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大きなことと小さなこと [身辺雑記]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。

現状の地震被害の深刻さを考えると、
どうもあまり他の話題を、
考えるような気分にはなれません。

今日は取り留めのない話になることを、
お許し下さい。

東京は平穏で、
交通機関もほぼ平常に戻りました。
家の中はまだ書類や本などが散乱していますが、
他はほぼ平常です。
昨日の夜の東京は、
妙に閑散としていて、
皆疲れて家でテレビを見ているのでしょうか、
車通りも少なく、
商店もガランとしています。
ただ、食品などの流通は、
かなり制限されていて、
コンビニの商品の棚はスカスカの状態です。

このまま何かが静かに滅んで行くのかと思うと、
心底恐怖を感じます。

昨日は通常通りの診療でした。

心療内科の患者さんから電話があって、
ご家族が岩手にいて全く連絡の取れない状態だ、
というお話でした。

それで診察にも来たくないと言われたので、
昨日は精神科の医師の診察日でしたし、
そう言わずに取り敢えずは来て欲しい、
誰かに話をするだけで、
解決にはならないにしても、
少し気持ちが落ち着くかも知れないから、
と実際にはもっと強く、
「来て!」と言いました。

その人にとって、
昨日の診察に、
何らかの意味があったのかどうかは分かりません。

ただ、今の僕に出来ることは、
その程度のことのような気がします。

それでも、
昨日僕が診察後に最も辛かったことは、
風邪で受診された患者さんが、
一向に良くならないと、
不満を訴えられたことでした。

今の僕の生活は、
こうした日々の止むを得ない積み重ねだけで、
止むを得ずに出来ています。

何て小さなことしか思い悩めないのだろう、
と考えていて思い出したのは、
以前の阪神淡路大震災の時のことです。

あの時は僕は大学の医局にいたのですが、
確か震災当日かその翌日が、
火曜日だったと思います。
火曜日は山梨にある病院で、
救急の当直のバイトがあり、
午前中医局で回診が終わってから、
夕方に山梨に向かうのが毎週の日課でした。

救急のバイトというのは、
正直非常にプレッシャーの掛かる苦痛な仕事で、
応援は呼べる体制はあるものの、
基本的には1人で全ての救急患者さんを、
診察しなければいけません。
特に救急当番の日に当たると、
原則として近隣の救急車は、
全てその病院に運ばれて来ます。

従って、確かに世間は地震で騒いではいましたが、
僕にとっては当直のプレッシャーが頭の中の全てで、
言葉は悪いですが、
どう修羅場を凌ぐか、
ということだけが、
頭の中を旋回している状態でした。

確か夜中の2時くらいだったでしょうか。
患者さんの対応に一呼吸を吐いて、
看護婦さん(当時はこの名称です)
の控え室に呼ばれて入ると、
小さなブラウン管のテレビに、
燃え上がる街の姿が、
延々と映し出されていました。

看護婦さんは、
「神戸は大変よね」
と言っていましたが、
僕は自分のことで精一杯で、
あまりそのことに興味がありませんでした。

すぐにまた救急車のサイレンの音が聞こえ、
上手くこの状況を凌げるか、
という不安と恐怖とが、
僕を押し包んでいったからです。

診療所を閉めて東北に行きたいと、
思う気持ちもありますが、
そんなことをしたからと言って、
僕に出来ることが何かあるという、
はっきりした目算がある訳ではありません。

明日の診察に、
またいつものように取り掛かり、
風邪の患者さんを失望させたことを、
僕なりに咀嚼して次に繋げることくらいが、
今の僕に出来ることの全てなのかも知れません。

うまく言えないのですが、
今生きている不思議を感じますし、
それが偶然ではないという思いもあります。
人間の背後には矢張り何かがあって、
確実に人間は今何かを試されているのだと思いますが、
それに立ち向かうにはあまりに無力です。
目覚めよと呼ぶ声は、
確かに聞こえるような気がしますが、
それでは今貧弱な生を生かされていて、
何をすべきなのかはよく分かりません。

ただ、今生きている責任として、
変わらなければいけないのだと思いますし、
聞こえない声を聞き、
見えないものを見る努力を、
しなければならないとは思うのです。

取り留めのないことを書きました。

震災で亡くなられた方の、
ご冥福をお祈りします。

石原がお送りしました。
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KUGA

原発からの放射能が流れてこないか心配なのですが、今から昆布を食べておくのは予防になりますか?
私は、甲状線機能亢進症になったことがあり、現在はホルモン値が正常です。
何年も昆布を食べていませんが、多めに昆布を食べても大丈夫てい゛しょうか?
by KUGA (2011-03-13 15:48) 

