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芳山の石仏を訪ねて [仏像]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日まで診療所は休診で、
明日からはいつも通りの診療になります。

いつものように駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。

走った帰りにナチュラルローソンに寄って、
クロワッサンを2個と、
充実野菜と飲むヨーグルトを買ったのですが、
お金を出した時に手に少し土が付いていて、
それを拭いながら待っていると、
レジの男の子が、
「お手拭もお付けしましょうか?」
と聞いて来たので、
0.2秒ほどの即答で、
「いいです。いいです。要りません」
と言ってしまい、
それから1秒くらいの時間差で、
よく気の付く子だな、ありがとう、
と思ったのですが、
それは言葉にせずに店を出てしまいました。

お手拭と言われた時、
僕はそのまま歩いて家に戻るつもりだったので、
家に帰ってから手を洗えばそれで良いので、
即坐に「要らない」という考えが頭に浮かび、
そのままに口にしてしまったのですが、
レジの男の子は僕の様子を見て、
すぐに気を遣ってくれたのですから、
そのことに対する感謝の気持ちが、
先に頭に浮かんでも良かった筈です。

僕は小さい頃から、
色々な人に、
「お前は自分勝手な奴だ」
と言われて来たので、
こういう時に地が出ると言うか、
自分の頭の中の回路が、
まず自分の都合だけを考えて動いているのが、
クリアに確認出来た感じがして、
何となく辛い気分になりました。

まあ、こういう時に、
気の利いたことが即坐に言えれば、
多分そういう人が偉い人や有名な人になるのでしょうし、
人間関係というのは、
結局そうしたある種の反射神経の、
積み重ねのようなものなのかも知れません。

今日も昨日に引き続いて、
奈良の石仏の話です。

今回の奈良行きで、
どうしても拝したかったのが、
柳生街道の芳山(ほやま)の石仏です。

芳山の石仏というのは、
柳生街道から春日山の山中に分け入ったところにおられる、
奈良時代に刻まれたという説もあるほど、
極めて古い時代の石仏で、
その後長く人間の目からは忘れ去られ、
昭和37年に再発見されたといういわくのある仏様です。

石仏の写真集などには、
必ずそのお姿が掲載されてはいますが、
ガイドブックや観光案内の類には、
その名前はありません。

これは観光スポットとしての整備が、
全くなされてはいないからで、
現在でも相当の石仏マニアか、
余程信心深い方以外は、
そのお姿を拝むことはありません。

僕は小学校の頃から、
入江泰吉の写真が掲載された、
カラーブックスの「柳生の里」がバイブルで、
夕日観音と共に、
そのお写真でも最も魅かれたのが、
芳山の石仏のお姿でした。

今回初めて拝むことが出来たので、
そのお姿を今日はご紹介します。

まず、その道筋です。

こちらをご覧下さい。
芳山石仏への入り口.jpg

柳生街道に峠の茶屋という、
有名なお茶屋さんがありますが、
そのすぐ先が集落の入り口になっています。
そこを少し下ると、
奈良市内から向かって右側に、
真新しい公衆便所があり、
その数メートル先の左手に小じんまりとした神社に向かう石段があります。
この画像に左にあるのがそれです。
その右手に細い未舗装の道があります。

何の看板も目印もありませんが、
これが芳山の石仏への入り口です。

ここをズンズンと入って行きます。

道はしばらく竹林の中を進みます。
竹が道の幅だけ切り開かれています。

更に進むと右手に荒れた畑が見え、
その先に山へと入る鉄の扉があります。

扉は錠が外されています。

おそらくお山を管理されている方が、
昼間だけ開けておかれるようです。

その先を進むと、
最初は普通のお踏み分けの山道が続き、
それから道が二手に分かれます。
それがこちら。
芳山への道.jpg
手作りの看板があって、
左側の道が石仏への道であることを示しています。

ここから先が、
ぐっと道が険しくなります。

杉の林の斜面を、
ひたすらに登って行くのですが、
かろうじて道の痕跡が分かるという程度です。
濃厚な杉の匂いはむせるようで、
花粉症の方には、
まあ絶対にお勧めは出来ません。

途中で道は何度も途切れそうになり、
おやと思うと木の幹や枝に、
赤いテープが目印に巻きつけてあるので、
ああ、こっちだな、
と探りながら登ります。

途中で1か所、道が左右に分かれて迷う場所があり、
僕は左に行きました。

これはおそらくしばらく左右に分かれてから、
合流しているものと思われますが、
もし迷われた方は、
取り敢えず左に行くことをお勧めします。

多分登りは1キロはないと思うのですが、
感覚的には永遠のようにすら思えます。

少し登りが緩やかになったところで、
道は再び左右に分かれ、
そこにまた手書きの看板があります。

それに沿って今度は右に進むと、
ほどなく石仏様のおられる広場に達します。
朝の7時40分に市内を出て、
夕日観音様に達したのが8時20分くらい。
地獄谷の石窟に9時半くらい。
そしてこの芳山の石仏様に、
10時20分くらいに到達しました。

