新国立劇場ワーグナー「ローエングリン」 [オペラ]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
ただ、朝から産業医の研修があるので、
これからもう都内の大学病院まで出掛けます。
憂鬱ですが、
仕方がありません。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
昨日まで新国立劇場で、
ワーグナーの「ローエングリン」が上演されました。
先日の「ドン・ジョバンニ」、
そして今回と、
最近は結構旬の歌手が予定通りに来日していて、
気合の入った舞台を展開しています。
昨年の今くらいの時期には、
全ての公演がキャンセルか、
キャストの交代に次ぐ交代の嵐でしたから、
それを思うと複雑な思いがします。
世間が落ち着きを取り戻したことに、
ほっとする思いがある一方、
まだ問題は山積みなのに、
これで良いのだろうか、
という思いもあります。
それはともあれ…
今回の上演では、
世界でも売れっ子のワーグナー歌いである、
ドイツのテノールのフォークトが、
タイトルロールのローエングリンを歌っています。
ワーグナーのテノールというと、
巨漢の歌手が、
やや力押しに歌う、というイメージが強いのですが、
フォークトは騎士や英雄のイメージを、
崩すことのないビジュアルを持ち、
歌は繊細で極めつけの美声です。
僕の聴いた日は、
少し不調で声がやや荒れていましたが、
それでもその美しさは際立っていました。
正直、力押しの場面は、
ちょっときついな、
と思えるところもあるのですが、
どちらかと言えば、
ワーグナーはこうした歌手が、
好みだったのではないかな、
とその声に聴き惚れながらそう思いました。
ワーグナーのオペラのメインの役柄を歌い切るには、
男女を問わず、かなりのスタミナが必要とされるので、
どうしてもスタミナ勝負の、
ややガサツな歌手が多くなるのですが、
音楽は繊細極まりないので、
それではあるレベルを突き抜けたような、
感動をもたらす舞台にはならないような気がします。
この「ローエングリン」は、
15年前の新国立劇場開場記念の公演で、
僕は最初に生で聴いたのですが、
ワーグナーの子孫が演出に当たったその舞台は、
正直苦痛以外の何物でもなく、
聴き終わった時には、
二度とワーグナーなど聴くものか、
というくらいの気分になりました。
不幸な出逢いだったのです。
僕がワーグナーに開眼したのは、
ベルリン国立歌劇場の来日公演で、
「ニーベルングの指輪」の一挙上演を聴いてからで、
あれは本当に素晴らしかったですし、
しばらくはワーグナーの旋律が、
耳から去りませんでした。
ワーグナーの旋律はある種ワンパターンなのですが、
麻薬のようなところがあって、
一旦その旋律の虜になると、
ワーグナー以外では、
どうも物足りなく思えるようになるのです。
その後、指輪の4作と「トリスタンとイゾルデ」、
「タンホイザー」は3回以上は聴いていて、
「ニュールンベルグのマイスタージンガー」と「パルジファル」、
「さまよえるオランダ人」は1回ずつ聴いています。
「ローエングリン」は初回の印象が悪過ぎて、
あまり足が向かなかったのですが、
今回聴いてみて、
「指輪」みたいな神様のつばぜり合いもありますし、
ローエングリンはジークフリードのようですし、
禁じられた問いをエルザが発する前後の緊張感と、
その後の戦慄的な静寂は、
「神々の黄昏」のジークフリートの死を思わせ、
ラストは「パルジファル」のようで、
それでいて後期の作品ほど長くなく、
ワーグナーとしてはコンパクトにまとまっていて、
これは悪くないな、と初めて思いました。
それが良い上演であって、
脳がワーグナーの音楽に、
馴染んだ状態になっていれば、
入門編としては最適に思いますし、
ルードヴィッヒが気に入ったのも分かるような気がします。
ワーグナーの全作品のショーケースのような1作です。
今回の上演は、
演出は何かオリンピックの開会式のようだったのですが、
歌手陣とオケと指揮はなかなかに良くて、
素敵な気分で会場を後にすることが出来ました。
それではそろそろ出掛けます。
皆さんは良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
ただ、朝から産業医の研修があるので、
これからもう都内の大学病院まで出掛けます。
憂鬱ですが、
仕方がありません。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
昨日まで新国立劇場で、
