身体はズタボロですが、
賭けをする事によって
生きてて良いんだという保障が
欲しかったのだと思います。
お話を聞いて下さって
ありがとうございます。
by ☆ acco ☆ (2012-12-29 05:30)