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おたふくワクチンの無菌性髄膜炎発症確率を考える [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

先日の新聞の医療のQ&Aに、
次のような記載がありました。

(記事は実際のものですが、
新聞の名称やお答えになった先生のお名前などは、
記載しません。
本記事の目的は個別の記事への批判ではなく、
もっと一般的なワクチンの安全性についての問題点にあるからです。
その点はご配慮の上、
お読み頂ければ幸いです)

ご質問をされたのは、
3人の娘さんを持つお母さんで、
20歳になったお子さんが、
まだおたふくに罹ったことがなく、
大人になっておたふくに罹ると、
大変だと聞き心配だ、
どう考えたら良いだろうか、
というものでした。
取り上げたいのは、
そのご質問に対する、
専門の先生のお答えの文章です。

以下、ちょっと引用します。

【(おたふくの)予防には、ワクチン接種が有効です。国内では任意接種のため接種率が低いのが現状です。もし、接種していないのであれば、接種を検討してみてください。大人でも接種は可能です。】
【おたふく風邪ワクチンを接種すると、約1万人に1人の割合で無菌性髄膜炎の副反応が見られます。ただ、自然感染でこの病気にかかる割合は約10%で、それに比べれば、ワクチン接種によるものは、はるかに低く、また、治りやすいです。】

僕が主に取り上げたいのは、
その後半の記載です。

おたふく風邪ワクチンには無菌性髄膜炎の副反応がありますが、
その発症率は1万人に1人であるのに対して、
自然感染では10%、
すなわち自然感染では10人に1人なる病気が、
ワクチンではその1000分の1の1万人に1人発生する、
つまりワクチンは安全で打った方が良いですよ、
というのが書かれた先生の言わんとするところではないかと思います。

ただ、この記載は疑問です。

まず、おたふく風邪ワクチンの接種により、
無菌性髄膜炎の副反応が起こる確率は、
本当に1万人に1人なのか、
ということです。

僕の手元に幾つかの資料があります。

まず、北里研究所の製造による、
おたふく風邪ワクチンの添付文書の記載です。

おたふく風邪のワクチンは、
現行北里研究所製と化血研製、そして武田による3種類が流通していますが、
それぞれ元になっているワクチン株が異なります。

北里製のワクチンの添付文書には、
無菌性髄膜炎の発症率は、
2300接種当たり1例という報告がある、
という記載があります。

これは厚労省研究班の2007年の報告書によるものですが、
より正確には2282例中1例です。

一方化血研のワクチンでは3379接種当たり1例、
そして武田のワクチンでは1570接種当たり1例です。

つまり、このデータを見る限り、
無菌性髄膜炎の発症率は1500~3000接種に1例で、
1万接種に1例とは、
かなりの開きがあります。

要するに1万人当たり3人~6人程度は発症しているのです。

平成22年7月7日版の「おたふくかぜワクチンに関するファクトシート」にも、
それに準拠した記載が見られます。

それを何故1万人に1人程度と書いているのでしょうか?

唯一それに近い数字が出ているのは、
僕の手元の資料の中では、
北里研究所の調査です。

これは1994年~2006年において、
市販後調査による副反応の頻度を集計したもので、
この間の報告数が162例。
出荷数は全体で203万接種分です。

つまりこの結果だけを見ると、
無菌性髄膜炎の発症率は、
1万接種に1例より、
少し少ないくらい、
ということになります。

しかし、これはあくまで市販後調査ですから、
主治医等から届け出のあった事例のみを、
集計した数値です。
一方で出荷数はトータルの数値です。

実際には届出の事例だけが副反応の数、
ということは有り得ないので、
162例は氷山の一角、というのは言い過ぎかも知れませんが、
これより多い件数が存在することは間違いがないのです。

