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寺山修司「盲人書簡」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。

朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
盲人書簡.jpg
寺山修司の演劇作品を上演している劇団は、
幾つかあって、
寺山修司は演劇実験室の「天井桟敷」を主催していたのですが、
寺山修司の死の直後に旗揚げされ、
その時点では新高恵子や若松武、日野利彦以外の、
殆どの「天井桟敷」の団員が参加した、
「万有引力」と、劇団池の下、
そして今回の劇団☆A・T・P-Tokyo などがあります。

「天井桟敷」の音楽を長く担当していた、
J・A・シィザーが、
そのいずれにも関わっているので、
今回僕は初めて劇団☆A・T・P-Tokyo を見ましたが、
良くも悪くも、
シィザーの色が出ているな、
ということは感じました。

僕は矢張りギリギリで寺山修司没前に観た、
天井桟敷の舞台には、
強烈な印象を持っているので、
基本的にはその出来の悪いコピーのような、
寺山演劇の上演には気分が乗らないのですが、
「盲人書簡」というシリーズには、
特段の思い入れがあるので、
その題名を見るだけで、
何となく心が落ち着かず、
結局当日券で行ってしまいました。

「盲人書簡」というのは、
1つの独立の作品の名前ではなく、
ある時期寺山修司が取り組んだ、
一連の演劇実験のシリーズの名称です。

そのテーマは「見えない演劇」です。

「見えない演劇」とは何でしょうか?

通常演劇は舞台を一定の時間、
ライトで照らすことによって見せ、
舞台転換などの間だけ、
「暗転」と言って明かりを消します。
つまり、暗闇は単なるインターバルに過ぎません。

「見えない演劇」は演劇において、
「見る」という行為の持つ意味を問い直したもので、
殆どの場面は「完全暗転」の中で展開し、
明かりの灯る場面の方が少ない時間に留まります。

異形の俳優達が闇の中でマッチを擦り、
台詞を言い終わると共に吹き消すのは、
後期「天井桟敷」の名物藝ですが、
その始まりはこの「見えない演劇」がベースにあります。

「盲人書簡」はオランダで上演された「人形篇」から始まり、
代表的なものが、
1974年に法政大学で上演された「上海篇」です。

初演時のチラシがこちら。
盲人書簡初演.jpg

この「上海篇」は舞台の台詞をそのまま起こしたものが、
「地球空洞説」という単行本の中に収められています。
これは僕の愛読書で、
読むだけでその場に立ち会うような思いがして、
ワクワクすると共に、
実際に舞台を観ることの出来なかった無念に、
歯噛みをするような思いにも捉われるのです。

僕は「万有引力」が上演したものと、
「池の下」の上演した同作品を見ていますが、
いずれもほぼ台本は単行本と同じでした。

ただ、今回の上演は「上海篇」の文字はなく、
基本的には単行本化された台本と同じですが、
別個のパートが少し付け加えられていて、
長さも2時間を越える長尺になっています。
台詞の感触から言って、
上演によって台本に異動があったのではと考えられ、
シィザーからその提供を受けたのかな、
とも思いました。

僕の期待するポイントは一点だけで、
「完全暗転」が実現出来たかどうか、
ということです。

寺山演劇の後継者である筈の「万有引力」も、
その点では本当にガッカリで、
チラチラと明かりが見える、
「普通の暗転」になっていました。
池の下も小さな会場でしたが、
矢張り同じでした。

今回の劇団☆A・T・P-Tokyo の上演も、
その点は同じで、
会場は地下の蔵を改造したような趣のあるものなので、
完全暗転へのハードルは低いのですが、
舞台は完全に暗くなっても、
客席の上にある音効や照明のオペ室に、
暗転中も明かりが点いているので、
前に座っているお客さんの、
白いシャツがぼんやり見えるくらいの明るさになり、
非常にガッカリさせられました。

これはオペ室のスタッフを訓練して、
暗転中には手元の明かりも全て消し、
機械の赤いランプなども、
全てカバーして消さないと駄目なのです。
暗転から明かりや音効の入るタイミングだけは、
全くのブラインドタッチで、
やれないといけないのです。

「真の闇」というのは、
それ自体が良質の娯楽になるものなので、
誰か是非実現して欲しいと思います。
その時はご一報頂ければ何処からでも駆け付けます。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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