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人工甘味料の健康リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は昨日に引き続いて、
人工甘味料の話です。

人工甘味料というのは、
砂糖やブドウ糖ではないのに、
甘味を感じる特殊な科学物質のことで、
その実体は、
舌の甘味受容体に、
結合する性質を持つ物質のことです。

基本的にはカロリーがゼロでも甘く感じるので、
ダイエットに効果があると考えられ、
健康のために、
通常のブドウ糖の入ったコーラの代わりに、
人工甘味料を使用した、
ゼロカロリーのコーラを飲む、
という方が増えています。

ゼロカロリーのコーラを飲むことは、
水を飲むことと、
ほぼ同一と一般的には考えられています。

しかし、
本当にそうでしょうか?

幾つかの問題点が、
これまでに指摘されています。

人間の味覚というのは、
体の調節の面で、
大きな役割を果たしています。

たとえば、
疲れた夏の日に塩辛いものが美味しいのは、
身体が塩分を求めているからです。

つまり、
生理的な体内環境の維持と、
味覚というものの間には、
脳を介した一定の関連性があり、
調節のメカニズムがあるのです。

もし、
塩分がないのに塩辛く感じる食品があれば、
それを塩分補充のためと、
身体は勘違いして多く摂取し、
実際には塩分の喪失が改善されずに、
体調を崩すような事態も考えられます。

甘味の刺激は塩分の刺激ほど、
明確にその関連性が分かっている訳ではありませんが、
体内エネルギーの調節にとって、
適度な甘味の刺激は、
重要な役割を果たしており、
特に長期間に渡って、
甘味刺激はあるのに、
カロリーが不足する、
という事態が続くと、
身体の調節の仕組みが崩れ、
よりカロリーを取ろうとして、
過食傾向が生じる、
という可能性があります。

実際に幾つかの臨床研究において、
長期間の人口甘味料の使用により、
過食による体重の増加が生じた、
ということを示唆する報告があります。

一方で、
人工甘味料の使用により、
食事量が減り、
食後の血糖の上昇やインスリンの上昇が抑えられた、
という報告もあります。

これは概ね人工甘味料のメーカー絡みのもので、
それも短期間の効果を見たものです。

昨日お話したように、
膵臓のインスリン分泌細胞には、
舌と同じ甘味受容体があって、
そこには人工甘味料も結合することが、
2009年に実証されました。
ただ、厳密にはこれはまだ、
ネズミの実験のみの結果です。

この結果が人間にもそのまま当て嵌まるとすると
(そしてその可能性は高いと思われますが)、
人工甘味料を使用することにより、
インスリンの分泌が刺激される可能性が考えられます。

しかし、実際には、
人工甘味料の多くは、
舌の受容体に結合することを想定して、
作られた物質なので、
血液中への移行は悪く、
明確にそれでインスリンが刺激され、
低血糖状態になるリスクは、
少なくとも通常の状態では生じないようです。

ただ、
何らかの要因により、
過剰にインスリンが分泌され易い状態になっていたり、
インスリンの効きが亢進した状態になっていると、
比較的大量の人工甘味料の使用により、
予期せぬ低血糖の生じる可能性は、
有り得るのではないかと思います。

実際、
人工甘味料のように、
膵臓の甘味受容体に結合する物質で、
その作用を強化することにより、
糖尿病の治療薬としての研究も、
進められつつあるようです。

特にインスリン分泌刺激剤を使用中の患者さんでは、
水代わりに単独で、
人工甘味料の使用された炭酸飲料を大量に摂ることは、
低血糖のリスクに繋がったり、
その後の過食に繋がる可能性は、
否定出来ないのではないかと思います。

それでは今日のまとめです。

人工甘味料は、
基本的には安全性の高い物質ですが、
ダイエット目的で、
長期間大量に摂ることは、
将来的な過食や肥満を招く可能性があり、
また、インスリン分泌を刺激するような、
薬を使用されている糖尿病の患者さんの場合には、
その使用は最小限に留める方が、
安全ではないかと思います。

仮に人工甘味料を使用した、
ゼロカロリーの飲料を使用後に、
低血糖と思われる症状の生じた場合には、
そうした飲料の、
単独での使用を避けると共に、
インスリンの分泌や血糖調節に、
何らかの異常がないかの、
チェックが必要と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 3

Licca

糖質制限で有名な医師は、
エリスリトールを勧めています。

どんなものかと「ラカントS」を購入し、
お料理やお菓子に使ってみました。
砂糖の代用としては、まずまずかと思います。
ただちょっと「ひゃ~」っと冷感?があり、
大量に食べるたくはならないかも知れません。

合成甘味料はやっぱり天然の甘みとは違い、
なんだか残念な気分になります。
舌と膵臓が騙されたとしても、
脳はお見通しさ!なんて事、ありません?

保留になっている糖質制限に対する先生のご意見も
楽しみに待っています。

by Licca (2012-06-05 18:40) 

fujiki

Licca さんへ
コメントありがとうございます。
そうですね。
以前宿題を頂きましたね。
幾つもそうした宿題があったことを、
正直忘れ掛けていました。
申し訳ありません。

味覚を騙すということは、
矢張り長期的には身体のメカニズム上、
あまり良い手段ではないような気がします。
勿論適度に使用する分には、
問題はないのだとは思いますが…


by fujiki (2012-06-05 21:35) 

かえる

いつも拝読しています。
コレステロールが低いマヨネーズやサラダ油も、似たようなことがいえますか?
by かえる (2012-06-15 12:51) 

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