従って、この162を203万で割るような計算をすることは、
非科学的で無意味なのです。

これまでにも何度か話題にしましたように、
海外のおたふく風邪ワクチンでは、
無菌性髄膜炎の発症率は極めて低く、
Jeryl Lynn 株というワクチン株を利用したワクチンでは、
その発症率は10万人に0~1人、
Leningrad-3 株を利用したワクチンでは1000万人に6人、
RIT-4385株を利用したワクチンでは150万接種を行なった時点で、
未だその発症はありません。

つまり、国産のワクチンは海外のワクチンより、
無菌性髄膜炎の発症率は数十倍は高いのです。

しかも、そのメカニズムは不明です。

1989年に新三種混合ワクチンと称するワクチンが、
華々しく導入され、
数年で無菌性髄膜炎の発症のために、
その接種は中止となりました。
その原因が阪大微研のおたふくワクチンにあったのですが、
そのメカニズムも不明のままで、
その時の発症率は少なく見積もって1200人に1人でした。

この当然語られるべき問題点が、
上記のQ&Aの記載には全く語られていません。

上記のQ&Aでは、
あたかも国の無策で、
おたふくワクチンが任意接種になったため、
接種者が減って問題のような記載に思えますが、
実際には定期接種が数年で中止になったのは、
無菌性髄膜炎の副反応が多発して問題になったためで、
その原因が不明のため任意接種になったのです。

問題になったワクチン株は現在使用されていませんが、
他のワクチン株を使用した国産ワクチンにおいても、
例数は減ったものの無菌性髄膜炎の報告は、
今も続いているのです。

次に比較されている自然感染の場合の、
無菌性髄膜炎の発症率です。

これを上記のQ&Aの先生は約10%と書かれています。

実際にはこの数字にはかなりの幅があります。

前述のファクトシートの記載では、
自然感染の発症率は1~10%と書かれています。

一方で2007年の厚労省研究班の報告での自然感染の対照群では、
その発症は80人に1人の比率であった、
と書かれています。
これは1.25%です。

つまり上記のQ&Aの文章は、
ワクチンの副反応の発症率に関しては、
最も少なく見積もった数値を使用し、
自然感染の発症率に関しては、
最も多く見積もった数値を使用しています。

確かに嘘ではないですが、
読者に誤った印象を与える、
意図的な偏向がある、ということは、
皆さんにもご理解頂けるのではないか、
と思います。

そもそも自然感染の場合には、
そのウイルスに接触しても、
全ての人がおたふくの症状を呈する訳ではありませんし、
ある程度その感染を防御することも可能です。
不顕性感染は3割程度はあると言われています。
その一方でワクチン接種というのは、
ある種強制的な感染であって、
感染率から言えば100%になるのですから、
自然感染での発症率と、
ワクチン接種での発症率とを、
同列で比較するような考え方は誤りなのです。

これは放射線の悪影響なんてタバコの害に比べれば問題ないよ、
とか、
日本人の半数は癌で死ぬのだから、100mSvの被ばくをしても、
その死者の数が0.5%増えるだけだ、
というような言説と、
非常に似通った構造のレトリックが使用されていることに、
皆さんもお気付きになると思います。

統計など実際には色々な報告があるのですが、
それを平等に扱って結論を出すのではなく、
良いと思わせたい数値に関しては、
色々ある数値のうち最も良いものを意図的に使い、
悪いと思わせたい数値については、
今度は報告のある数値の中で、
最も悪い数値を使うのです。
その両者を比較すれば、
概ね意図する通りの印象を、
専門外の人に与えられる、
という仕掛けです。

これは座談の類であって、
実際には科学でも何でもないのですが、
1万人に1人に対して10人に1人、
のような数値を出すことで、
何となく科学的であるかのように思わせるところが、
僕にはちょっと公平性を欠くもののように思えるのです。

僕のおたふく風邪ワクチンに対する考え方は、
大人になってからの感染での睾丸炎や卵巣炎、
脳炎や難聴のリスクから考えれば、
有用性のあることは間違いがありませんが、
海外で報告のあまりない髄膜炎の発症が国産のワクチンにのみ多い、
という現状を考えると、
輸入ワクチンの安全性を確認した上で、
国産から変更するのが望ましいのではないか、
というものです。

