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ある研究者のメッセージ [フィクション]

以下の内容は全くのフィクションであり、
原発事故自体は事実を元にしていますが、
特定の実際の人物と関わりのあるものではありません。
そのことは充分ご理解の上お読み下さい。

「今回の震災で被害に遭われた皆さん、
心よりお見舞いを申し上げます。
それから、福島の原子力発電所の事故以降、
避難指示で不自由な生活を余儀なくされている皆さん、
そして、放射能による被曝に、
本当に自分達の生活は安全なのかと、
日々不安に思われている皆さん、
特にご妊娠をされている方と、
小さなお子さんをお持ちの保護者の皆さん、
本当に心より心よりお見舞いを申し上げます。

私は人文科学の研究者です。
色々と私のことを、
あいつは研究より芸能活動や金儲けの方が本業なのだ、
などと揶揄する方がいることは承知しています。
しかし、研究のためにはお金が必要なのです。
私はそうした批判に対しては、
私自身の研究成果を、
見て頂きご判断頂くしかないと思っています。
私なりに、
私は研究者としての矜持を持って、
生きて来たつもりですし、
もうそれほど残された研究生活が長いとは思いませんが、
それでも後進の育成を含めて、
残された人生において、
出来る限りのことはしたいと思っています。
その気持ちに偽りはありません。

東京電力と私との関係に、
癒着があるようなことを言う方もいますが、
もとよりそうしたこともありません。

オファーを受けた仕事の1つとして、
割り切って適正なお金を頂き、
私なりに誠実にその仕事をこなしたつもりです。

水力、火力、原子力と、
バランスを取って日本の電気を安定して供給することが、
日本という国の電気事情から考えて、
また二酸化炭素の排出を含む環境への影響から考えて、
最善の方法だと言った私の言葉は、
勿論東京電力の指示の元に書かれた言葉です。
しかし、それがテレビを通じて、
多くのご家庭に流れたことは、
それが私自身の言葉であると、
皆さんが思われても、
それは仕方のないことだと思います。

私はそれは言わされた言葉なのだと、
逃げることも出来ます。
しかし、私はそうはしたくはありません。
あれは私の言葉です。
私自身、そのことを信じています。
そして、その範囲において、
私はその言葉に責任を持つべきだと考えました。

日本に原子力発電は必要だと、
今でも私は基本的にはそう思います。

しかし、今こうした未曾有の大惨事が起こり、
かつまた進行中であることを考えると、
その安全性についての私の認識は、
非常に甘いものであったと言わざるを得ません。

原発の安全性と、
その高度な対策の数々については、
私自身も仕事を引き受けるに当たり、
勉強させて頂きましたし、
東京電力の方からも、
微に入り細に入り説明を受けました。

私はその説明に納得し、
これだけの安全基準が設けられ、
対策が講じられているのだから、
原子力の安全性は確保されている、
と理解しました。

分野は違いますが、
専門の研究者として、
東京電力の社員及び付属する研究機関、行政の研究者の皆さんが、
本当に真摯に原発の安全性を考え、
日々研鑽を積み努力をして、
その技術の結晶として今日があることは、
私は彼らに代わって声を大にして申し上げたいと思う。
罵倒に耐え、原発事故を必死で収束させようと努力している彼らを見る時、
私はたとえ多くの非難を浴びることになっても、
そのことだけは言いたいと思います。

ただ…

100%の安全などこの世の中にはない。
研究者なら当たり前のその事実を、
私は矢張り原発に関しては軽んじていたのではないかと思うのです。
常に最悪の事態を想定し、
僅かでもそうしたことが有り得るならば、
それが天文学的に低い確率であっても、
その時の対策も講じておくべきだ。
それが足りなかった。
そう思うのです。

私はその私の考えの甘さを、
最悪の事態を何となく頭から排除していたことなかれ主義を、
心から反省し謝罪したいと思い、
今日この場を用意して頂きました。

本当に申し訳ありませんでした。
私の考えが足らなかったのです。
本当に本当に申し訳ありませんでした。

こうして私が公の場で謝罪することを、
不愉快に思ったり非難したりする意見があることも、
私は当然承知はしています。

お前などが謝ったところでどうなるんだ。
それくらいなら、
原発に行って自分で放射能に塗れた水でも汲み出してみろ、
全ての私財を投げ打って全てを被災地に寄付したらどうだ、
等々と…

