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コーヒーと死亡リスクとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

ソネットのメンテナンスの関係で、
今日はいつもより遅い更新になります。
今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
これから産業医の面談に出掛けるところです。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
コーヒーと死亡リスクの論文.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
コーヒーの飲用と死亡リスクとの関連についての文献です。

これは正直あまり大した文献とは思いません。
例数は実数で40万人以上という、
物凄い数なので、
一流誌の紙面を飾っているのだと思いますが、
やっていることは、
生活習慣についてのアンケートと、
死亡原因との関連を、
統計的に解析しただけのものです。

ただ、この雑誌には、
時々こうした疫学研究が掲載されます。

コーヒーと健康との間には、
色々な関連性が勿論考えられますが、
考察を読んでも左程突っ込んだ議論はなく、
統計処理したらこうでした、
理由はよく分かりません、
という感じのものなのです。

例の海藻を週何回食べると、
甲状腺癌になり易いとか、
納豆を食べると肝臓癌がどうたら、
というような、
個人的な意見では、愚にも付かない研究よりは、
信頼度は上だと思いますが、
基本的な考えには、
それほどの違いはないものだと思います。

嗜好品の中で、
タバコは勿論健康の敵で、
ナチスのような悪党の扱いですが、
コーヒーについては、
今後そうなる可能性が皆無とは言えませんが、
今のところ見解は割れています。

僕が以前医局にいた時に師事していた先生は、
タバコもコーヒーも大嫌いで、
タバコは勿論健康に良くないから、
という理由でしたが、
コーヒーに関しては、
「あれを飲むと頭が悪くなりそうだ」
という、
あまり科学的とは言えない理由でした。

コーヒーにはカフェインという、
神経を刺激する性質のある物質が含まれており、
交感神経の刺激作用があります。
また、このカフェインには依存性があり、
離脱症状が起こったり、
頭痛やめまいが誘発されたりもします。

このことから、
コーヒーは心疾患のリスクになるのでは、
という推測が生まれます。

その一方、
コーヒーの中には、
抗酸化作用を持つ生理活性物質が、
多く含まれている、
という報告があり、
コーヒーの成分により、
炎症に関わる血液マーカーが減少し、
インスリン抵抗性が改善した、
とするデータも発表されています。
抗癌剤との併用により、
その増強作用があるとする報告もあります。

このように、
コーヒーの健康に対する影響には、
相反する要素があり、
トータルには、
まだ結論が出ていません。

そこで今回の疫学研究では、
大規模な健康調査の結果を元にして、
コーヒーの摂取量と各種の死亡リスクとの関係を、
検証したのです。

その結果…

タバコの影響を補正すると、
コーヒーの摂取量と総死亡のリスクは、
逆相関する、という結果が得られました。

つまり、端的に言えば、
コーヒーを多く飲むほど、
死亡リスクが低下する、
という結果でした。

最も多いグループは、
1日6杯以上ですから、
かなりの量です。

ただし、相対リスクで10%下がるかどうか、
と言う程度ですから、
それほどの差ではありません。

それでも、
摂取量と逆相関している点には、
一定の意義がありそうです。

死因別に検討してみると、
心疾患や呼吸器疾患など、
多くの病気の死亡とは同様の関連性がありましたが、
癌に関しては関連性はありませんでした。

僕はコーヒーは好きなので、
その意味では嬉しい結果ですが、
これだけでコーヒーが身体に良いと、
短絡的に考えるのは危険だと思います。

仮にコーヒーに何らかの、
死亡リスク減少に結び付くような作用があるとすれば、
その原因物質が何なのかの検証が必要で、
それなしに健康のためにコーヒーを馬鹿飲みするのは、
何処かの健康洗脳番組に、
変わらないレベルの話のような気がします。

今日はコーヒーの死亡リスク減少効果についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 6

いっぷく

私もコーヒーをよく飲むので、
「コーヒーは○○に効く」はまあいいとして
「コーヒーは××のリスクがある」という話は気になります。

ただ、緑茶もそうですが、私は「何杯呑むと……」という
疫学調査は「前向き調査」も含めて懐疑的です。
一杯の中身によってもかわってくると思いますから。
いずれにしても、健康に関してはまじめというか、思考停止というか、
疫学調査のニュースがあると、すぐに
「ばっかり食べ(飲み)」か、「絶対禁忌」かの
オール・オア・ナッシングになりがちなので
気をつけたいと思います。
by いっぷく (2012-05-23 16:50) 

ごぶりん

先の医薬品に関する記事で最近疑問に思っていたことがクリアーになった気がします。
どうも有難うございます(^-^)
カフェイン中毒のケがあるのでその説を支持したい気持ちは山々なのですが、
一方ではコーヒーの摂取量は原因ではなく結果なのではという疑念も拭えません。
体調が悪いとコーヒーを飲む気にならないのではと思うのです。
ただ、便秘には大変有効だと思います。
by ごぶりん (2012-05-23 20:16) 

yuuri37

我が家は、常にコーヒーが飲める状態。夫はコーヒー依存症(笑)
ちょっと安心できる結果で嬉しいな^^;
私のポケットには、いつもカフェインとチュッパチャップスが入っていましたが、最近はボールペンぐらいかな・・・
by yuuri37 (2012-05-24 01:15) 

fujiki

いっぷくさんへ
コメントありがとうございます。
ご指摘に通りで、
こうした疫学研究は、
元々大雑把なものなのに、
すぐに「商売に」利用されるので、
問題だという気がします。
「エビデンスレベルの低い情報は報道や宣伝は不可」
のような規制があっても、
個人的には良いのではないかと思います。
by fujiki (2012-05-24 08:42) 

fujiki

ごぶりんさんへ
コメントありがとうございます。
少しでもご参考になる点があれば幸いです。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2012-05-24 08:43) 

fujiki

yuuri37さんへ
僕も朝から3杯くらい飲む感じなので、
良い情報ではありますが、
ほどほどにしようとは思います。、
by fujiki (2012-05-24 08:44) 

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