ご覧下さい。
こちらです。
芳山の石仏1(全景).jpg
石仏様のいらっしゃる広場の全景です。
画像の左手からここに達する感じです。

辺りは森閑とした山の中で、
勿論僕以外に人はいません。
石仏様に近付きます。
申し訳ありません。
無粋なデジカメ如きもので、
ご尊顔を汚す無礼をお許し下さい。
こちらです。
芳山の石仏2.jpg
説法印という印相を結び、
釈迦如来だとされています。
ただ、これはそういう言い伝えがある訳ではなく、
昭和37年の再発見以降、
そうした解釈をする人が、
多かった、というだけの話です。
如何にも古拙で趣があり、
古そうだ、ということは分かります。

最も古いとされる解釈が奈良時代。
いやいや鎌倉期のものだ、
という夢のない説もあります。

僕の感触としては、鎌倉期よりは確実に古いもので、
平安初期のものではないかしら、
という感じです。
こうしたスタイルの如来像というのが、
平安中期以降では考え難いからです。

もう少し近付きます。
芳山石仏アップ.jpg
これが丁度お姿を間近で見上げた感じです。
美しいですよね。
手を合わせてお祈りをします。

それではちょっと角度を変えて横に廻ります。
それがこちら。
芳山の石仏3(2面).jpg
このように石の2面にそれぞれ仏様が彫り込まれています。
正面が南を向かれていて、
もうおひとりは西を向かれています。
では次を。
芳山石仏裏側のお顔.jpg
これが西向きのお姿で、
こちらは阿弥陀如来とされています。
ただ、これも推測に過ぎません。
もう一度正面に廻ると丁度陽が差し込みました。
芳山石仏陽光に輝く.jpg
金色に輝くお姿をもう一度拝んで、
静かに山を降りました。

お参りをされる方は、
充分ご注意の上お進み下さい。
雨の翌日などは危険なのでお勧めは出来ません。

僕も来年また拝せれば良いな、
とは思いますが、
その機会はないかも知れません。

今日は芳山の石仏のお姿を、
観て頂きました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 6

Jasbest

美しい仏様のお写真、ありがとうございました。
悲しいことがたくさんあって、
色々な思いと祈りにつつまれた今年のお盆。
古い仏様を観て、いつの世も人間は
辛い思いを乗り越えてきたんだなって、
ちょっとジワっと来てしまいました。


by Jasbest (2011-08-15 13:56) 

ごぶりん

小学生の頃の愛読書が「柳生の里」のカラーブックなんて、めっちゃ渋いですね。
なかなか旅行もままならないのでいい目の保養をさせて戴きました。
有り難うございます。
この連休は吉村昭さんの著書の中で、特に日本で過去に起きた災害について
書かれたものを読み耽っていたので穏やかな仏様を拝顔するとほっとします。
コンビニのエピソード、私だったらお手拭きを貰わなかったのはごみを
減らすことができたと、自分で自分を誉めてますね。
愛想もこいそもないですね(汗)
感謝の気持ちを述べるのはかなりの高等技術だと思います。
心の中で感謝するだけでも十分かと。
by ごぶりん (2011-08-15 19:58) 

fujiki

Jasbest さんへ
コメントありがとうございます。
明るい時代になると良いのですが…
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2011-08-15 22:49) 

fujiki

ごぶりんさんへ
昔の写真とは風景はかなり変わっているのですが、
要所はそのままのように思えるのが、
不思議と懐かしい思いがします。
ただ、少し坂になると、
ヒーヒー言ってしまい、
体力は相当駄目ですね。
by fujiki (2011-08-15 22:52) 

yuuri37

ワクワクしながら先生のブログを開きました。奈良に行かれると聞いたときから、期待していました。
きっと・・・
柳生街道の芳山の石仏に会えると思ったからです。
ずっと、走り込んでおられたし、信じていました。
私もいつか必ず・・・
でも明日は分からないので、先生のお撮りになった石仏様を脳裏に焼き付けさせていただきました。
by yuuri37 (2011-08-16 00:56) 

fujiki

yuuri37さんへ
コメントありがとうございます。
1年走っていた割には、
あまり去年と体力は変わりませんでした。
でも芳山の石仏までは、
どうにか行けて良かったです。
by fujiki (2011-08-16 07:44) 

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