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水泳は身体に良い運動なのか? [医療のトピック]

こんにちは。

六号通り診療所の石原です。

今日も早い更新になります。

今日の内容は、
先日とある大学教授の先生の講演で、
お聞きした話です。

たとえばメタボのおばちゃんがいて、
運動不足で膝の痛みもあり、
無理のない運動を勧める、
というような場合、
概ね推奨されるのが、
水泳や水中歩行です。

しかし、
その方針は本当に正しいものなのでしょうか?

スポーツ種目ごとの突然死の危険率を計算したデータがあり、
それによると、
水泳の突然死リスクは、
ウォーキングの7倍以上になる、
という結果が得られています。

また、
フィットネスクラブの死亡事故の統計では、
死亡事故の75%は、
水泳中かその前後に起こっています。

こうしたデータを見る限り、
水泳は安全ではないばかりか、
他の運動より、
むしろ急死や死亡リスクの高い種目である、
ということになります。

それでは、
何故水泳がメタボの状態などの運動に、
推奨されるのかと言えば、
膝や腰への重力の負担が減るので、
膝や腰の痛みのある方への、
筋力アップに効能があるのでは、
という考え方によっています。

しかし、
一時的に膝の負担が緩和されても、
急死のリスクが高くなるような運動では、
本末転倒のようにも思えます。

ただ、誤解のないように補足すれば、
およそ全ての運動は、
心臓に負担を掛けるもので、
安静時より急死のリスクが高いことは、
間違いがありません。

人間が突然死するのは、
スポーツの最中もしくは前後と、
排便時や入浴時などの、
運動に準じた状態の時に多いのです。

また、過激な運動は、
人間の免疫力を低下させることも分かっています。

しかし、
その一方で適度な運動の継続は、
色々な意味で身体の状態を良くして、
メタボの状態を改善し、
長期的な死亡リスクを低下させます。

つまり、
運動は短期的な死亡リスクは高めるけれど、
長期的には死亡リスクを低下させる行為である、
という言い方が可能です。

従って、
その方にどのような運動が適切であるかという選択は、
個々の状態によって異なり、
短期的な死亡リスクが低いものを、
個々に慎重に選ぶことが重要だと考えられます。

その見地から考えると、
水圧による影響を良い面ばかりで捉えた、
現在の水泳推奨の考え方は、
やや一面的なもののように思われます。

それでは水泳のリスクとはどのようなものなのでしょうか?

1つには水圧が身体に掛かることにより、
動脈圧、すなわち血圧が、
陸上の運動より上昇し易くなります。
かつ水から上がった時点では、
今度は急激に圧力が減じることにより、
心臓へ戻る血液の量が減り、
心臓が一時的に虚血の状態に陥り易くなります。

水中歩行は健康に良さそうに感じますが、
通常水泳を行なう普通のプールで行なわれるので、
かなり身体の高い位置まで水に漬かり、
アンバランスな水圧が身体に掛かることにより、
時に通常の水泳時より、
血圧の変動と水から上がった時の血圧差は大きくなり、
心臓への負担を高めます。

こうした水泳や水中歩行の特徴からは、
この運動をメタボの改善やダイエットに利用することは、
あまり適切でないように思えます。

今回のお話は、
水泳の悪い面にのみターゲットを当てたものなので、
水泳を楽しみでされている方には、
ご不快な感じを与えるものであったかも知れません。
水泳は非常に効能があり、かつ楽しいスポーツで、
その効用を否定するものではありません。

ただ、水泳は運動の初心者にとって、
必ずしも推奨される種目ではなく、
特に心臓の機能に一定の障害のある方では、
より慎重にその適応を考えた方が良いことは、
事実なのではないかと思います。

今日は水泳の効能とそのリスクについての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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こはく

私はウォーキングをしていますが
水中の方が効率が良さそうで
プールに通おうかなと思っていましたけど
そんなに簡単に考えない方がいいのですね。
過激な運動が免疫力を低下させることは知りませんでした。
いつもためになるお話をありがとうございます。
by こはく (2012-10-30 09:54) 

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