今日はおたふくワクチンの副反応についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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katz

おはようございます。
いつも有用なお話、ありがとうございます。
受け売りですが
国内のワクチンのほうが抗体獲得率よいとらしいです。
諸外国のように定期でほぼ全員に接種している国と、
接種率が高々30%ほどの国とでは状況も違うのかとそのとき思いました。
全員接種で2回になれば海外型のほうがよいのでしょうね。
ご存知の話であれば失礼いたしました。
by katz (2011-07-15 09:04) 

名無し

放射性物質や、癌で死ぬリスク、発ガンリスクなどを検索していたら辿り着きました。
きちんと根拠が書かれていてとても勉強になる面白いブログですね。情報の読み方にも役に立っています あとで全て読ませてもらいます。

しかし調査によってここまで違うとは。だいたい同じようなもんだと思っていたので私のような一般人には衝撃的です。明らかに騙す意図があるのでしょう。

それに健康に関係なく恣意的にワクチンを打たせるようにしたり、打たせないようにできるとなると本当に問題です。一体何のための調査でしょうか。ワクチン打って病気になって。なんかきな臭いですね。

個人的な心配ですが、私ははしかにも、おたふくにも罹ったことないけれど大丈夫かな。
インフルエンザもインフルワクチンを接種した友達がよくインフルに罹ってて、インフルワクチンを全く接種したことがない私と他の友達は全く罹ったことがないのです。
でもワクチンを打った友達は「ワクチンのおかげで軽く済んだ」と言いますが、その子は確か毎年打ってるはずで、キツさなど比べようがないのです。なぜか↑の文が常套句になってるような気がします

私はインフルワクチンを接種した人のインフル罹患率と、接種してない人のインフル罹患率に非常に興味があります。是非、利害関係のない中立した機関に調査していただきたい内容です。
by 名無し (2011-07-16 00:41) 

fujiki

katz さんへ
コメントありがとうございます。
国内のワクチンの効果が高い、
という話は、
僕は経験的には疑問に思っています。
看護学生の方の実習前には、
ウイルス感染の抗体価を測って、
陰性であればワクチンを打ってその効果を見るのですが、
B型肝炎は概ね100%陽転して、
麻疹のワクチンも9割以上は陽転しますが、
おたふくに関しては、
自験例では5割程度しか抗体が上昇せず、
上昇した事例でもその上昇の程度は低いのです。
陰性の場合は再度の接種を行なうケースもありますが、
それでも効果はあまり変わりません。
ワクチン株によっても差があるのかも知れませんが、
その効果が公表されている通りとは、
僕にはどうしても思えないのです。
by fujiki (2011-07-16 08:18) 

fujiki

名無しさんへ
コメントありがとうございます。
ワクチンは結構大きな産業で、
現在細胞培養のワクチンを導入して、
その産業の規模を、
拡大したいという意向が、
なかば国策となっているのです。
「ワクチンは安全」というのは、
その理屈の面でも専門家の主張の仕方の面でも、
「原子力は安全」というのと、
非常に似通った部分があると思います。
ただ、勿論ワクチンには多くの有用性があり、
それを否定するものではありません。
by fujiki (2011-07-16 08:22) 

omizo

おたふく風邪には、永久難聴を合併するという問題があります。 この後遺症で苦しんでいる人は多くいますし。 死もしくは重篤な後遺症だけをというのもやはり問題でしょうし。言われるようにHMVの抗体陽転率は5割ぐらいになると思われてますが。だから接種しなくてよいとはならないと思いますが。
by omizo (2011-07-26 23:13) 

fujiki

omizo さんへ
貴重なご意見ありがとうございました。
omizo さんにも真意をご理解頂けるような、
そうした記事の書けるように、
僕なりに努力したいと思います。
by fujiki (2011-07-27 06:11) 

bloom

以前にもコメントさせて戴いたことがありますが、こちらの記事には気付きませんでした。

私の娘はムンプス難聴で片耳を失聴しています。
http://blogs.yahoo.co.jp/bloom_komichi/65333025.html

ワクチン接種は自然感染の合併症と、予防接種の副反応で決めるべきなので、セールス用のデータと医療現場の方が実感しているデータのズレについて問題にすることは有用だと考えています。

