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「ファントム・オブ・パラダイス」とブライアン・デ・パルマの世界 [映画]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。

朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
その後ちょっと庭の草取りをして、
それから今PCに向かっています。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ファントムオブパラダイス.jpg
ブライアン・デ・パルマは、
今も活躍するアメリカの映画監督ですが、
本当に冴えていたのは、
デビューから1976 年の「愛のメモリー(最悪の邦題!)」までで、
その後「アンタッチャブル」でメジャーになりますが、
あれも悪い映画ではなかったものの、
以前の「悪魔的」な冴えは、
すっかり消え失せていました。

僕はデ・パルマの初期の作品が大好きで、
それはピーター・ジャクソンや、
ロマン・ポランスキーの初期作品に似ていますが、
両者と同じようにあまり万人向きとは言えません。
要するに趣味全開でやり過ぎなのです。

デ・パルマの初期作品は、
1973年の「悪魔のシスター」から始まり、
1974年の「ファントム・オブ・パラダイス」、
1976年の「キャリー」と「愛のメモリー」に続きます。
僕はこのうち「キャリー」と「愛のメモリー」は名画座で観ていて、
他の2本はテレビとビデオが初見です。
(実際には1973年以前の監督作品もありますが、
僕は観ていませんし、
一部はソフト化されていますが、
日本で劇場公開はされていません)

この全てが好き嫌いはありますが、
他に類のない作品であることは間違いがありません。

中でも最高なのが、
この「ファントム・オブ・パラダイス」です。

この作品は脚本・監督がデ・パルマで、
要するに彼のやりたい放題の、
プライヴェートフィルムの色彩が強いものです。
ロック・ミュージカルと紹介されることが多いのですが、
その先入観で観るとちょっと違います。

オープニングからエンディングまで、
ともかくセンスに溢れ、
楽しくてワクワクし、
ラストは切なくて、
別の次元に誘われる気分がするのです。
ヒッチコックからキューブリック、コッポラまで、
映画の引用も満載です。

題名で分かる通り、
この映画は「オペラ座の怪人」のパロディです。
元ネタは醜い顔を持つ作曲家が、
パリオペラ座の地下深くに潜み、
不遇の歌姫を見初めて、
彼女をスターにするために、
暗躍する話ですが、
こちらは、
自分の音楽作品を、
音楽プロデューサーに騙し取られた冴えない作曲家が、
レコードのプレス機に挿まれて顔面を負傷し、
仮面の怪人となって、
音楽プロデューサーに、
復讐しようとする話です。
勿論不遇の歌姫も登場します。

ただ、その悪徳プロデューサーが実は…
という捻りがあり、
後半は「オペラ座の怪人」とは、
次元の違う物語に昇華してゆくのです。

その謎の悪徳プロデューサーを演じているのが、
ソングライターのポール・ウィリアムスで、
その筋では非常に高名な方ですが、
彼が作品の全ての楽曲をプロデュースしています。
僕はサントラも持っていますが、
これは最高で、
レセプトのチェック作業をする時には、
デセイ様の「フランスオペラアリア集」と、
交互に聴きながら作業をしています。

主役の怪人はデ・パルマのお友達のフィンレイで、
不遇の歌姫には後に「サスペリア」の主役を演じる、
ジェシカ・ハーパーがキャスティングされています。

この作品の素晴らしさの1つは、
藝術とそれが商品化されるということとの葛藤が、
結構深い次元で捉えられている、
ということで、
その溝を軽々と飛び越える悪徳プロデューサーが実は…
というところで、
その本質的な部分に切り込んでいるのです。
また、もう1つの魅力は勿論、
怪人の歌姫に寄せる切ない愛情で、
ラストの永遠が無限に引き伸ばされたような瞬間が、
無残に観る者の胸をかきむしるのです。

所謂「カルト・ムービー」なので、
万人向きではなく、
「何だこの訳の分からないい加減な話は」と、
お怒りになる方もいらっしゃるかと思います。

でも、僕は大好きで、
こんな映画が1本撮れたら、
本当に素晴らしいだろうな、
とはいつも思うのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 11

末尾ルコ(アルベール)

おお!先生がデ・パルマを!(笑)
失礼いたしました、嬉しくなって。(笑)

