ナイロン100℃「持ち主登場」

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。
やっと体調は平常に近くなったので、
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
あれやこれやをして、
それから今PCに向かっています。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。

ケラの率いる劇団「ナイロン100℃」は、
おそらく現在の小劇場には、
よくも悪くも、
最も影響を与えている存在ですが、
本公演以外にサイドセッションと称する番外公演があり、
その1つとして、
メインの役者の1人である、
大倉孝二が企画して出演もした公演が、
今日まで渋谷で上演されています。

大倉孝二は初舞台の頃から観ていますが、
最初は退団した手塚とおるのコピーのような感じだったのが、
アイデンティティーというものを、
端から持ち合わせていないような、
その暴力的でシュールな佇まいと演技とで、
メキメキ頭角を現わし、
今ではケラの芝居の独特の間合いを、
最も忠実に体現し、
彼の戯曲を字義通りに立体化する存在となっています。

一時テレビに出始めた頃は、
演技がテレビ化して舞台にも影響し、
シュールさが後退して落胆を感じさせましたが、
テレビでもそれなりの立ち位置を獲得すると共に、
初期の暴力的な感じこそ影を潜めましたが、
シュールな味わいは、
舞台でも復活した感があります。

そんな大倉孝二が、
「ふざけた芝居」に徹して、
企画から舞台を作る、と言うのですから、
一体どんなものが出来るのだろう、
と期待は高まります。
彼の本領は間違いなくナンセンスコメディにあるからです。

ただ、実質的な作・演出が、
ブルースカイ、と言うのが気にはなります。

ブルースカイは劇団猫ニャー主催で、
劇団解散後は企画公演などに携わっている、
ケラのお気に入りで、
何度かケラとコラボレーションめいた企画もしています。

ただ、おそらくはもっと面白い舞台もあったのでしょうが、
僕が見た数作品は、
「スケールの小さなケラの真似」と言う感じで、
本当に詰まらなくて、
見たことを一生後悔するようなものでした。
猫ニャーの演劇界への貢献は、
今のところ怪優池谷のぶえを生んだ、
という一点に尽きるような気がします。

そして、正直今回の作品も、
ブルースカイのカラーが濃厚に出た、
僕としてはとても容認出来ないタイプの作品でした。

以下ネタばれがあります。

オタクネタを織り交ぜた、
ちょっとシュールな御伽噺、
という体裁のストーリーラインで、
ニューヨークめいた町で、
大富豪が自分の昔の恋人を探すために、
3人の「持ち主」を探し、
そのうちの2人に、
恋人探しの命令を出します。
そこからはグリム童話かRPGのような展開となり、
最後は大富豪が自分が大化の改新の時代のベンチだった、
という正体に気付き、
ベンチと化して終わりになります。

基本的な登場人物は5人で、
その5人が多くの役柄を、
入れ替わり立ち代り演じます。
ただ、作品の流れから言うと、
群集シーンが多く、
それを5人で演じるのは、
基本的にかなり無理があります。
最後の場面だけに、
恋人役として別の女優さんが出演しますが、
これもかなり苦しい感じです。

前半のシチュエーションコント風の場面は、
それでも何とかなるのですが、
後半のRPGもどきの場面になると、
どう考えても、
もっと人数が必要になるのです。

こうした展開のナンセンスコメディにおいては、
どれだけ脇筋の設定にふくらみがあり、
ラストのどんでん返しに、
どれだけの落差が付けられるのかが、
大きなポイントになりますが、
その点も今回の作品には不満が残ります。

イカを噛む謎の女とか、
潰れそうなビストロとか、
犯人を捕まえたくない刑事とか、
発想の貧困さにガッカリしますし、
ラストの落ちが「大化の改新」と言うのは、
如何にもモンティパイソンの「スペイン宗教裁判」めいていて、
他に何かなかったの、
と問い掛けたくなります。

大倉孝二としては、
おそらくはもっと自由度の大きな、
台本にしたかったと思うので、
僕は今回の主な戦犯は、
矢張りブルースカイだと思います。

キャストは大倉孝二に峯村リエ、
村岡希美までは文句はないのですが、
ダンサーの起用は、
あまり成功していないと思いますし、
演技者としてのブルースカイは論外なので、
もう少し器用な人を、
もう数人はキャスティングして欲しかったな、
というのが正直なところです。

最後に会場となった、
CBGKシブゲキ!!というのは、
映画館を潰してそのまま劇場にしたもので、
僕は行ったのは初めてでしたが、
舞台袖もなくて舞台転換も出来そうになく、
ちょっと安易に劇場にしたな、
という感じの場所でした。
上演する側としては、
非常に使い辛いと思います。
空いた土地を取り敢えず駐車場にした、
という感じですね。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

コメント 2

いきなりで申し訳ありません。

日本脳炎から色々と検索をしていたら、先生のブログを拝見させていただきました。

お忙しい所申し訳ありません。
自分勝手なのは重々承知しているのですが、今日本脳炎の接種について悩んでおりまして、先生の日本脳炎の日記(２０１０．３．１８)にコメントを書かせていただきました。

いきなりで申し訳ありませんでした。

と言うのも、先生の記事がとてもわかりやすく、頭にすっと入ってきた(理解力が乏しい私でも理解できた)ので、先生にご回答をお願いしたいのです。

いきなりでしかも要求をしてしまい、申し訳ありません。

もしお時間おありでしたら、気が向いたときにでもご回答宜しくお願い致します。

勝手ながら申し訳ありませんでした。

by けんけんﾏﾏ (2012-02-27 00:30) 

けんけんママさんへ
メールの方にご返事します。
少々お待ちください。
by fujiki (2012-02-27 08:13)