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放射性ヨードの乳汁移行についての補足 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後はレセプトを突貫でやるつもりです。
終わるかな…

それでは今日の話題です。

今日は放射性ヨードの乳汁中移行について、
以前の記事に補足する内容です。
お子さんに授乳をされているお母さんには、
役に立つ知識だと思います。
多分他所にはあまり書いてはありません。

ポピヨンヨード、所謂イソジンの、
添付文書に次のような記載があります。

授乳をされているお母さんが、
産婦人科用のイソジンのクリームを使用し、
その後の血液のヨードの濃度をモニターしたところ、
イソジン使用後6時間をピークに、
血液のヨードの濃度は上昇し、
総ヨードで最高濃度は167μg/dl に達し、
48時間後に前値に復した、と記載されています。
日本人の母乳中のヨード含有量は、
3.3~700μg/dl である、
という追記もあります。

この意味合いをちょっと考えてみましょう。

まず、167μg/dl という乳汁中の濃度ですが、
これは結構な高濃度です。

通常大人で1日に必要なヨードの量は、
概ね200μg程度と考えられています。
この濃度の母乳を赤ちゃんが飲めば、
100mlで大人の1日の必要量のヨードが、
身体に入る、という計算になります。

日本人の母乳中ヨードのデータは、
その幅が有り過ぎて何とも言えませんが、
仮にここに書かれている上限量で考えると、
1日1リットルの母乳を飲めば、
7㎎のヨードがお子さんの身体に入ることになり、
これはヨードブロックに匹敵する高用量です。

イソジンのクリームを塗れば、
粘膜面からヨードが吸収され、
血液に入ります。

母乳へのヨードの移行は、
概ねお母さんのヨード内服量の、
4分の1程度を超えない、
というのが日本産婦人科学会の公式見解です。
この見解の根拠となったデータは、
公表されていないので分かりませんが、
今日お示しした添付文書の記載から考えると、
この見解は必ずしも正しいものではない、
ということが分かります。

比較的大量のヨードが、
お母さんの身体に入ると、
身体はその過剰なヨードを、
排泄しようとします。
そのため、乳汁中にも比較的高濃度のヨードが、
一時的には排泄されると考えられます。

従って、たとえばお母さんが、
放射性ヨードの内部被曝を受けたような場合には、
その後半日程度はかなり高濃度の放射性ヨードが、
乳汁中に分泌される可能性があり、
授乳は控えるのが賢明と考えられます。

掲示板などを見ると、
ヨード剤を常時飲まれているような方がいて、
一部には僕の記事が呼び水になったような記載もあり、
非常に責任を感じるのですが、
強調したいことは、
現時点でヨード剤を飲む必要性は全くない、
と言うことです。

ヨードの欠乏は良くありませんから、
少し海草類を多めに摂ることは構わないのです。
甲状腺のヨードの取り込みが減るので、
そのことによる若干の効果は期待出来ます。

ただ、1日5mg以上のヨードを摂取することは、
明らかに過剰で、
その時の甲状腺の働きと、
その刺激のされ方により、
機能低下になる場合もあり、
逆に機能亢進が惹起される場合もあります。

つまり、大量のヨードで、
甲状腺をブロックするのは、
単回かごく短期間に留めるべきなのです。

そのためにはイソジンを飲んだり、
ルゴールを舐めたりするのは、
明らかに過剰です。

その点は繰り返しになりますが、
充分ご注意を頂きたいと思います。

それでは今日のまとめです。

ある程度の量のヨードが体内に入ると、
それは数時間以内には乳汁中にも移行します。
ただ、その移行は概ね48時間以内には終息するので、
放射性ヨードの被曝が疑われるようなケースでは、
少なくとも48時間以内の授乳はリスクが高いと考えられます。

授乳をされる方は、
1つのご参考にされて下さい。

新聞の記事を見てびっくりしましたが、
水素爆発後の22日頃には、
結構物凄い量の放射性ヨードが、
一時的には東京にも飛散しています。
当然皆被曝はしている訳で、
問題は誰を守るべきかと言うことと、
何を守るべきかと言うことです。
行政はおそらく、
「すぐに死ななければそれは害ではない」
と腹を括ったと僕は思うので、
個々の人間が、
それ以外の部分については、
各自の責任で考えるしかないような気がします。

現状は原発の情報を注視し、
多くの放射能が飛散するような事態が生じれば、
その後の風向きと降雨などの状況から、
リスクの高い時期は極力被曝を受けないように、
各自留意する必要があると思います。

おそらく状況が更に長期化するようなら、
そうした放射能予測のビジネスが成立し、
それをデマとして規制したり、
処罰するぞと圧力を加えたりするような力は、
権力の側にはなくなって行くのではないかと思います。
嫌な予想ですが、
御用学者や「放射線安全教(僕の勝手な命名です)」の信者の皆さんは、
そうした企業に就職し、
その専門知識を活用して、
生き延びるのではないでしょうか。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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万燈

母乳の放射性ヨウ素のデータです。(検査は三月中に行われています)

検体の採取地 A:つくば市 B:つくばみらい市 C:守谷市 
放射性ヨウ素 A:8.7Bq/kg B:不検出  C:31.8Bq/kg
セシウム134・137 いずれも不検出

この調査をされた方は福島県のお母様方にも協力を呼びかけていらっしゃいました。今はもっと詳細なデータをお持ちかもしれません。
「食と環境の未来ネット」と母乳を絡めて検索してみてください。

私は東海地方に住んでいますが、内部被曝からは逃れられないでしょうし、母乳は早めに止めた方がよさそうですね。
食の安全が守られているとは言い難いので、母乳と水道水・粉ミルクどちらが安全なのか判断がつかなくて迷うところなのですが…安全なミルクが手に入ればそちらへ移行することにします。
by 万燈 (2011-04-06 15:35) 

fujiki

万燈さんへ
さっそくありがとうございました。
ただ、量の換算は僕の手には余る感じです。
また情報があれば、
ご教授頂ければ幸いです。
by fujiki (2011-04-07 08:20) 

takeshi6925

貴重な情報ありがとうございます。
ところで、世田谷区の大気中の放射能濃度が、東京都のページ
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/whats-new/measurement.html
から見られます。22日も高いほうですが、例えば15日などは桁違いに高く、I131で最高241Bq/m3とあります。資料から拾った呼吸率で内部被ばく量を算出し、同日の放射線量が最高0.8マイクロSv/hと比較すると、この時間帯、甲状腺に関しては、ヨウドの内部被ばくによる影響は外部被ばくの影響の数十倍あったことになります。
(これでも、1年間この状態が続くといやだなぁという程度の被ばく量にしかならないですが。)
by takeshi6925 (2011-04-08 17:01) 

fujiki

takeshi6925 さんへ
コメントおよび貴重な情報ありがとうございます。
ともかく一刻も早い終息を願いたいのですが…
by fujiki (2011-04-09 08:30) 

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