わたしは「キャリー」「ファントム~」も大好きですが、「フューリー」を偏愛しております。

                        RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2011-07-17 13:23) 

アミナカ

デ・パルマ作品といえば、私はナンシー・アレンの魅力はデ・パルマだからこそといつも思ってしまいます。 コッポラといえば、「テス」なんですよね…だらだら長いけどセツナイ。。昔は「ローズマリーの赤ちゃん」が怖くてドキドキしましたが、今は自分しか信じられないみたいな人間不信の時は妙にしっくりくる不思議な『癖』丸出し監督列伝の中の名作?迷作?の一つのような感じです。
by アミナカ (2011-07-17 14:38) 

fujiki

RUKO さんへ
「フューリー」は、
僕は封切りで観たのですが、
その時はあまり好印象ではなかったのです。
後でビデオで観て、
意外に悪くないなと思いました。
クローネンバーグの「スキャナーズ」に似た話で、
「スキャナーズ」が衝撃的だったので、
ちょっと印象が割引された感じはあります。
ただ、実際には「フューリー」の方が数年前の作品で、
「スキャナーズ」の方がパクッた感じですね。
「キャリー」は抜群で、
お母さんと対決する場面など、
壮絶かつ切なくて、
それでいて包丁がクルクル回転して飛んでくるような、
ギャグが入るのがまた良いのです。
by fujiki (2011-07-17 23:08) 

fujiki

アミナカさんへ
コメントありがとうございます。
「殺しのドレス」も「ミッドナイト・クロス」も、
ナンシー・アレンが良かったですね。
旬の短い女優さんでした。
「テス」は封切りで観たのですが、
矢張り他の物を期待していたので、
ちょっと肩すかしの感じが当時はしました。
今観るとまた気分が違うかも知れません。
「ローズマリーの赤ちゃん」は大好きで、
都会の孤独の表現の仕方とか、
本当に素晴らしいと思います。
by fujiki (2011-07-17 23:13) 

サンフランシスコ人

「日本で劇場公開はされていません」

サンフランシスコの映画館では上映したと思います。

by サンフランシスコ人 (2011-07-18 03:28) 

ごぶりん

ポール・ウィリアムさんといえば、[three dog night」位しか
存じませんが(違ってたらごめんなさい)、
映画にも出てらしたんですね。ちょっとびっくりです。
以前テレビで放映されたエミリー・ロッサム嬢が主演の「オペラ座の怪人」は
30分ほどで爆睡してしまいましたが、
それとはまた別物と考えていいんでしょうか?
映画を見てても余程面白くないと途中で寝てしまうので・・・。
「ファム・ファタール」も途中で寝てしまいました(--;)

by ごぶりん (2011-07-18 09:13) 

fujiki

サンフランシスコ人さんへ
いつも情報ありがとうございます。
多分初期作にも面白いものがあるのでは、
と思うのですが、
日本では観る機会はありません。
by fujiki (2011-07-18 09:47) 

fujiki

ごぶりんさんへ
コメントありがとうございます。
カーペンターズの「愛のプレリュード」や、
「雨の日と月曜日は」の作詞が有名ですね。
俳優として上手い人ではないですが、
この作品はドンピシャリです。
「オペラ座の怪人」とは別物ですが、
好みは非常に分かれると思います。
誰が観ても面白い、
というような作品ではありません。
by fujiki (2011-07-18 09:50) 

サンフランシスコ人

「日本では観る機会はありません。」

サンフランシスコでは、日本人が知らない米国映画を上映します。
by サンフランシスコ人 (2011-07-19 04:50) 

denkihanabi

はじめまして。「ファントム・オブ・パラダイス」とデ・パルマが好きだなんて素晴らしい。「悪魔のシスター」から「愛のメモリー」までっていう限定もグッドです。70年代半ばのデ・パルマは愛と憎しみを吐き出しまくる感じが最高ですね。
by denkihanabi (2012-05-04 01:56) 

fujiki

dennkihanabi さんへ
コメントありがとうございます。
同好の士のようで、
大変嬉しいです。
あのうねるような感情の波が、
素晴らしいですね。
by fujiki (2012-05-06 16:47) 

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