新規アルツハイマー型認知症治療薬「ガランタミン」の話 [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝からレセプトのチェックをして、
それから今PCに向かっています。
今日は認知症の新薬の話です。
その名はガランタミン。
今年の1月に製造販売承認が取得となり、
3月頃には発売の予定です。
商品名はレミニールです。
先日ご紹介したメマンチンは、
アリセプト(ドネペジル)とは、
全く異なるメカニズムの薬剤ですが、
このガランタミンはアリセプトと、
基本的には同一のメカニズムの薬です。
コリンエステラーゼ阻害剤と言って、
比較的脳に特異的に、
脳内の神経伝達物質である、
アセチルコリンの濃度を高めることで作用する薬です。
世界的に使われている、
認知症向けのコリンエステラーゼ阻害剤は、
3種類があり、
アリセプトとこのガランタミン、
そしてもう1種類はリバスチグミン、
と呼ばれる薬です。
リバスチグミンはパッチ剤(貼り薬)である点が特徴ですが、
日本での発売予定はあるものの、
一歩出遅れている感じで、
承認はもう少し先になりそうです。
さて、それでは3種類の薬剤の位置付けは、
どうなのでしょうか?
データの蓄積は、
矢張りアリセプトが一番です。
その効果については、
総合するとほぼ同等と考えて良さそうです。
安全性についてもそれほど大きな差はなく、
実績でアリセプトが第一選択で、
もしアリセプトで副作用があれば、
他剤に変更して様子を見るのが、
通常の一般的な考え方だと思います。
(この評価は昨年のNew England…の総説を元にしています)
国内臨床試験の成績を見ると、
全身的にアセチルコリンが過剰になったことを疑わせる、
消化器症状や心血管系の副作用は、
かなり多いという印象はあります。
具体的には嘔吐が12.5%に見られ、
悪心は15.5%、
不整脈などの心臓の異常も、
6.5%に認められています。
宣材では他剤に比し、
アセチルコリンの増加が多いという記載が見られ、
それはこの副作用の多さから見て、
間違いではない、という気もします。
つまり、色々な意味で、
アリセプトを一廻りパワフルにした効果が、
ガランタミンにはあるのではないかと推測されます。
ただ、ご高齢の方が主に飲まれる、
という実際を考えると、
その副作用への対応には、
より注意が必要ではないかと、
僕は思います。
何度も繰り返しの話になりますが、
抗コリンエステラーゼ阻害剤の、
心血管系に対する副作用は、
意外と多く、また見落とし易いもので、
つい最近も、お風呂で急に意識消失を来たし、
救急車で運ばれた脳梗塞後遺症の患者さんは、
病院では一過性の脳虚血発作との診断でしたが、
アリセプトを他院から処方されていて、
中止したところ、
そうした発作の起こることは全くなくなりました。
ご高齢の方が繰り返し意識を失ったり、
ふらついたりした時には、
勿論脳梗塞や睡眠剤の副作用などの可能性もありますが、
今の世の中、一言「物忘れが…」と口走れば、
必ず処方される薬のことも一度は疑って下さい。
今日は認知症の進行抑制に用いる新薬の話でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝からレセプトのチェックをして、
それから今PCに向かっています。
今日は認知症の新薬の話です。
その名はガランタミン。
今年の1月に製造販売承認が取得となり、
3月頃には発売の予定です。
商品名はレミニールです。
先日ご紹介したメマンチンは、
アリセプト(ドネペジル)とは、
全く異なるメカニズムの薬剤ですが、
このガランタミンはアリセプトと、
基本的には同一のメカニズムの薬です。
コリンエステラーゼ阻害剤と言って、
比較的脳に特異的に、
脳内の神経伝達物質である、
アセチルコリンの濃度を高めることで作用する薬です。
世界的に使われている、
認知症向けのコリンエステラーゼ阻害剤は、
3種類があり、
アリセプトとこのガランタミン、
そしてもう1種類はリバスチグミン、
と呼ばれる薬です。
リバスチグミンはパッチ剤(貼り薬)である点が特徴ですが、
日本での発売予定はあるものの、
一歩出遅れている感じで、
承認はもう少し先になりそうです。
さて、それでは3種類の薬剤の位置付けは、
どうなのでしょうか?
データの蓄積は、
矢張りアリセプトが一番です。
その効果については、
総合するとほぼ同等と考えて良さそうです。
安全性についてもそれほど大きな差はなく、
実績でアリセプトが第一選択で、
もしアリセプトで副作用があれば、
他剤に変更して様子を見るのが、
通常の一般的な考え方だと思います。
(この評価は昨年のNew England…の総説を元にしています)
国内臨床試験の成績を見ると、
全身的にアセチルコリンが過剰になったことを疑わせる、
消化器症状や心血管系の副作用は、
かなり多いという印象はあります。
具体的には嘔吐が12.5%に見られ、
悪心は15.5%、
不整脈などの心臓の異常も、
6.5%に認められています。
宣材では他剤に比し、
アセチルコリンの増加が多いという記載が見られ、
それはこの副作用の多さから見て、
間違いではない、という気もします。
つまり、色々な意味で、
アリセプトを一廻りパワフルにした効果が、
ガランタミンにはあるのではないかと推測されます。
ただ、ご高齢の方が主に飲まれる、
という実際を考えると、
その副作用への対応には、
より注意が必要ではないかと、
僕は思います。
何度も繰り返しの話になりますが、
抗コリンエステラーゼ阻害剤の、
心血管系に対する副作用は、
意外と多く、また見落とし易いもので、
つい最近も、お風呂で急に意識消失を来たし、
救急車で運ばれた脳梗塞後遺症の患者さんは、
病院では一過性の脳虚血発作との診断でしたが、
アリセプトを他院から処方されていて、
中止したところ、
そうした発作の起こることは全くなくなりました。
ご高齢の方が繰り返し意識を失ったり、
ふらついたりした時には、
勿論脳梗塞や睡眠剤の副作用などの可能性もありますが、
今の世の中、一言「物忘れが…」と口走れば、
必ず処方される薬のことも一度は疑って下さい。
今日は認知症の進行抑制に用いる新薬の話でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2011-02-04 08:10
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一般的に、年をとってくると、アセチルコリンの量は減ってくるのでしょうか。
by kakasisannpo (2011-02-04 12:09)
kakasisannpo さんへ
コメントありがとうございます。
実際に指摘されているのは、
アセチルコリン合成酵素の活性が、
アルツハイマー型認知症では低下している、
という知見と、
アセチルコリン作動性神経細胞の脱落が見られる、
という知見です。
脳内のアセチルコリンの量自体が減っているかどうか、
ということの直接的証明は難しいと思います。
どちらかと言えば、
神経細胞自体が減っているのを、
アセチルコリンの分解を減らして、
その濃度を上げることにより、
代償すれば良いのでは、
という考えだと思います。
こうした薬剤の効果には、
多分に推測によるものが含まれています。
by fujiki (2011-02-04 20:21)
詳しいコメント
有難うございます
by kakasisannpo (2011-02-05 20:19)