母乳に放射性ヨードは移行するのか? [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
日本人のメンタリティの特殊性についてとか、
また書いたら怒られるようなことを色々と考えていたら、
昨日も眠れませんでした。
馬鹿だよね。
そんなことを僕が考えたって、
何の意味もないし何の役にも立たないのにね。
でも、診療はしっかりやりますから、
ご心配はされずにお出で下さい。
多分テンションは生涯で一番高いので、
しばらくはこのままで大丈夫です。
チラージンSの品薄の話に関して、
上からファックスが来ていて、
25日から工場の操業も再開されたようです。
予断は許しませんが、
もう1か月くらい粘れば、
品薄は解消の見込みのようです。
お飲みの方はご心配はされないで下さい。
それでは今日の話題です。
今日は時々取り上げられている、
お母さんが放射性ヨードを摂取した時、
お子さんへの授乳で、
お子さんが放射性ヨードに被曝するのかどうか、
という点を考えます。
この疑問については、
専門家と呼ばれる方々の意見も、
やや混乱している印象があります。
まず、某国立大学のサイトで、
放射線被曝などに詳しい専門家のQ&Aというものが、
公開されていますが、
そこに書かれている記載によると、
一般論としてお母さんが身体に取り込んだ、
放射性物質は、
そのごく一部は母乳に移行するけれど、
現在言われているような濃度では、
その影響は無視して構わない、
大量を長期間摂らなければ問題ないのだから、
という趣旨のことが書かれています。
これは放射性ヨードに限った話ではありませんが、
これを読めば、
そうか心配ないのだな、
という気分にはなります。
ただ、いつものことですが、
ここには具体的な数値というものは、
全く示されてはいません。
実際にたとえば100ベクレルの放射性ヨード131を、
水などと一緒にお母さんが摂取すると、
そのうちのどれだけの分量が、
母乳中に移行するのでしょうか?
たとえば、お薬などの場合、
医者も結構怖いことをお母さんに言うことがあります。
一部の薬は濃縮されてお子さんに伝わるのだから、
なるべく授乳中は風邪薬などの服用も、
避けた方が良い、というような言い方です。
その伝でいけば、
お母さんの身体に吸収された放射性物質が、
濃縮されてお子さんに移行することも、
確実にないとは言えないのではないか、
と思ってしまいます。
この当たりについて、
もっと実証的なデータはないのでしょうか?
つまり、100ベクレルの放射性ヨード131をお母さんが摂取しても、
そのうちの1%しか母乳には移行しないから大丈夫ですよ、
という類のデータです。
これは調べることはそれほど難しくはないと思います。
ヨードの測定法は確立されているのですから、
母乳中のヨードを測れば良いのです。
しかし、どうもあまり明確なデータがありません。
日本産婦人科学会が、
最近そうしたことについてのQ&Aを出しました。
その中の記述では、
こう書かれています。
「母乳中に分泌される(出てくる)放射性活性を持ったヨウ素は母体が摂取した量の4分の1程度と推測されますが、確定的なことは分かっていません」
非常に自信なげな記述です。
どの文献なりどの研究に準拠しているのかも、
定かではありませんが、
まっとうな文献があるのなら、
もっと自信満々の記述になりそうですから、
どうもまともなデータはない、
と考えた方が良さそうです。
先日の新聞に元長崎大学教授の長瀧先生が、
コメントを発表されていて、
その中ではヨードの母乳への移行は殆どないので、
心配はいらない、とはっきり書かれていました。
長瀧先生は甲状腺学の大家で、
非常に優れた研究者ですが、
(先生エラそうな言い方をお許し下さい)
そのコメントに関しては、
多分お母さんのご不安に配慮して、
そういわれたのだと思いますが、
ちょっと正確とは言えないと思います。
理屈から考えて、
新生児も乳児も、
自分の身体で甲状腺ホルモンを造る必要があり、
そのためには原料のヨードが必要です。
従って、母乳にはあるレベルのヨードが、
当然含まれており、
それが甲状腺ホルモンの原料になるのです。
