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手足口病の流行について [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は「手足口病」の話です。

お子さんに多いこの病気については、
以前にも何度かご説明したことがあります。
ただ今年は手足口病が全国的に流行しており、
その原因ウイルスにも、
いつもとは少し異なる特徴が見られます。
今日はそうした点を含めての、
「手足口病」の総説です。

「手足口病(Hand-Foot-Mouse Disease )」は、
1960年に初めてその名前で論文が発表され、
その後定着した病名で、
古くからおそらくあった筈の病気にしては、
報告が比較的最近であるのが、
1つの特徴です。
ちなみに良く似たタイプの病気で、
口だけに水泡の出来る「ヘルパンギーナ」の、
最初の報告は1920年です。
そして、日本での「手足口病」の最初の報告は、
1965年のことです。

「手足口病」の原因は、
主にコクサッキーA16とエンテロウイルス71という、
いずれも同じエンテロウイルスという仲間に属する、
RNAウイルスです。
それ以外にも、数種のエンテロウイルスの仲間が、
同じような症状の原因になることが知られています。

エンテロウイルスとコクサッキーウイルスと言うと、
全然別のウイルスのように感じますが、
実はそうではなく、
発見された経緯により、
別の名前が付いているにに過ぎないという面があります。
たとえば、コクサッキーA23というウイルスは、
エンテロウイルス9と全く同じものです。
インフルエンザウイルスの型分類と、
同じように考えて頂くのが、
分かり易いかも知れません。

エンテロウイルスの起こす病気として、
最も注意が必要なのは、
突然死の原因としても知られている、
ウイルス性心筋炎ですが、
「手足口病」も、後でお話するように、
決して甘く見ることは出来ない病気であり、
その人間に対しての脅威度は、
感染力を別にすれば、
インフルエンザウイルスに匹敵すると言って、
過言ではありません。

「手足口病」はウイルスに感染してから数日後
(概ね3~7日と報告されています)
手と足と口とに、
特徴的な湿疹が出現する病気です。
通常はあまり高い熱は出ません。
1週間程度で湿疹が消えれば、
それでおしまいです。
お母さんが免疫を持っているので、
生まれて半年くらいから出現し、
5歳くらいまでが多い年齢です。
稀に成人でも発症の事例があり、
僕も20代前半での「手足口病」の患者さんを、
経験しています。
多い季節は夏で、所謂「夏風邪」の一種ですね。

それでは、ちょっと特徴的な湿疹の画像をお見せします。
まずこちらを。
手足口病1.jpg
これは手の平の湿疹です。
このように小さな水ぶくれのような湿疹が、
手の平を中心に出来るのが特徴です。
結構肘の周りとか前腕にも出来ることがあります。
では次を。
手足口病2.jpg
これは両膝の湿疹です。
足の裏に出来るのが典型的と言われますが、
実際には足の裏には出ず、
膝だけに出る例が、結構あるというのが、
僕の印象です。

口の中にも水ぶくれが出来ますが、
その画像はお見せ出来るものがありません。

その3つがあれば、ほぼ「手足口病」と言って、
間違いはありません。

「手足口病」は、基本的には自然に治る病気で、
特に治療の必要はありません。

しかし、時に重症化するケースがあり、
以前から問題になっています。

最初に「手足口病」の原因は、
コクサッキーA16とエンテロウイルス71という、
2種のウイルスの関与が大きい、
という話をしました。

このうち、コクサッキーA16については、
ほぼ全例が軽症型で、重症例は殆どありません。
ところが、エンテロウイルス71については、
脳炎や髄膜炎の発症頻度が高いのです。

その症状の出現は、
湿疹が出てから、2~3日後というのが、
ほぼ共通した特徴です。
意識障害や発熱、痙攣などが急速に現われ、
最悪は死に至ります。
また、それとは別に肺に急激に水の溜まる、
肺水腫で亡くなる事例も報告されています。

1975年頃より数十人規模の死亡の報告があり、
一番最近では1998年に、
台湾で20万人を超える患者が「手足口病」に罹り、
55人のお子さんが亡くなっています。

全てがエンテロウイルス71によるものとは、
確定は出来ませんが、
ウイルスが脳から検出された事例があり、
大多数はこのウイルスによるものと、
推測されています。
インフルエンザウイルスと同じように、
これはエンテロウイルスが強毒性に変異した可能性が、
考えられているのです。

ところで、今年日本で流行している手足口病は、
その半数がコクサッキーA6という、
上記の2つのタイプとは、
また別種のウイルスです。

特徴としては、
比較的高熱が先行することが多く、
身体の発疹は、
外陰部や股の当たりにも多い、
という印象です。
水疱のような湿疹が、
全身に生じる病気の代表と言えば水疱瘡ですが、
典型的な手の平や足の裏の湿疹が少なく、
外陰部の湿疹が中心だと、
水疱瘡との鑑別に迷う事例もあります。

ただし…
ちょっとこちらをご覧下さい。
水疱瘡.jpg
これは典型的な、
軽症の水疱瘡の画像です。
このような身体の中央部の水疱は、
手足口病には通常は出現はしないようです。

今日は新しい知見を踏まえた、
「手足口病」の総説でした。
軽い病気と油断せず、
お母さんは特に湿疹が出て3日は、
お子さんのご様子に気を配って下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 6

あきこ

夏休みに徳島にキャンプで二週間ほど滞在したのですが、
手足口病が子供たちの間で大流行していました。
中には、間をあけて二回もかかる子供もいて、
症状もそれぞれ違っていました。

病院の少ない田舎だったため、小児科はなく、
行った病院では、「手足口病かなあ・・・?」
くらいの診察で、
手足口病に効く薬はない、とのことで、
解熱剤をもらって、みな三日間、隔離して
寝ていました。

息子も、一日、突然の高熱に見舞われました。
病院へ行かず、寝ていたら治りました。
発疹はなかったので、手足口病だったのか、
わからないのですが・・・。

お母さんの間では、
「手足口病は薬があるわけではないし、寝ていれば治るし、
あまり怖い病気ではなさそう」
という考えと、一方で、
「感染力も強いし、一度かかっても何度もかかる子も
いるし、なんだかわからないけど怖そう。最近は強力に
なって、大人にもうつるんだって」という噂もあり、
困惑していました。
石原先生の記事を読んで、この病気についてよくわかり
ました。いつもタイムリーな記事をありがとうございます。
by あきこ (2011-09-06 22:00) 

fujiki

あきこさんへ
コメントありがとうございました。
今年の手足口病は、
確かに典型的でないことが多く、
診療では迷うところがありました。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2011-09-07 08:05) 

Hirosuke

ご無沙汰しています。

こんな新ブログを書いています。
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是非ご訪問ください。

by Hirosuke (2011-09-09 23:05) 

ちばおハム

とても分かりやすかったです。
手足口病、水ぼうそうなど、最近今までと違った形で出る病気が増え、ウイルスが強くなっている(というのかわかりませんが)印象があります。引き続き、手足口病の時には発疹が出てから2,3日は様子をよく見るようにしていきたいと思います。

by ちばおハム (2011-09-17 07:02) 

fujiki

Hirosuke さんへ
ご訪問ありがとうございます。
こちらからもお伺いさせて頂きます。
by fujiki (2011-09-17 08:10) 

fujiki

ちばおハムさんへ
コメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2011-09-17 08:10) 

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