私はそう言われる皆さんの気持ちも分かる。
ただ、皆さんと同じように私にも生活がある。
家族もいる。
ささやかな希望もある。
私はそれを守りたいと思う。

テレビ局の方からはこんなアドバイスも受けた。
それはまずいですよ。
そんなことが前例になったら、
企業のCMに出ている芸能人は、
何か不祥事があったら、
その度に謝罪しなければならなくなる、
それじゃやってられませんよ、
いいですよ、先生は東京電力の社員じゃないんだから、
ただ頼まれてCMに出ただけなんですから、
そのことは一般の方も充分承知していますよ。

本当にそうだろうか?

私は今の本音を言えば、
東京電力のCMに関わった全ての人は、
芸能人からスタッフ制作会社を含めて、
全て一度は謝罪するべきだと思う。

ただ、そうは言うまい。

私はそうした業界の皆さんの苦労も分かる。
私は学者でもある。
CMは一種の余技なのだから、
本業の方とは考えが違っても良い筈だ。

まずは謝罪だけさせて欲しい。

繰り返しになりますが、
本当に申し訳ありませんでした。
心より謝罪致します。

このことの責任を今後どう取るのかと言う点については、
今はまだ気持ちがまとまっていないのです。
ただ、研究者の端くれとして、
少しでも皆さんのご不安を軽く出来るように、
自分の分を守りながら、
出来ることを探し、実行してゆきたいと思っています。

私の話はこれで終わりです。
最後までお聞き頂きありがとうございました」

こんなことを言ってくれたらいいのにね…
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コメント 11

midori

ヒゲの人を想像しますが、気の強そうな女の人も浮かびますね。
by midori (2011-03-31 09:58) 

ルート3

あなたの口から、原発の話はもう聞きたくない。
お説教はもうたくさん!


by ルート3 (2011-03-31 12:25) 

無名


誰かが成さなければならない明確な指摘を、先生はされているだけです。説教とは別物です!
by 無名 (2011-03-31 14:21) 

仲介人


確かに「お説教」はひどいですが、こういう時だからこそ
あえて話題を変えるのもアリかなと・・・
原発って単語を聞きたくない気持ちはすごくわかります
by 仲介人 (2011-03-31 16:30) 

匿名

無名さん、
ブスな学級委員みたいな助太刀、
かえって滑稽ですよ
by 匿名 (2011-03-31 17:06) 

fujiki

midori さんへ
コメントありがとうございます。
フィクションなので、
似ていてもモデルはないのです。
by fujiki (2011-03-31 21:52) 

fujiki

ルート3さんへ
ご不快に思われたら申し訳ありませんでした。
ルート3さんにも、
少しでも受け入れて頂けるような記事を書けるように、
僕なりに努力はしたいと思います。

くどいのと説教臭いのは、
年齢のせいなのかも知れません。
気を付けます。
by fujiki (2011-03-31 21:57) 

fujiki

無名さんへ
お気遣い頂き、
本当にありがとうございました。
何も出来ませんが、
本当に感謝しています。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2011-03-31 21:59) 

福島県南相馬郡民

被災後、はじめてパソコンをのぞきました。
初めてブログを読ませて頂きましたが、とても勉強になりました。
ただ、とても暗い気持ちになってきてしまったのは私だけでしょうか。
みんなが読むブログですから、あまり不安感を与えないように
行政批判をされる時は、気をつけていただきたいと思ってしまいました。
被災住民はメディアで震災を追体験しています。
これ以上、あたまでっかちな文章を垂れ流さないで下さい。
by 福島県南相馬郡民 (2011-03-31 22:37) 

yuuri37

先生、今日息子の大好きなボルビックを4本ゲットしました。
母は、頑張ってます^^V
by yuuri37 (2011-03-31 22:42) 

fujiki

yuuris37さんへ
コメントありがとうございます。
良かったですね。
母は強い、と僕も思います。
by fujiki (2011-04-01 06:27) 

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