疫学調査は十分な母数が無いと推定が難しい面があるので、論文のデータもばらつきが大きいですが、ワクチンによる髄膜炎が自然感染を上回るという報告は見たことがないです。

Nagai et al., 2007 だと
The incidence of aseptic meningitis was 13/1051 (1.24%)
in patients with symptomatic natural mumps infection and was estimated to be 0.7–1.1% of overall infection in considering asymptomatic
infection, and 10/21,465 (0.05%) in vaccine recipients.
・・となっているので、国内に出回っている株全体で1万人に5人という見積もりなので、確かにこの記事と合っていますね。

しかし自然感染だと1万人に100人なので、やはり国産であってもワクチンは有効ではないかと考えています。
もちろん株の改善、製造法の改善は必要ですので、私達も医療関係者も意見を出し続けることが必要だと思います。
ただ、海外のワクチン株の副反応もメーカーの意向を汲んだデータであるとか、海外の医療制度が未整備のために副反応があっても受診しない人が多い・・など、国内のデータを見る時と同様の注意が必要なので、文献を教えて戴けると助かります。

それから、

>日本人の半数は癌で死ぬのだから、100mSvの被ばくをしても、その死者の数が0.5%増えるだけだ、というような言説と、
非常に似通った構造のレトリックが使用されている

これは論理的に無理があると思います。
この言説は「癌を起こす要因は放射線の他に化学物質など色々あるので、多数のリスクの中の一つが微妙に変動することより別のリスクを気にする方が良いのでは?」という主旨ですよね。
これと「難聴を起こす要因はストレスなども色々ありますが、ワクチンを接種しない場合は感染時に1/1000の確率で難聴が起きるという大きなリスクが上乗せされます」は一緒に出来ないということです。
by bloom (2011-12-18 21:12) 

fujiki

bloom さんへ
貴重なご指摘ありがとうございます。
そうですね。
放射線との比較の件は、
強引で不出来なたとえだと思います。
当時は被曝の問題に対する、
僕なりの苛立ちがあり、
やや混同した強引な記述になっていることを、
お許し下さい。

国産ムンプスワクチンについては、
MMRワクチンの接種中止の問題が、
ムンプスワクチンを原因として特定しながら、
明確にはそのメカニズムが判明していないなど、
多くの問題があり、
診療所の成績では、
その抗体の陽転率も極めて低いなど、
個人的にはワクチンとして、
推奨出来る水準には達していないのでは、
という考えを持っています。

海外ワクチンの副反応の比率については、
感染研の方の書いた文書の幾つかの記載を、
元にしています。
元文献には当たっていません。
by fujiki (2011-12-18 23:06) 

bloom

お返事有り難うございます。

>明確にはそのメカニズムが判明していないなど

MMRワクチンは占部株に問題が多発したと私は聞いているのですが、他の要因も大きいいですか?
私の医者の知人は「A社はワクチンの質が悪いことが多いので、B社を取り寄せるこどが多い」などと言っていたので、株と製造方法に起因する問題ではないかと考えていました。

副反応の比率に関してですが、
新型(豚)インフルエンザ騒動で、海外の疫学データの論文をいくつか読んでみて、致死率を推定するにはその国の医療事情も考慮すべきだと気付いた経験があります。
例えば致死率 0.4% などの論文は、母集団の大きさが十分でなかったり、死因が本当にインフルエンザなのか?という点が十分に検討されていませんでした。
さらに問題を大きくしたのは、日本以外の国では(欧米でも)「よほど具合が悪くならないと病院に行かない(病院も受け入れない)という背景がありました。
ですから病院に来た人を分母にすると異常に致死率が高くなってしまいます。