シロ

石原先生にはいつも助けられていて感謝の気持ちでいっぱいです。今日、暖かく朝少し抜いた後が痛かったものの、お医者さんにいただいた2日分の抗生物質と痛み止め飲み終え、調子も良かったので近所の本屋と散歩に行きました。昼食後急にクラクラして頭が痛くなったので少し寝たのですが、治らず痛み止めを飲みました。痛みは少しマシですが頭に血が上ったみたいにクラクラします。とりあえず安静にしています。動いたのが、まずかったのでしょうか?どうしたらよいでしょうか?
by シロ (2011-03-13 17:34) 

シロ

あと目も軽くチカチカします。
by シロ (2011-03-13 17:57) 

yuuri37

あっ・・・今日は、みんなこんな事を思う日だったのでしょうかね。
by yuuri37 (2011-03-13 20:01) 

詩人の血

先生は己の職務を果たす事が地球生命に対する
奉仕だと思います。
インドの叙事詩マハラバータの中のヴァカバット・ギータ
お勧め!岩波文庫のあります。
by 詩人の血 (2011-03-13 20:56) 

アミナカ

うまく先生に伝えたたいことが伝わるか解りませんし、
気分を害されたらすみません。
地震が起こってからの先生のブログを拝見していて
迷いながらも、いつもと同じ様に、
患者さん1人1人に、
そしてあらゆることに
真摯に向き合われているご様子に、
励まされているのは私だけでは無いはずです。
阪神淡路大震災の時、
すっかり町は復興してイルミネーション輝く中、
まだ仮設住宅からでれない方々の為に
都内でその事を必死に訴えていらした
亡くなった小田実さんや、
人間がすっかり壊してしまった自然に
小さな苗木を植える活動をされている方など、
自分がした事の成果が
みのる頃に自分がいない可能性も高い
地道な活動を続けている方々…
ぶれることのないその信念には
頭が下がるばかりです。
先生が、いつも正直でいらして、
聞こえない声を聞く、見えないものを見る努力を…
という姿勢も
なんだかまさにそんな感じがするのです。
私もここ数日風邪で調子が悪い中、
目を覆いたくなる現実に
恐怖を覚えるしかありませんでした。
こんな時でさえ
自分の目の前で起きる
家庭内の些細な出来事に
イライラしたりするだけでしたが、
11日に高齢の伯父夫婦が
お互いに携帯メールのやりとりがわからなかったり、
問い合わせができなかったりで連絡が取れず、
携帯のバッテリーばかり無駄にへらし
疲れきって帰宅した話しをきいて、
さっき電話で簡単な操作をなんとか口伝えですが
覚えてもらう事ができ、
2人で練習して出来るようになったと
嬉しそうな声で電話をくれました。
枝葉ながら今後の余震や
何かの際に役にたってくれればと
自分にできる事をしました。
こんなこと非力過ぎて、
誰のためにもならないかもしれませんが、
私の気持ちを
少しだけ支えてくれたのは確かです。
そんな風に思えたのは、
枝葉どころではない、
先生の様な方々が
前を歩いてくださっているからです。
先の事を考えれば
正直気持ちは沈みます…
それでも…ですよね。
不愉快に感じたら
本当にすみません。。
by アミナカ (2011-03-13 21:49) 

fujiki

KUGA さんへ
昆布を食べることは予防にはなりません。
甲状腺のブロックには、
通常もっと大量のヨードが必要で、
被爆直後であれば、
1回のヨードの使用で、
基本的には対応可能です。
その点については、
明日詳しく記事にしたいと思いますので、
そちらをご参照下さい。
自己流は禁物です。
by fujiki (2011-03-13 21:55) 

fujiki

シロさんへ
断定的には言えませんが、
急に動いたことによる、
自律神経のバランスの乱れかも知れません。
ただ、明日はまた外出してみて、
問題はないと思いますよ。
by fujiki (2011-03-13 21:56) 

fujiki

yuuri37さんへ
明日からいつかもはっきりしない、
順番の停電になるようで、
医療機関はどうするのかとか、
在宅の患者さんはどうするのか、
老人ホームはどうなるのか、
などと考えると、
都心も他人事ではありません。
多分食料品も手に入り難くなりますね。
気が重いです。
by fujiki (2011-03-13 22:00) 

fujiki

詩人の血さんへ
アドヴァイスありがとうございます。
by fujiki (2011-03-13 22:01) 

fujiki

アミナカさんへ
不愉快とか…とんでもないです。
ありがとうございます。
感謝しています。
by fujiki (2011-03-13 22:02) 

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