SSブログ

山海塾「から・み」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。
いつものように駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
山海塾「からみ」.jpg
天児牛大(あまがつうしお)が率いる、
舞踏集団「山海塾」の新作公演があったので、
仕事帰りに先週寄ってみました。

最近は2~3年に一度のペースで、
新作を上演しています。

山海塾は、
元々完成度にはあまり拘泥しないところのある舞踏を、
西欧の美意識を大きく取り入れて、
分り易く再構成したもので、
その洗練された分かり易さが特徴です。
従って特に最近の作品は、
極めてお行儀の良いもので、
舞踏のある種の暴力性を愛する向きには、
物足りなく思える部分があることも確かです。

僕も以前の「金柑少年」と「卵熱」、
「しじま」は傑作だと思いますが、
最近の新作には正直あまり魅力を感じてはいませんでした。

今回の新作「から・み」は、
「から」も「み」も、
人間の肉体を指す言葉で、
魂があるかどうかが、
その両者の違いだと、
天児は書いています。

舞台は砂が薄く敷かれ、
血の流れのようなものが描かれた、
透明なボードが複数吊られただけの、
シンプルなものです。

オープニングに若手の舞踏手が、
寝ている肉体を立てる、
という儀式を行なうのですが、
これは舞踏の根本である、
「命懸けで立っている死体」を作るための儀式に他ならず、
今回の作品は天児の舞踏への回帰を示すもののように、
僕には思われました。

天児自身は2つのパートのソロダンスを踊るだけですが、
特に2つ目のソロは、
彼のこれまでのダンスの集大成のような充実したもので、
新しさは特に感じないものの、
感銘を受けました。

ただ、踊る天児の肉体は、
正直衰えを感じさせ、
研ぎ澄まされた鋭利さが後退していることには、
少し落胆を覚えました。

はっきり言えば、
筋肉が減り、脂肪が少し付いていたのですが、
舞踏家と脂肪とは、
僕の見解では正反対に位置するもので、
老いは死体に近付く行為なので、
むしろ舞踏家としては、
歓迎すべき点があるのですが、
舞踏家であるならば、
もっと肉体を研ぎ澄まして欲しい、
と僕は感じました。

天児はナルシスティックな演技者だと僕は思いますが、
彼の今の肉体は、
次第に彼を裏切り始めているのです。
今回のソロで後ろを向き、
肩甲骨を翼のように振るわせる仕草がありましたが、
これは「卵熱」のオープニングの再現です。
しかし、以前にはそこに幻想の翼が見えたものが、
今回は以前より明らかに鋭さを失った背筋が、
ちょっと無残なものに見えただけでした。

ただ、完全に彼が肉体に裏切られた時、
彼の舞踏が本物ならば、
彼の舞踏はその肉体を捨て去り、
今度は本当の輝きを放つ筈で、
その来るべき日を、
静かに待ちたいと思います。

それでは今日はこれだけです。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(23)  コメント(4)  トラックバック(0) 

nice! 23

コメント 4

yuuri37

今日のお話、ちょっとジーンときちゃいました(>_<)
老い・・・向き合いたくない自分がいます。
by yuuri37 (2011-01-30 16:53) 

fujiki

yuuri37 さんへ
コメントありがとうございます。
勿論年取るのは嫌ですよね。
でも、仕方がありません。
子供の頃は早く年を取りたいと、
思っていたのですが、
今は絶対思いません。
by fujiki (2011-01-30 19:32) 

norinngo

こんにちは。先生の11月25日のサプリメントのブログにコメントを書かせていただいて以来、お気に入りに入れ忘れ、ここへたどり着くことができずにいました。

 古川あんずさんのことや暗黒舞踏のことを調べていたら、「あれ?」。到達することができて、びっくりです。しかも、山海塾にかかわる深い批評に感銘を受けました。
 昔、土方巽さんがいらしたころのアスベストに少しだけかかわったので、ときどき、「舞踏」に関する、しっかりした文章が読みたくなります。

コメントへの返信もありがとうございました。
by norinngo (2012-03-14 16:52) 

fujiki

norinngo さんへ
コメントありがとうございます。
土方巽さんの生の舞台は、
目にすることが出来なかったので、
とても羨ましいです。
アスベスト館には上映会などで何度か通いました。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2012-03-15 08:09) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0