ワーグナーの「ローエングリン」が上演されました。
先日の「ドン・ジョバンニ」、
そして今回と、
最近は結構旬の歌手が予定通りに来日していて、
気合の入った舞台を展開しています。
昨年の今くらいの時期には、
全ての公演がキャンセルか、
キャストの交代に次ぐ交代の嵐でしたから、
それを思うと複雑な思いがします。
世間が落ち着きを取り戻したことに、
ほっとする思いがある一方、
まだ問題は山積みなのに、
これで良いのだろうか、
という思いもあります。
それはともあれ…
今回の上演では、
世界でも売れっ子のワーグナー歌いである、
ドイツのテノールのフォークトが、
タイトルロールのローエングリンを歌っています。
ワーグナーのテノールというと、
巨漢の歌手が、
やや力押しに歌う、というイメージが強いのですが、
フォークトは騎士や英雄のイメージを、
崩すことのないビジュアルを持ち、
歌は繊細で極めつけの美声です。
僕の聴いた日は、
少し不調で声がやや荒れていましたが、
それでもその美しさは際立っていました。
正直、力押しの場面は、
ちょっときついな、
と思えるところもあるのですが、
どちらかと言えば、
ワーグナーはこうした歌手が、
好みだったのではないかな、
とその声に聴き惚れながらそう思いました。
ワーグナーのオペラのメインの役柄を歌い切るには、
男女を問わず、かなりのスタミナが必要とされるので、
どうしてもスタミナ勝負の、
ややガサツな歌手が多くなるのですが、
音楽は繊細極まりないので、
それではあるレベルを突き抜けたような、
感動をもたらす舞台にはならないような気がします。
この「ローエングリン」は、
15年前の新国立劇場開場記念の公演で、
僕は最初に生で聴いたのですが、
ワーグナーの子孫が演出に当たったその舞台は、
正直苦痛以外の何物でもなく、
聴き終わった時には、
二度とワーグナーなど聴くものか、
というくらいの気分になりました。
不幸な出逢いだったのです。
僕がワーグナーに開眼したのは、
ベルリン国立歌劇場の来日公演で、
「ニーベルングの指輪」の一挙上演を聴いてからで、
あれは本当に素晴らしかったですし、
しばらくはワーグナーの旋律が、
耳から去りませんでした。
ワーグナーの旋律はある種ワンパターンなのですが、
麻薬のようなところがあって、
一旦その旋律の虜になると、
ワーグナー以外では、
どうも物足りなく思えるようになるのです。
その後、指輪の4作と「トリスタンとイゾルデ」、
「タンホイザー」は3回以上は聴いていて、
「ニュールンベルグのマイスタージンガー」と「パルジファル」、
「さまよえるオランダ人」は1回ずつ聴いています。
「ローエングリン」は初回の印象が悪過ぎて、
あまり足が向かなかったのですが、
今回聴いてみて、
「指輪」みたいな神様のつばぜり合いもありますし、
ローエングリンはジークフリードのようですし、
禁じられた問いをエルザが発する前後の緊張感と、
その後の戦慄的な静寂は、
「神々の黄昏」のジークフリートの死を思わせ、
ラストは「パルジファル」のようで、
それでいて後期の作品ほど長くなく、
ワーグナーとしてはコンパクトにまとまっていて、
これは悪くないな、と初めて思いました。
それが良い上演であって、
脳がワーグナーの音楽に、
馴染んだ状態になっていれば、
入門編としては最適に思いますし、
ルードヴィッヒが気に入ったのも分かるような気がします。
ワーグナーの全作品のショーケースのような1作です。
今回の上演は、
演出は何かオリンピックの開会式のようだったのですが、
歌手陣とオケと指揮はなかなかに良くて、
素敵な気分で会場を後にすることが出来ました。
それではそろそろ出掛けます。
皆さんは良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2012-06-17 07:04
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こんにちは。毎日ブログを見ています。
休日の早朝、しかも出勤前にこのような長文の記事を書いてしまうというのがすごいですね!
今さらですが、ハイレベルな記事を毎日淀みなく書いておられることに感心いたします。
私もオペラは好きですが、専らCDで好きな時に好きな部分を聴くのが好きです。
では、今後もブログを楽しみにしています。
by 恵子 (2012-06-18 03:54)
恵子さんへ
暖かいコメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2012-06-18 08:28)