ただ、もしそのヨードが濃縮される性質のものなら、
お子さんはヨード剤を大量に飲んだのと同じ状態になり、
機能低下症になってしまいますから、
そうしたことは原理的になく、
母体より少量が、
移行すると考えるのが合理的です。
チェルノブイリの原発事故において、
乳幼児期の被曝で甲状腺癌がその後著増しましたが、
その主な原因は、
大気中から吸入したヨードではなく、
母乳からの被曝であったと考えられています。
母乳は毎日飲むものなので、
その放射性ヨードの量は少なくても、
長期間では大量の被曝を招く可能性があるのです。
従って、
どうも原発からの放射能漏れは、
長期に渡る可能性が高く、
放射能を気にしながら生活する状況は、
今後も長期間続くであろうことを、
決していたずらに恐怖を煽ることなく、
冷静に受け止める必要があるのだ、
という立場から考えると、
行政からの情報を注視しながら、
最小限の被曝に留めるように、
1人1人が注意するしかないのかも知れません。
具体的な被曝量の僕なりの提案は、
端的に言えば大人は国の基準に従えばそれで良いけれど、
ご妊娠されている方と乳幼児のお子さんに関しては、
(概ね4歳以下とお考え下さい)
極力不要な被曝量をゼロにする、
ということです。
よく、自然の放射線だって年間2mSvくらいはあるんだからさ、
というような言い方がありますが、
自然放射線とやり方によっては避け得る放射線とを、
混同して話すのは、
僕は良くないと思います。
ただ、ここで注意すべきなのは、
放射性ヨードの甲状腺への影響を議論する時、
その叩き台になる数字は、
預託実効線量ではなく、
甲状腺の等価線量である、
という事実です。
専門家のQ&Aでも、
僕の読む限りは、
敢えてその点は読む方が混同するように、
仕向けられているように僕には思えます。
つまり、一般に言われる癌が増える、
と言う時の被曝量は全身の実効線量のことですが、
100mSv で甲状腺癌の増える可能性が小児ではある、
と言う時の被曝量は、
実効線量ではなく甲状腺の等価線量のことなのです。
長くなりましたので、
その点については明日に続けます。
今日は良いニュースがありますように。
(社交辞令です)
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
日本人のメンタリティの特殊性についてとか、
また書いたら怒られるようなことを色々と考えていたら、
昨日も眠れませんでした。
馬鹿だよね。
そんなことを僕が考えたって、
何の意味もないし何の役にも立たないのにね。
でも、診療はしっかりやりますから、
ご心配はされずにお出で下さい。
多分テンションは生涯で一番高いので、
しばらくはこのままで大丈夫です。
チラージンSの品薄の話に関して、
上からファックスが来ていて、
25日から工場の操業も再開されたようです。
予断は許しませんが、
もう1か月くらい粘れば、
品薄は解消の見込みのようです。
お飲みの方はご心配はされないで下さい。
それでは今日の話題です。
今日は時々取り上げられている、
お母さんが放射性ヨードを摂取した時、
お子さんへの授乳で、
お子さんが放射性ヨードに被曝するのかどうか、
という点を考えます。
この疑問については、
専門家と呼ばれる方々の意見も、
やや混乱している印象があります。
まず、某国立大学のサイトで、
放射線被曝などに詳しい専門家のQ&Aというものが、
公開されていますが、
そこに書かれている記載によると、
一般論としてお母さんが身体に取り込んだ、
放射性物質は、
そのごく一部は母乳に移行するけれど、
現在言われているような濃度では、
その影響は無視して構わない、
大量を長期間摂らなければ問題ないのだから、
という趣旨のことが書かれています。
これは放射性ヨードに限った話ではありませんが、
これを読めば、
そうか心配ないのだな、
という気分にはなります。
ただ、いつものことですが、
ここには具体的な数値というものは、
全く示されてはいません。
実際にたとえば100ベクレルの放射性ヨード131を、
水などと一緒にお母さんが摂取すると、
そのうちのどれだけの分量が、
母乳中に移行するのでしょうか?