ですから海外のワクチン株の副反応の低さも、知識が足りなくて合併症に気付かないとか、軽度の合併症はカウントされない・・という可能性は考えておく必要はあると思います。
by bloom (2011-12-19 22:49) 

fujiki

bloom さんへ
コメントありがとうございます。
占部株単独で、
他の株と比較した試験では、
むしろ占部株に殆ど脳炎の発症がなく、
他の株由来のワクチンで、
発症が多かった、という結果で、
その結果に疑義を呈する意見もあり、
それでは何故MMRで発症が多かったのだ、
という疑問の答えは、
まだ得られていないと思います。
感染症研究所の方の書いたものも、
その点については奥歯に物が挟まったような、
すっきりしない説明になっています。

これも感染研の方の発言だったと思いますが、
「日本のワクチンは効果は強いけれど、
脳炎の発症は多く、
効果は弱いけれど脳炎の発症の少ない海外のワクチンと、
どちらを選択するかは難しい問題だ」
という趣旨の発言もあったと記憶しています。
(何かの審議会でのことだったと思います)

bloomさんの言われるように、
海外での副反応の比率を、
日本での比率と、
単純に比較は出来ないと僕も思います。
ただ、臨床試験自体は、
日本より厳密に行なわれていることは確かで、
たとえば150万接種で全く発症の報告のないワクチンと、
毎年間違いなく発症の報告はある日本のワクチンとは、
矢張りそのリスクには違いがあると、
僕は思います。

bloom さんのようにバランスの取れたお考えの方ばかりだといいのですが、
ワクチンについては、
色々な立場に固執され、
お怒りになる方が多く、
自由に書くことは非常に難しい、
というのが今の実感です。
by fujiki (2011-12-20 08:57) 

bloom

>他の株と比較した試験では、むしろ占部株に殆ど脳炎の発症がなく、他の株由来のワクチンで、発症が多かった、という結果

この資料はどこで見ることが出来ますか?
インフルエンザ騒動で痛感したのですが、疫学調査の論文などの一次情報を読み込むことが、このような問題について議論する上では有効だと考えています。

自分の立場や感情に固執することより、どの道を選ぶとより多くの人を救えるのか?を追求することが科学者として求められる資質ですし、私が娘のために出来ることだと考えています。

そこまで頑張っても聴力は戻らないのですが・・
医療関係者も一般人も片耳失聴を軽く考えている方が多いように感じますが、私のブログや「ムンプス難聴のお部屋」をご覧になって戴ければ分かるように、かなり不便を感じている方が多いです。

http://www.geocities.jp/mumps_deafness/
by bloom (2011-12-21 06:32) 

fujiki

bloom さんへ
これは2007年の「小児科臨床」にあった、
北里研の方の書かれた「MMRワクチン」
という記事にある表で見ました。
引用文献の記載がなく、
一次資料ではありません。
占部株単独では18686例に1例の発症率で、
星野株では1883例に1例、
鳥居株が1212例に1例。
問題になったMMR統一株では、
634例に1例の頻度となっています。
(いずれも1991年~93年の全国モニタリング)
この文献での説明は、
占部株でも若干継代歴が違うので、
別個の結果が出たのではないか、
というものです。
ただ、当時のワクチン行政に批判的な方の意見では、
特定のワクチンメーカーで、
何かデータ操作があったのではないか、
という「陰謀説」もあります。
これは占部株単独の発症率が、
他の国産ワクチンと比して、
あまりに低く、
それでいて製造は中止になっているのですから、
「陰謀」とまでは言えませんが、
何か釈然としないデータではあります。

勿論この時期の調査は、
髄膜炎の発症に対して、
非常に敏感だった時期であり、
そのためのバイアスがあると思いますが、
それにしてもワクチンとしては、
1000例に1例の髄膜炎というのは、
どう考えても多過ぎると思います。

