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バイアグラによる糖尿病性心筋症改善効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

左手の状態が予想外に悪く、
18日の午前に病院を受診予定のため、
当日は代診で10時開始とさせて頂きます。
ご迷惑をお掛けしますが、
よろしくお願いします。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
バイアグラと心疾患.jpg
Circulation誌に今年掲載された、
勃起不全の治療薬による、
糖尿病性心筋症の心機能の改善効果についての文献です。

シルデナフィル(商品名バイアグラ)は、
男性の勃起不全の治療薬ですが、
レバチオという別の商品名で、
肺動脈性肺高血圧症という、
難治性の肺の血管の病気の治療にも、
使用されています。
同様にタダラフィル(商品名シアリス)も、
アドシルカという別の商品名で、
同じ病気の治療薬として使用されています。

何故、
勃起不全の治療薬が、
肺の血管の病気の治療にも、
使われているのでしょうか?

シルデナフィルは、
当初は心臓の病気の治療薬の開発中に、
発見された薬剤で、
元々血管の拡張作用と深い関係があります。

血管の拡張反応には、
血管の内皮細胞で産生される、
NO(一酸化窒素)が重要な働きをしています。

内皮細胞から放出されたNOは、
血管の平滑筋という筋肉に作用し、
そこでサイクリックGMPが産生されると、
そのサイクリックGMPが、
平滑筋を弛緩させて、
血管を拡張させます。

このサイクリックGMPを分解するのが、
ホスホチジルエステラーゼ5型(PDE-5)と呼ばれる酵素です。

バイアグラは、
このPDE-5の阻害剤です。

バイアグラが陰茎海綿体でPDE-5を阻害すると、
サイクリックGMPが分解され難くなり、
それだけ血管の拡張が持続して、
勃起が維持される、
という理屈です。

PDE-5は、
陰茎海綿体のみならず、
肺の組織や気管支の平滑筋、
そして血小板にも存在しています。

つまり、肺や気管支、血管においても、
バイアグラは同様にサイクリックGMPを増加させ、
その部位に作用する可能性があるのです。

動物実験においては、
バイアグラのようなPDE-5阻害剤は、
血管拡張作用と共に、
血管内皮細胞の機能そのものを改善し、
心筋や気管支などの繊維化も抑制する効果が、
確認されています。

酸化ストレスがあると、
血管内皮細胞のNOの産生が落ち、
それが血管内皮細胞の障害に繋がって、
心筋の肥大や線維化、
肺の血管障害や線維化、
動脈硬化の進行など、
多くの病気の原因となることが推定されています。

つまり、
バイアグラのようなPDE-5阻害剤は、
酸化ストレスによる臓器障害を改善し、
内皮細胞機能を改善することにより、
血管や臓器の老化を防ぐような効果を、
持っている可能性があるのです。

その臓器障害の改善効果が、
現時点において確立されているのが、
先に触れました肺動脈性肺高血圧症への有効性です。

肺高血圧症では、
心臓の機能も障害されますが、
その時に心臓の右室という部分では、
PDE-5の発現が亢進していることが確認されていて、
PDE-5阻害剤の使用により、
その機能も改善することが報告されています。

つまり、
心機能の低下にも、
このタイプの薬剤の有効性が期待されます。

そこで今回の文献では、
糖尿病による心肥大の患者さんを対象として、
シルデナフィルの使用により、
心機能の改善が見られるかどうかを検討し、
1日100mgの3ヵ月の使用により、
一定の改善効果が見られると共に、
炎症や線維化のマーカーも、
改善することが認められています。

バイアグラのような薬剤に、
かなり明確な臓器保護作用があることは、
ほぼ間違いのない事実で、
専門家によっては、
「バイアグラは若返りの薬である」
というような発言をされる方もいます。

そして、
それは満更誤りとも言えません。

ただ、その長期使用の安全性については、
まだ十全に検討されているとは言い切れません。

勃起不全に用いられるバイアグラは、
副作用は血管の拡張に伴う頭痛や、
消化器症状などで比較的軽微ですが、
稀に急性の視力低下の報告があり、
また高用量においては、
不整脈の誘発作用の報告もあります。
実際、その継続的な使用により、
突然死が増加したとする報告もありますが、
検討症例は少なく、
そのリスクはどの程度であるかは分かりません。

その使用量は、
シルデナフィルでは肺高血圧の場合、
1日60mgと日本ではされていますが、
心保護などの臨床試験では、
1日100~150mgの高用量が、
海外では使用されています。

その用量設定を含めて、
まだまだ今後の検証が必要だと思われます。

今日は勃起不全の治療薬が、
全身の酸化ストレスから身を守る、
より大きな治療可能性を秘めている、
という話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

末尾ルコ(アルベール)

ご自愛くださいませ…。

                 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2012-09-14 08:36) 

fujiki

RUKO さんへ
お気遣いありがとうございます。
by fujiki (2012-09-15 08:32) 

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