たとえば、お薬などの場合、
医者も結構怖いことをお母さんに言うことがあります。
一部の薬は濃縮されてお子さんに伝わるのだから、
なるべく授乳中は風邪薬などの服用も、
避けた方が良い、というような言い方です。
その伝でいけば、
お母さんの身体に吸収された放射性物質が、
濃縮されてお子さんに移行することも、
確実にないとは言えないのではないか、
と思ってしまいます。
この当たりについて、
もっと実証的なデータはないのでしょうか?
つまり、100ベクレルの放射性ヨード131をお母さんが摂取しても、
そのうちの1%しか母乳には移行しないから大丈夫ですよ、
という類のデータです。
これは調べることはそれほど難しくはないと思います。
ヨードの測定法は確立されているのですから、
母乳中のヨードを測れば良いのです。
しかし、どうもあまり明確なデータがありません。
日本産婦人科学会が、
最近そうしたことについてのQ&Aを出しました。
その中の記述では、
こう書かれています。
「母乳中に分泌される(出てくる)放射性活性を持ったヨウ素は母体が摂取した量の4分の1程度と推測されますが、確定的なことは分かっていません」
非常に自信なげな記述です。
どの文献なりどの研究に準拠しているのかも、
定かではありませんが、
まっとうな文献があるのなら、
もっと自信満々の記述になりそうですから、
どうもまともなデータはない、
と考えた方が良さそうです。
先日の新聞に元長崎大学教授の長瀧先生が、
コメントを発表されていて、
その中ではヨードの母乳への移行は殆どないので、
心配はいらない、とはっきり書かれていました。
長瀧先生は甲状腺学の大家で、
非常に優れた研究者ですが、
(先生エラそうな言い方をお許し下さい)
そのコメントに関しては、
多分お母さんのご不安に配慮して、
そういわれたのだと思いますが、
ちょっと正確とは言えないと思います。
理屈から考えて、
新生児も乳児も、
自分の身体で甲状腺ホルモンを造る必要があり、
そのためには原料のヨードが必要です。
従って、母乳にはあるレベルのヨードが、
当然含まれており、
それが甲状腺ホルモンの原料になるのです。
ただ、もしそのヨードが濃縮される性質のものなら、
お子さんはヨード剤を大量に飲んだのと同じ状態になり、
機能低下症になってしまいますから、
そうしたことは原理的になく、
母体より少量が、
移行すると考えるのが合理的です。
チェルノブイリの原発事故において、
乳幼児期の被曝で甲状腺癌がその後著増しましたが、
その主な原因は、
大気中から吸入したヨードではなく、
母乳からの被曝であったと考えられています。
母乳は毎日飲むものなので、
その放射性ヨードの量は少なくても、
長期間では大量の被曝を招く可能性があるのです。
従って、
どうも原発からの放射能漏れは、
長期に渡る可能性が高く、
放射能を気にしながら生活する状況は、
今後も長期間続くであろうことを、
決していたずらに恐怖を煽ることなく、
冷静に受け止める必要があるのだ、
という立場から考えると、
行政からの情報を注視しながら、
最小限の被曝に留めるように、
1人1人が注意するしかないのかも知れません。
具体的な被曝量の僕なりの提案は、
端的に言えば大人は国の基準に従えばそれで良いけれど、
ご妊娠されている方と乳幼児のお子さんに関しては、
(概ね4歳以下とお考え下さい)
極力不要な被曝量をゼロにする、
ということです。
よく、自然の放射線だって年間2mSvくらいはあるんだからさ、
というような言い方がありますが、
自然放射線とやり方によっては避け得る放射線とを、
混同して話すのは、
僕は良くないと思います。
ただ、ここで注意すべきなのは、
放射性ヨードの甲状腺への影響を議論する時、
その叩き台になる数字は、
預託実効線量ではなく、
甲状腺の等価線量である、
という事実です。
専門家のQ&Aでも、
僕の読む限りは、
敢えてその点は読む方が混同するように、
仕向けられているように僕には思えます。