たとえば、
ロタウイルスのワクチンは、
1万人に1例程度の発症の、
腸重積の副反応のために、
製造が中止されている訳で、
ワクチンに求められる安全性は、
そのレベルのものでなくてはならない、
と僕は思います。
by fujiki (2011-12-21 21:20) 

bloom

fujiki 先生、情報有り難うございます。
過去のMMRの副反応の頻度に関する情報は色々と読んでいるのですが、一次情報が示していないものが多く、解釈もバラついているので混乱しますね。

以下は omizo さんに教えて戴いたのですが、また違った解釈になっていますね。
www.tomita-pharma.co.jp/members/pdf_ajisai/ajisai2-5.pdf

1000人に1人の髄膜炎では、重症化度が同じなら、自然感染の100人に1人よりややマシという程度なので、ワクチンのメリットが感じられないとは思います。

ただ、難聴は認定が3人なので当時から自然感染よりかなり低いようです。
http://www.ne.jp/asahi/kr/hr/mmr/mmr_higai.htm

Nagai 論文ではワクチンを接種した 21,465 サンプルでは難聴は出ていないそうです。

生ワクチンは副反応がゼロには出来ないのですが(不活化ワクチンの場合は免疫反応だけ注意すれば良いので)、ご指摘の通りワクチンの改善ですし、海外製のものが優れていれば導入を検討する必要もあると思います。

しかし記事の主張に戻ると、現在日本で流通しているおたふく風邪ワクチンに関しては接種のメリットの方が大きいのではないでしょうか。
by bloom (2011-12-26 07:48) 

ぽー

先生、こんにちは。
いつも勉強になる記事をありがとうございます。
もうすぐ一歳になる息子の、おたふく予防接種回数を調べていたとこ
ろ、こちらの記事を見つけました。
何も知らずに予防接種をうけるところでした。
考えさせられます…。
いろいろ調べたのですが、海外製のおたふく単独の予防接種は見つけ
ることができませんでした。
そこで、ご存知でしたら教えていただきたいのですが、海外渡航者用
のトラベルクリニックなどでは海外製のMMR予防接種の取り扱いがあるようですが、もしそれが接種可能であれば、日本のおたふく予防接種より安全性は高いということでしょうか?
先生でしたら日本のMRワクチン+おたふくワクチン、輸入MMRワクチン
どちらを接種すべきだとお考えですか?
また、Jeryl-Lynn 株のおたふく予防接種をうけれる方法をご存知
でしょうか?
お答えづらい質問ですみません。
お答えできる範囲で教えていただけますと幸いです。

日本のワクチン事情、発展途上もほどほどにしてほしいものです。
by ぽー (2012-09-08 17:22) 

fujiki

ぽーさんへ
データのみを見ると、
海外のMMRワクチンを打って頂く方が、
効果も高く副反応も少ないように思います。
ただ、これは日本で臨床試験をしているものではないので、
何とも言えない部分があります。
万一重篤な副反応の出た場合の、
補償の問題を考えますと、
僕は現状ではなるべく、
日本で検定されたワクチンを、
使用して頂くのが良いのではないか、
という立場です。
確かに単独のおたふくのワクチンは、
海外ではあまり流通していないかも知れません。

診療所ではおたふくワクチンについては、
そのリスクとメリットをご説明の上、
やや消極的な推奨という形で、
国産ワクチンを、
強くご希望される方には接種しているのが、
実状です。

あまりお答えになっていないかも知れませんが、
今言えることは以上です。
by fujiki (2012-09-10 10:55) 

ぽー

先生、お返事ありがとうございます。
海外のMMRですが、なかなか接種出来る所がなさそうです。
(関西に住んでいます)
先生の意見を参考に、接種についてもう一度考えたいと
思います。
お忙しいところ、本当にありがとうございました。

これからもいろんな情報の発信をお願いします。

by ぽー (2012-09-12 00:09) 

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