つまり、一般に言われる癌が増える、
と言う時の被曝量は全身の実効線量のことですが、
100mSv で甲状腺癌の増える可能性が小児ではある、
と言う時の被曝量は、
実効線量ではなく甲状腺の等価線量のことなのです。
長くなりましたので、
その点については明日に続けます。
今日は良いニュースがありますように。
(社交辞令です)
石原がお送りしました。
2011-03-29 08:16
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コメント(8)
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日本人のメンタリティは今回のあらゆることに対しても大きく影響してますね。
将来もしこの日本が存続するのであれば(微妙な書き方ですが 笑)、
先生がお書きになるようなことはいずれじわじわと、しかし大きな役に立ってくることだと思います。
RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2011-03-29 08:44)
昨日の投稿、消しちゃったんですね。
原発が最初に爆発した時点で消された記事を投稿されていたら
文句なく先生のことをレスペクトしていたかもですが、時期が遅すぎ。
いまさら何言ってんだよぉ~という感じでした。
節電やACに文句言う前にまず原発事故だろ?と思いました。
心配されなくても日本人全員消滅ということはありません。
生活レベルが下がったり、癌による死亡率大幅アップということはあるかもしれませんが。
でも私自身は人生50年と思っているので余命についてはどうでもいいです。今死んでも別にかまいません。
ACのCMごときで子どもを怒鳴りつけるくらいなら死んだ方がましです。
子供たちは海外に留学させます。(種の存続が存在意義だと思ってますから。)
夫も欲どおしく長生きしたいなんてさらっさら思っていません。
今考えるのは何の心の準備もなく津波で亡くなった人々と東電のせいで被爆した方々のことのみです。
あと、生きている限り、水俣病や他、何の非もないのに理不尽な目にあわされた人々のことを忘れないようにするだけです。
何が悪いのか、いつまでも忘れないようにすることくらいしかできませんから。
by ごぶりん (2011-03-29 21:05)
いつもの公園に早朝に行って運動してみたら如何でしょうか。。。
空気が澄んでいて気持ちいいですよ。
考えるより感じる事が一番大切なんじゃないですかね。。。
by iyashi (2011-03-29 21:11)
RUKOさんへ
コメントありがとうございます。
感謝しています。
by fujiki (2011-03-29 23:09)
ごぶりんさんへ
コメントありがとうございます。
駄文にご不快を感じたのであれば、
大変申し訳ありませんでした。
ごぶりんさんにも、
少しでもなるほどと思って頂けるような、
そうした記事が書けるように、
無理かも知れませんが、
努力はしたいと思います。
もし可能であれば、
またたまに目を通して頂ければ幸いです。
by fujiki (2011-03-29 23:19)
iyashi さんへ
そうですね。
でも、週末まではちょっと無理そうです。
アドバイスありがとうございます。
by fujiki (2011-03-29 23:20)
ご存知かも知れませんが、先日、茨城のお母さんの母乳から放射性ヨウ素が検出されたそうです。
(民間の方の調査です)
原因は恐らく野菜とのことでしたが、私も授乳中なので他人事とは思えずとても不安です。
国できちんと調査とフォローをしてほしいと願います。
まったく子どもたちが不憫です…。
by 万燈 (2011-04-06 01:40)
万燈さんへ
コメントありがとうございます。
それは知りませんでした。
何処に書かれていて、
どのくらいの濃度であったのか、
もしよろしければ教えて下さい。
by fujiki (2011-04-06 08:56)